質問1:株式会社富士(以下、富士)は、ダイソーの『ペットブラシ(ソフト)』の存在を把握しておりますか?


富士回答「ダイソーさんの販売・陳列は存じ上げております。」


──なんと! 知っているのだ。続いて、もし存在を把握しているとしたら、ダイソーの『ペットブラシ』は、富士が製造した「100円バージョンのらくらくおそうじブラシ(廉価版)』なのか? という問いについてだが……


富士回答「ダイソーさんのペットブラシは、弊社の製造品ではありません。但し、製造工場は把握しております。」


──とのこと。把握はしてるし、どこで作っているのかも知っているが、富士の商品ではない。となると これは……コピー品? ズバリ聞いてみたところ、実に興味深い回答が返ってきた。解説を入れつつ、紹介したい。


富士回答「らくらくおそうじブラシの成型金型は、広く様々な工場で金型が作成されており、日本に広く普及する以前より欧米向けにも製造されている経緯があります。

よって、日本国内の各業者単位で「意匠」「実用新案」など、申請できる製品ではないのが実情です。その為に、どこが先で、どこがコピーとも言い切れない製品です。」


──なるほど! ものすごく簡単に言えば、「どこが元祖なのかわからないくらいに世界中に出回っている金型なのでコピーとは言い切れない」のだ。ダイソーのコピー疑惑が晴れてホッと一安心であるが、富士の回答はまだ続く。


富士回答「では、「コスト面で同じ安価になるのでは」となりますが、弊社の定番アイテムとなって10数年の間に、材質・成型金型修正・工場現地検品による規格外製品廃棄比率など、他社様の安価品とは違う製造工程を経ております。

一例として、持ち手部分の破損・折れ防止の為に、特殊な割合の混合材質にて成型を行っております。

また、成型後の検品・品質管理では、バリ・変形・成型時の原材料はみ出しによる外観規格外などを廃棄処分することによる品質統一化など、原材料から成型まで、他社様とは違う製品を流通させているという自負だけはあります。」


──こちらも、回答を見て思わず「そうだよな」と納得した。簡単に比較しただけでも一発でわかる品質の差は、富士が「クオリティ重視」で製造しているからにほかならない。そして同社は、こう続ける。


富士回答「ダイソー様と比較される事案は、弊社だけでも年間数多くございますが、見た目を同じにして消費者様にお買い得感を提供する流通形態と、弊社のお取り引き様の信用を損なわない事を大前提に製造に携わる場合とでは、どちらを優先するかの大変難しい、永遠の課題かとも思います。」


──深い。これはもう、ポリシーというか、「生き方」である。ひたすら「オトク感」を追求、提供していく生き方か、それとも「質」を重視する生き方か。どちらが良くて、どちらが正解とか、そんな単純な話ではない。これはもう、生き方なのだ。しかし最後に、富士は力強くこう付け加えた。


富士回答「弊社の「らくらくおそうじブラシ」につきましては、幸い毎年前年対比製造個数アップにて推移しており、ダイソー様が追従されても全く問題視していないというところが弊社の見解です。」


──私も正直、そう思う。もしもバリだらけの低クオリティ商品だとしたら、我が家のお掃除用具置き場に保管されていることもなかったであろう。質が良いから、大事に大事に持ち続けていた。そして今後もレギュラーとして持ち続けるのは、富士の「らくらくおそうじブラシ」であろう。

しかしながら、もしも私が「らくらくおそうじブラシ」の存在を知らなかったとしたら、ダイソーの『ペットブラシ(ソフト)』がレギュラーとして定着していた可能性もゼロではない。偶然にも “比較できたから” こその感想だ。

同じ形をした2つのブラシ。しかし、その中には、それぞれまったく違う「魂(たましい)」が宿っているように私には思えた。生き方を、見た気がした。

参考リンク:株式会社富士「らくらくおそうじブラシ」
Report:100均評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.

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