サイバーパンクの金字塔『攻殻機動隊』の原作の舞台は西暦2029年だ。気づけば近未来SFの年代に踏み込んでいる時代。都市デザインがサイバーになってるってことはないけれど、スマホの概念などはまさしく近未来SF的だと思う。

で、最近私(中澤)の近未来センサーに引っかかったのが、新発想の改札としてニュースになっている「ウォークスルー型顔認証改札」。顔認証で改札を通過でき、ICカードなどをタッチする必要もないらしい。いわゆる、「顔パス」と呼ばれているけど、本当にそんなに余裕なのか?

・いつだって未来は不確定だった

1982年生まれで物質主義の洗礼を受けている私としては、こういった物質が消えるシステムについて懐疑的だ。いや、疑うというより不安なのかもしれない。ふとした瞬間に全部消えてしまいそうで。

特に改札なんて詰まったら目立つし、後ろの人に迷惑もかける。ちゃんと認識するのかが怖くてICカードですらなかなか慣れなかったくらい。そんな私にとって、モノが無くなり顔データだけで照合とか、まさしく不安なヤツなんだよな。

でも、その不安さにこそ未来を感じるのも事実。いつだって未来は不確定さの向こうにあるのである。そんなわけで一歩踏み出して顔認証改札を利用してみることにした。

・空港の保安検査場み

今回、私がそう決心したのは通りがかりの駅でウォークスルー型顔認証改札が設置されているのを発見したからだ。その駅とは大阪メトロ『動物園前駅』。改札の上にバーがあってゲート状になってるのが、空港の保安検査場みたいである。

都内では7月に東武東上線2駅で初導入されたことがニュースになっていたけど、大阪ではこういった顔認証改札がすでにちょこちょこ設置されていたりする。実は難波駅でも見かけたし。

・利用条件2つ

一方で、利用している人は見たことがない。どんな感じかを探るために、難波駅でも動物園前駅でもしばらく様子を見てみたが、利用者は現れなかった。明らかに浸透はしてない。

なんなら1つの改札が顔認証仕様になってるのが邪魔くらいの勢いを感じる。そして、改札のところに貼られた利用方法をよく見てみると浸透してない理由もなんとなくわかった。「乗車券を出すことがないからハンズフリーでの通行が可能です」と利点が書かれているけど、それを利用するには……

「eMETRO会員登録」の上、「顔画像データの登録」が必要なようだ。まあ、顔で認証するってことはデータ管理が必要なのは当然ではあるけど、改札機能を使うために会員登録という時点で5割くらい離脱しそうではある。会員登録しなくても乗れるものだからなあ。まあ、私はやるけども。



・3つ目の条件

で、会員登録をしようと、QRコードからeMETROのページを開いてみると、準備1「顔画像を登録する」の後、準備2「デジタル乗車券に顔画像を設定する」と書かれている。デジタル乗車券って何じゃい。しかも、顔画像登録だけじゃなく、乗車券に顔を設定するらしい。意味不明すぎる。

多分、よっぽどやる気がない限りは、工程が顔画像登録だけじゃなかった時点で離脱するんじゃないだろうか。私ももうやめようかなと思ったけど、仕事だと思って気を取り直してまずはeMETROのサイトから会員登録と顔画像登録を終わらせた。

・駅員さんに聞いてみた

地下鉄だし、特に登録に際しての注意点もない。だが、流れ通りに登録を終わらせたら、登録完了で一旦終わって、その先のデジタル乗車券に顔の設定はどうすればいいのか分からなくなってしまった。

そこで改札にいた駅員さんに聞いてみたところ、「顔認証かあ、ちょっと分からんなあ」と言いながら奥で資料を漁り出した。そして、「悪いけどこれ見てやって」と顔認証の登録説明が書かれた紙をくれた。

これは相当スベッてるぞ。普段全く聞かれることのない問いであることがその駅員さんの様子から伝わってきた。駅員さんの正直さに非常に大阪を感じる。

・アプリインストール

で、そのパンフレットを見ると、この先はeMETROのアプリをインストールする必要があるようだ。この期に及んでアプリインストールが出てきた時点で10割脱落だろ。個人的にはせめてサイトで登録するだけで終わって欲しかったが、ここまで来てやめるわけにもいかないのでeMETROアプリをインストールした。

で、ここでデジタルチケットの正体が判明したんだけど、これは交通ICカードみたいな従量制のものではなく、「26時間乗り放題1000円」などの乗り放題パスの大阪メトロ版だ。これが有用かどうかの議論は今は置いておくとして、顔認証改札を利用するにはこれらのパスを購入して顔をパスに紐づける必要があるのである。

顔認証改札の放置っぷりや、先ほどの駅員さんの反応もさもありなん。進めば進むほど納得が深くなっていく中、歯を食いしばって「Osaka Metro 26時間券(1000円)」を購入。ちなみに、購入にはクレジットカードの登録が必要だ。


・時は満ちた

さて、ついに大詰め。あとはチケット詳細の「顔認証改札の利用」から利用設定を有効にしたら改札が顔パスできるはず。

顔認証改札の利用設定をOKにした後、26時間券の利用開始を選択。そのまま顔パス改札に向かった! 時は満ちた!! イッケェェェェエエエ!!!!!



改札「×認証できません」


しばいたろか。

クッ、こらえろ……! 目の前でパタッと閉まったアクリル扉を思わず蹴りたい衝動に駆られる。ここまでやってなんでやねん!! そう思いながら今一度チケットの詳細をよく見てみたところ、右上に赤字で「顔認証設定失敗」と表示されていた。

・顔パスできず

改めて駅員さんにもらったパンフレットを見てみたところ、端に「アクセス集中等により顔認証の利用設定ができない場合がある」という注釈が書かれていた。表示にも同じことが書かれており、その場合は設定するボタンが再度アクティブになるため、もう1度タップするらしい。だがしかし……


何度タップしても成功しねェェェエエエ!!!

時間を置いて少なくとも6回はチャレンジしたが全部失敗。画像のタイムスタンプを確認すると、1時間20分くらいトライしていたようだが、あまりの通らなさにさすがに折れてQRコードで通過したのであった。


・1人だけいた顔パス改札者

そんなわけで私自身は近未来を味わえなかったんだけど、実は認証チャレンジしている間に1人だけ顔認証改札を利用した猛者がいた。

その猛者は顔認証チャレンジに必死な私を横目に、風のように通り抜けていったので当然写真とかもないのだが、逆にうまくいけば声をかける隙もないほどスムーズであることは分かった。ほぼ駆け抜けるみたいに通過した猛者の顔認証改札を見られただけでも1時間20分トライした甲斐があったかもしれない……

いや、ないな。精一杯好意的に捉えようと頑張ったけど、いくら何でもアプリ以降の部分はもうちょっとユーザーフレンドリーである必要があると思う。一般の人の利用を想定しているならだけど。動物園前駅は比較的乗降者数が少なめで、利用者に迷惑をかけることがなかったのだけが今回良かったと思った点だった。

参考リンク:TBSニュース
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼顔パスするまでのハードルが私には高すぎた