この話は誰にでも起こりうると私は思う。運悪く被害者になる場合もあるし、知らず知らずのうちに加害者になっている可能性もある。


ただ、この記事を読んで理解したら、自分のペアリング状況を確認するようにしていただきたい。


何があったのか簡潔に説明する。


結論を先に言うと、近隣の方に私の家のBluetoothスピーカーを2台も乗っ取られ、結局、新しいスピーカーを2台も買い直すハメになったのだ。

音楽が大好きな私の家には数多くのスピーカーがあり、有線のものもあればBluetooth接続のものもある。今回乗っ取られたのは、書斎とリビングにある2台のBluetoothスピーカーだ。


・1台目「Creative」

まず異変が生じたのは、書斎の仕事机の上に置いてある「Creative(クリエイティブ)」というメーカーのBluetoothスピーカーだった。


どういうわけだか、このスピーカーから、突如として私の全く知らない「何かのドラマの声」らしき音声が流れ始めたのである。


最初は意味が分からず、電源を切った。そして入れると、また「ピコーン」とペアリングされた音がして、ドラマの声らしき音声が流れ続けた。


はて? ウチの何かのデバイスがドラマを再生していて、このCreativeスピーカーと接続されているのか……? と一瞬は思ったが、その可能性はゼロだ。


なぜならこのCreativeのスピーカーは、リビングに設置しているプロジェクターで動画なり映画なりを楽しむ専用のスピーカーなのである。


ペアリングしているデバイスも、プロジェクター(正確にはプロジェクターに接続しているAmazonの「Fire TV Stick」)だけのはずなのだ。


ここで私はハッと気づいた。近隣の誰かが、間違えてウチのCreativeスピーカーとペアリングしてしまって、その音声が流れているのだと。


なぜそれが可能なのかと言えば、プロジェクター(Fire TV Stick)の電源をつけたと同時にスピーカーから音が出る(ペアリングされる)よう、常に電源をつけっぱにしていたからである。


つまり、電源つけっぱのBluetoothスピーカーがペアリング来い来い体制である一方、プロジェクター側はお休み中。その間に、近隣の方が間違えて私のCreativeスピーカーとペアリングしてしまったのである。


これに関しては電源つけっぱでペアリング来い来い体制にしていた私にも落ち度はあるが、電源つけっぱにしている人、けっこう多いのではないだろうか?(え、もしかして私だけ?)



・対処法は……

いずれにしても、勝手にペアリングされてしまったBluetoothスピーカーから、なんとかして「主権」を取り戻さねばならない。恋愛的には浮気されている状態だ。


んでもって、こうなった場合の対処法をネットで調べてみると……なんと、ほとんど、為す術ないらしい。うそだろ? まじかよ?


具体的にはこうだ。


まず、Bluetoothスピーカー側からペアリング解除をすることは基本的に不可能。そういう機能がある高性能なスピーカーならアプリ等からできるかもしれないが、基本的には無理。


では、どのように主権を取り戻すか。やり方は以下の通り。


まずはBluetoothスピーカーの電源をオフにして強制的にペアリング解除。なお、この直後に電源ONしたら、また再び自動的にペアリングされる。


それを防ぐために、Bluetoothスピーカーを、間違えてペアリングしている人から物理的に遠ざけ、ペアリングできない場所まで離す。


安全地帯まで避難させたら電源ONして、自分のスマホなどとペアリングして主権を回復、元サヤに戻す……という流れになるというが、そんなのポータブル型のBluetoothスピーカーならまだしも、“据え置き型のBluetoothスピーカー” だとマジで厳しい!


机の裏をゴソゴソして、きれいにまとめた配線を外し、犯人が誰なのか分からぬまま家の中をウロウロして、ペアリングされないエリアに避難して……って、なんでこんなことやってんだよオレは(泣)


隣の人なのか、上の人なのか、下の人なのか、それとも斜め下の人なのか。誰なんだよ! 私のBluetoothスピーカーに勝手にペアリングしているのは!



・なぜ相手は気づかないのか

ちなみに、なぜ相手側がウチのBluetoothスピーカーから音が出ていることに気づかないのかというと、おそらく「テレビなどからも音が出ているから(Bluetoothスピーカーはサブ的な位置付け)」だからだと思う。


もしもドラマを見ようとしても無音なら気づくはず。でも、延々と気づく様子もない。たぶんだけど、マルチサラウンド的なシステムでドラマを観ているのだと予想する。


ともあれ、家の端っこにある書斎から、逆方向の端にある寝室まで遠ざけたところで、ようやく “勝手にペアリング包囲網” からは抜けられた感触。スマホとペアリングして……よし、主権回復!


このままあらためて書斎に戻して、電源をONにして……と次の瞬間! また「ピコーン」と勝手にペアリングされたではないか! なんなんだよ!! 早押しクイズかよこれ! ペアリングビーチフラッグかよこれ!


そして私が泣いている後ろで、Creativeスピーカーからは謎のドラマの音声がブツブツと念仏のように流れているのであった……。


なお、このドラマは何なのか調べてみたが、とりあえず「地デジ」の放送ではないことはわかった。しかし、それ以上のことはわからず。おそらくAbemaとかNetflixとかだと思うのだが……わからん。



・襲いかかる第2波

で、もうノイローゼ状態になった私は、Creativeスピーカーの電源を常にオフにすることにした。いくら引き裂こうとしても、電源ONしたら瞬時に手を繋ぐとか、どんだけ失楽園なんだよお前ら。


もうダメだな。もうこのCreativeスピーカーはメルカリに売るしかないな……と諦めながら電源オフ……していたら、まさかの事態が我が家のスピーカー軍に襲いかかったのである!


なんと……


書斎ではなく、今度はリビングに置いてあった「Harman Kardon(ハーマンカードン)」というメーカーのBluetoothスピーカーから、爆音でドラマのセリフが流れ始めたのである!!!


ちなみにこのハーマンカードンのBluetoothスピーカーも、常に電源はONだった。「いい音でスマホの音楽を聴きたいな」って時、すぐにペアリングするために常にスタンバイ体制にしていたのだ。


しかしそれが仇(あだ)となった。


電源オフのCreativeスピーカーに接続できなくなった「何者か」は、恐ろしいまでのアグレッシブさでハーマンカードンのBluetoothスピーカーとペアリングしてきたのである……!


あわててBluetoothスピーカー側の音量ボタンをダダダダダッと押しまくり音量を下げたが、聞こえてくるのは、やっぱり何かしらのドラマの声。おそらく韓流ドラマの吹き替えの声。


なんなんだよマジで。


気付けよマジで……(泣)


1台だけじゃなく、2台目にまで襲いかかるとか……マジでカンベンしてくれよ……!!(泣)


「ウチのBluetoothスピーカーにペアリングしていませんか? 恐れ入りますが、接続を確認していただけると助かります。羽鳥」


そんな手紙を周辺の家にポストしようか本気で迷ったが、結局のところ、それを投函したところで理解してもらえないような気がしてきたので、完全敗北として諦めることにした。



・新調した

その後、私は2台のBluetoothスピーカーをメルカリに出品。少しのお金にしかならなかったが、あらためて新しいBluetoothスピーカーを購入した。


一台は、Sonos(ソノス)というメーカーの、けっこうイイやつ。単なるBluetooth接続ではないようなので、もう乗っ取られる心配もなさそう。空間オーディオも聴けるし、今のところ大満足している。


そしてもう一台は、乗っ取られた2台目のBluetoothスピーカーと同じ「Harman Kardon(ハーマンカードン)」の、ちょっとカッコ良いモデルを新調。


デザイン的に素晴らしく、また、「電源ONした時のサウンドと演出」が非常にカッコ良いので、使う時だけ電源ONして、その演出を楽しむことにしている。


使わない時は電源オフにしておけば、物理的に乗っ取られることもないだろうし。



・冷静に考えるとマジで怖いぞこれ

──長くなったが、以上が私に起きた「Bluetoothスピーカー乗っ取り事件」の全貌である。


上記の通りウチはBluetoothスピーカーを買い替えたし、電源オフにする習慣も付いたので、もう良いっちゃ良いのだが、どうか気づいてほしいのは、「勝手にペアリングされた方は、解除されるまで手が出ない」ということ。


買い直すハメになる場合もあるということ。


そして。


「韓流ドラマの声でヨカッタ……」


ということである。


もしもこれが、くんずほぐれつの、ムッシュムラムラな、ハッスルハッスルな映像の音声、それも私がいないうちに超爆音にされたとしたら……。


考えるだけで恐ろしい。


どうか皆様もお気をつけて……。


【完】


執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24