たびかさなる反捕鯨活動と諸外国の外交圧力を受けた結果、ついに日本の捕鯨船団は南極海を去ることになった。国際動物福祉基金(IFAW)が東京で入手した情報によると、日本の捕鯨船は今季の捕鯨活動を途中で打ち切り、帰港しそうだとのこと。この突然の決定は、過去23年間で1万頭以上の鯨を捕らえてきた日本の科学調査に終止符を打つことになりそうだと、海外のメディアは歓迎ムードで報じている。

IFAWの反捕鯨キャンペーン担当パトリック・ラミージ氏は、「各方面からの圧力により、南極海の禁猟区から日本の捕鯨船団はついに撤退するようです。すでに捕鯨に未来はなく、ホェールウォッチングこそ持続可能な鯨資源の最適利用なのです。そのことをようやく日本は理解しつつあるのではないでしょうか」と、意気揚々と語る。

追跡を続けているシー・シェパードの「ボブ・バーカー」号によれば、母船「日新丸」は南米チリ・ホーン岬と南極の間にあるドレーク海峡へ向け、舵を切ったようだ。

チリ政府は、自国水域においての捕鯨や解体した鯨の移動を禁止している。そのため、日新丸は今後チリの排他的経済水域に入ることなく、ドレーク海峡を抜けていくものと思われる。日新丸以外の3隻は行方がわかっていないが、鯨の解体には日新丸が必要。そのため、捕鯨をすることはできない。

実は、捕鯨船団はこれまでもそうだったように、南極海で反捕鯨団体シー・シェパードによる妨害活動を継続的に受け続た。シー・シェパードは今季も南極海に到着するとすぐに捕鯨船団を突き止め、そのうちの2隻をマーク。そして1隻のスクリューにロープを絡ませたり、燃料補給活動を妨害したりして、日新丸を撤退に追いやる活動をしてきたのだ。化学薬品、発炎筒、レーザー光線、騒音などを用いた、手段を選ばない過激な妨害活動を行うため、シー・シェパードは「環境テロリスト」とも呼ばれている。しかし、今回このニュースによる海外からの反応は、おおむね英雄扱いだ。

「シー・シェパードよくやった。積極的な保護活動の勝利!」
「政府は外交交渉を口実に何もしなかったが、シー・シェパードは国際法遵守のため行動した」
「政府は23年間無策だったが、シー・シェパードはたった5年で成果をあげた」
「すばらしい結果。日本人は世界中の怒りに無関心を装い無視しつづけたが、シー・シェパードの圧力ははっきりと効果があった」
「シー・シェパードは環境テロリストではなく英雄。不法操業している日本政府こそテロリスト」
「日本政府は永久に捕鯨をやめるべきだ。そうすれば、日本製品を買ってもいい」
「永久にやめさせるまで活動を続けるべきだが、これは大きな成果だろう」
「やっと理解を示した日本政府にリスペクト」
「不法な捕鯨をやめさせるのは、アフリカの奴隷貿易をやめさせるのと同じくらいの価値だ」

中には日本に理解を示すコメントもあるが、きわめて少数である。

さて、現在日本は捕鯨問題でオーストラリア政府から提訴されている。国際捕鯨委員会(IWC)での交渉が進まないなか、オーストラリアは昨年5月にこの問題を国際司法裁判所(ICJ)に提訴した。通常は応訴がなければICJはいかなる国際紛争も審議に入ることができないが、日本の場合は応訴義務を認めており、外国から提訴された場合は自動的にICJの管轄を認める。そのため、今年5月には審議が始まるのだ。

オーストラリア首相ジュリア・ギラード氏とニュージーランド首相ジョン・キー氏はICJの審議を前に、共同声明でこの事件への継続的なコミットメントを確認。南洋上における捕鯨の全廃を目指す姿勢を明確にした。さらにIWCに加盟している南米の国々も今週、共同声明を発表。日本に南極海における調査捕鯨を停止し、鯨の禁猟区を尊重するよう求めている。

参照元:theage.com(英文)