私は「ロケットニュース24」というWebメディアの編集長である。


Webメディアというものは、基本的に広告収入が主な収入源。広告がなければ我々も食べていけない。だから広告の必要性については、嫌というほど理解しているつもりだ。


そのうえで言いたい。


昨今のWebメディア、というかWeb全体における広告の荒れっぷりには、正直、言葉を失う。


「何を考えているのか?」「いや、何も考えていないからこうなっているのだろう」とすら思う。


・Webから人が離れている

今この記事を読んでいる人は、まだWebメディアを読んでくれている人だと思う。


しかし、長年この仕事をしていて、なおかつ実際にデータを見ている身として、人々が以前ほどWebサイトや検索に時間を使わなくなっていることは肌で感じている。


では、みんなどこへ行ったのか。


YouTube、TikTok、InstagramなどのSNSや動画サービス。情報の探し方そのものも、昔とは大きく変わった。


もちろんWebそのものが消えたわけではない。何かを調べたり、サービスを利用したり、記事を読んだりするために、今でもブラウザでWebサイトを開くことはある。


そして、そこで待っているのが……


広告である。


・どこを押せば消えるんだよ

先日、とあるWebサービスを利用しようとサイトにアクセスしたところ、画面いっぱいに広告が表示された。いわゆる全面広告、インタースティシャル広告というやつだ。


私はWeb業界に15年以上いる。普通の人よりは、WebサイトのUIにも広告にも慣れている方だと思う。


ところが……


消し方が分からない。


まず目に入ったのが、画面左下の「×」。これだろうと思って押してみたが……消えない。


よく見ると、この「×」は画面下部に表示されている別の広告を閉じるためのものらしい。じゃあ、どこだ?


次に目に入ったのは、画面右上の「×」。これか! 押してみるも……消えない。


それもまた、別の広告の「×」だった。


なんなんだよ、これ。広告が多すぎて、どの「×」がどの広告の「×」なのかすら分からないじゃんかよ!


そして、かなり探した末にようやく見つけた。全面広告の真ん中上あたりに……

小さい「close」の丸ボタン。


当たり。正解は、これだった。


しかしながら、なぜ目立たない灰色にする必要があるのか。そこには「消させるもんか」とでも言いたげな意地悪さを感じる。ほとんど間違い探しだ。


これで良いのだろうか?


良いわけないだろう。


・そりゃWebから離れるよ

こんな体験を繰り返していれば、Webから離れたくなる人が出るのも当然だと思う。「広告ブロッカー」みたいなものを入れたくなる気持ちも分かる。


広告を見るためにWebサイトへ来ているわけではない。


記事を読みたい。
情報を調べたい。
サービスを使いたい。


皆、そのためにアクセスしている。


ところが、肝心のコンテンツへたどり着く前に広告。


画面を覆う広告。
スクロールしたら広告。
追いかけてくる広告。
消そうと思っても、どこを押せばいいのか分からない広告……。


こんな状況で「Webを見てください」と言ったところで、そりゃ嫌になる人もいるだろう。



・広告が必要なのは分かっている

誤解してほしくないのだが、私は「広告をなくせ」と言っているわけではない。そんなことを言ったら、自分たちも食べていけなくなる。広告は必要だ。


だが、「やり方ってもんがあるだろう」とは思う。ユーザーの皆様が「ま、しゃーないな」と思う程度の広告の出し方ってのがあるだろうと思うのだ。


閉じ方が分からないような広告や、記事を読むために何秒も待たなければならない広告について、私は個人的にまったく感心しない。


Webメディアなのに、記事を読もうとしたら「あと5秒」「あと15秒」なんて待たされるとか、本当の本当に意味不明。


動画への広告ならまだ分かる。でも記事だぞ? それなのに「何秒」という時間を強制的に奪うって……。


動画を見る時間がないから記事を読む、なんて人もいるだろう。それなのに、そこでさらに「時間」を奪う。


まったくもって「あっていない」のだ。読者のニーズと広告の出し方が、完全にチグハグなのである。


にもかかわらず、それをよしとして「待ち時間のある広告」を入れている人たちの気持ちが、私はまったく理解できない。


ただひとつだけ言えることがある。それは、


「読者の気持ちを全く考えていない」ということ。


稼がなければならないのは分かる。サービス、果ては会社を存続させなければならないのも分かる。私だって同じ立場である。


でも、食べていくために広告を増やし、その広告が嫌で読者がいなくなり、読者が減ったからさらに広告を増やす。


もしそんなことになっているのだとしたら……完全に自分で自分の首を絞めている。


自分たちが生業にしている海に、自分たちで毒を流して汚染しているようなものだ。そして、それに気づいていない。


シンプルに「愚か」としか言いようがない。もっと平たく言えば、「バカ」としか言いようがない。



・海から魚がいなくなってからでは遅い

私は最近、Webという海から魚がどんどんいなくなっているような感覚を覚える。その原因が広告だけだと言うつもりはない。


SNSもある。動画もある。AIもある。検索のあり方そのものも変わっている。そもそもコンテンツの質の低下というものもあるだろう。


でも、久しぶりにWebへやってきた人を、画面いっぱいの広告で出迎える。しかも、消し方すら分からない。そんなことを続けていたら……という話だ。


さらに言えば、問題は量や表示方法だけではない。


怪しい商品、詐欺まがいのサービス、「本当にこれ掲載して大丈夫なの?」と思うような広告まで見かけることがある。


これはWebだけの問題でもない。YouTubeをはじめ、さまざまなサービスで同じような問題は起きている。


そろそろインターネット全体で、「広告とは何なのか」をもう一度考える時期に来ているのではないだろうか。


人にストレスを与えてまで見せるものが、広告なのか。
コンテンツを隠してまで見せるものが、広告なのか。
広告を消す方法を探させることが、広告なのか。


私は広告収入で成り立つWebメディアの編集長だからこそ、声を大にして言いたい。


もっと読者のことを考えよう。


自分で自分の首を絞めるのは、もうやめよう。


こんなことを書いたところで、業界全体には何も届かないのかもしれない。それでも、あの小さな「close」を必死に探していた時、私は本気で思った。


こんなクソ広告ばかり出していたら、そりゃWebから人はいなくなるよ、と。
そりゃ、Web業界から良い話なんて聞こえてこなくなるよ、と。


執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24