
イルカの刺身を食べたことはあるだろうか? 筆者はなかった。それどころかイルカを食べることができるということ自体をまったく知らなかった。
そのため和歌山県太地町にある道の駅たいじのレストランのメニューの中に「イルカ刺身」の文字を見つけた時、驚きのあまり最初は見間違いなのではないかと自分の目を疑ったほどだ。
クジラやイルカなど海の大型哺乳類の食文化については様々な意見があるのは承知しているのだが、正直かなり気になる。どんな味がするんだろうか? 美味しいのか?? ……ということでイルカの刺身、注文して食べてみることにした。
・太地町とイルカ漁
今回イルカを食べるにあたり、日本小型捕鯨協会に連絡をとってお話をうかがった。というのも日本国内でのイルカ・クジラ漁は国際的にも問題に挙げられることがあり、その声を無視することはできないためだ。
そのお話によると、イルカとクジラの違いは体の大きさ。全長4m以内のものがイルカで、それ以上がクジラと分類されているのだそうだ。
今回いただくイルカは国際捕鯨委員会(IWC)が捕獲を禁じている大型の鯨類ではなく、小型の鯨類に分類される。そして漁獲量は水産庁と県によって規制が行われており、つまり乱獲をすることは禁じられているということであった。
また昔から全ての部位を捨てることなく使われている鯨類であるが、現在も引き続き大切に利用をしているということ。ただし、かつては牛の飼料に使われていたという骨に関しては、狂牛病の発生を受けて使用が禁止されているということであった。
昔は太地町では牛や豚などの肉が手に入らず、現在私たちが牛・豚肉をいただくのと同じようにクジラ・イルカ肉が食べられていたということ。電話では、どんな肉にしても、命をいただいているという気持ちを忘れず残さず大切に食べるべきであると教えていただいた。
・まずはクジラから食べてみた
ということで、道の駅たいじへやってきた。鯨類も含めた新鮮な海産物がいただける、2017年オープンの比較的新しい道の駅だ。
「イルカは食べたことないけど、クジラならある」という方はそれなりに多いのだろう。今回イルカの味をお伝えするにあたりクジラとの違いをレポートできればと思ったのだが、実を言うと筆者はクジラの刺身も未体験。そのため今回は両方を注文してクジラ → イルカの順に食べてみることにした。
上がクジラの赤身と皮の刺身(税込1000円)、下がイルカの刺身(税込800円)だ。もちろんこのクジラも水産庁と県の規制のもと漁獲されたもの。
どちらも魚や肉にしては赤黒く、これまで見たことのあるどんな食べ物にも似ていない色をしている。強いて言うなら……厚切りビーフジャーキーぐらいの色と言ったらわかっていただけるかもしれない。
最初はクジラからいただいてみよう。メニューによると、赤身と皮が交互に並べられているようだ。
まずは赤身を醤油につけていただいてみると、意外にもかなり柔らかかったため驚いた。部位の問題もあるのだとは思うが、あれだけ大きい体を動かしているのだから筋肉質で硬いものだとばかり思い込んでいたのだ。
味はサッパリしていて、不思議なことに肉よりも魚に近い第一印象だ。パッと似ている魚として思いついたのはカツオ。赤身肉らしい旨味は十分に感じるのだが、臭みもある。
薬味としてついてきた生姜をつけて食べると魔法のように臭みが消えて食べやすくなり、今度は馬刺しのように感じて旨い。肉と魚、どちらの味も併せ持っているように感じた。
続いてはクジラの皮の刺身。皮と言っても皮膚の部分はついていないようで、皮下脂肪の刺身のようだ。
ブヨっとした質感でちょっと抵抗がある見た目なのだが、一口食べてみると……かなり美味しい!!
馬刺しで言う たてがみ みたいな味だ。脂の甘みがひと噛みごとにジュワっと口の中に広がり、脳内で快楽物質がフィーバーするのを感じた。
皮の刺身、旨過ぎていくらでも食べられる気がする。(と思ったが、食べ終われば十分に満足感を得たのは年齢のせいかもしれない)
・イルカの刺身を食べてみる
これでクジラの刺身の味を知ることができた。次はいよいよイルカをいただいてみようじゃないか。
イルカの刺身でまず驚いたのが、皮のリアルな質感だ。イルカはクジラと違い、皮と肉がくっついたままの状態で出てきた。
その表面には水族館で見たことがあるようなイルカの、まるで濡れたナスのようなキュキュッと滑らかな皮膚がくっついている。
普段食べる肉では鶏以外ほとんど皮を見ないため一瞬「ウッ」と思ったが、その気持ちは日ごろ肉をブロックの状態にまで解体してくださる方々への感謝に変わった。そりゃ、みんな生きていたんだもんな。
気を取り直して口に入れてみると、驚くべきことにイルカの刺身にはまったくと言って良いほど臭みを感じなかった。
もちろんクジラとよく似ているのだが、もっと濃厚でまろやかでトロける肉といった味だ。そしてやはり脂は甘く、旨みの塊。肉と脂を同時に食べるためバランスが良いのも好印象だった。
やはり例えるなら馬刺しであろう。肉食動物で普段から魚を食べているはずのクジラとイルカが、草食動物である馬に似ているように感じるのだから不思議だな。
皮膚の部分はコリコリとした歯ごたえなのだが、最後まで嚙み切ることはできずに飲み込んだ。火を通すともっと柔らかくなるのかもしれないな。
・イルカの刺身は旨かった
処理の仕方が上手いのかもしれないが、初めて食べたイルカの刺身はかなり美味しく素晴らしいものであった。筆者個人としてはクジラよりもイルカの方が断然好きな味で、もしも機会があるならまた食べたいと思っているほどだ。
もちろん好き嫌いのわかれる食べ物であり、そもそもイルカを食べるなんて信じられない! と思う方もいるだろう。その気持ちはとてもよくわかるし、「イルカを食べない」という考えを持つのは決して悪いことではないと思う。
が、もしも興味を持って食べてみようと思う方がいるならば、道の駅たいじで食べるイルカの刺身は太地町の方々が昔から大切にしてきた自然の恵みであり、絶品であったということはお伝えしておきたい。
高木はるか








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