きっと戻って来てくれると信じていた。そんなチバユウスケさんの訃報が報じられたのは2023年12月5日のこと。あまり知らない有名人の訃報に「お悔やみ申し上げる」のだけはやめようと心に誓った私(中澤)だがチバさんは違う。バンドを始めるキッカケになった1人なのである

ミッシェル・ガン・エレファントも出ていたという下北沢CLUB Queのステージに初めて立った時は足が震えたし、The Birthdayのライブも観に行った。ライブハウスでチバさんの伝説みたいなのを聞く度に胸が躍ったものである。

もちろん、もっとコアなファンは多いと思うが完全に青春。1度で良いから会ってみたかった……。おそらく震えて話せなかっただろうけど。そんなチバさんが遺した名曲5選を振り返ることでその冥福を祈りたい。

・「世界の終わり」

チバさんのデビューバンドであるTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT(ジ・ミッシェル・ガン・エレファント)のメジャーデビューシングルであるこの曲。

「世界の終わり」や「赤みのかかった月」など空想的なワードが、「パンを焼きながら」「紅茶」などの日常的な描写と交錯する歌詞の荒涼とした世界観は当時衝撃的だった。今になって振り返ると谷川俊太郎みたいにも思えるのだが、セカイ系ブームよりもずっと前にこの歌詞なのは時代を先取りしまくってると言える。

ちなみに、発売は1996年。エヴァンゲリオンのテレビ放送と同時期で、2000年代~2010年代のセカイ系アニメブームを作った人は全員エヴァ見ながらミッシェル聞いてたんじゃないかと勝手に思っている


・「さよなら最終兵器」

時代がチバさんに追いついてからリリースされたのがThe Birthdayの『さよなら最終兵器』。ライブで歌詞が突き刺さってくるように感じた瞬間を今でも昨日のことのように思い出す

ミッシェル解散後もROSSO、The Birthdayと音楽シーンで異彩を放ち続けたのはこの歌詞の力もかなり大きいだろう。もはやチバ節と言える表現で、描写してない情景まで脳裏に広がるような歌詞は映像作品みたい。


・「サタニック・ブン・ブン・ヘッド」

どこか繊細さが感じられる歌詞の一方で、バンドのイメージは常に男っぽさが前面に出ていたチバさん。歌詞が「サタニック・ブン・ブン・ヘッド」だけなのが、ミッシェルの5thアルバム『ギヤ・ブルース』に収録されている「サタニック・ブン・ブン・ヘッド」だ。

途中のテンポチェンジから踊り狂ってしまうこの曲は、ジャムバンドとしてのミッシェルの側面が垣間見える。ギターのアベフトシさんとかライブでソロを弾かなかったりすることもあり、その即興のインスピレーションがバンドのテンションに反映されるところがミッシェルの良さでもあった。



・「ジェニー」

ミッシェルがノリノリだった1998年。「スモーキン・ビリー」のカップリングで収録されていたのが『ジェニー』である。この曲の主人公はなんと海賊。当時、海賊が主人公の歌詞とかマジで珍しかったのだが、激しいロックカントリーみたいな曲調と組み合わさってミッシェルの中でも1、2を争うくらい好きな曲である。

ちなみに、ファンの間では、チバさんは寝坊が多く当時のマネージャーに蹴られアバラを折られたエピソードが歌詞になっているという噂が囁かれていた。時代を感じる。


・「ドロップ」

基本的にテンポの速い曲が多いチバさんのバンド。ライブでは音源よりもさらにテンポを上げて演奏されることもだいご味だったが、そんな中で遅めのテンポなのが後期の名盤『カサノバ・スネイク』に収録されている「ドロップ」だ。ギターもノイジーでどことなくオルタナ的気だるさが漂っている曲。

異彩を放つ曲ではあるのだが、ラストライブの幕張メッセでは1曲目を飾り、その幕開けに「終わり」を感じさせられたものである。ああ、ぶらぶらと夜になる ぶらぶらと夜を行く なめつくしたドロップの気持ち。


・語り始めたら止まらない

個人的な5選は以上となる。いやいやいや! まだまだあるだろ!! 『ダニー・ゴー』は? 『武蔵野エレジー』は? 『KIKI The Pixy』は? 『リボルバー・ジャンキーズ』は? 『リリィ』は? 『ミッドナイト・クラクション・ベイビー』は? 『ゲット・アップ・ルーシー』も最高だし『GIRL FRIEND』なんて絶対入るだろ!

うん、私も同じ気持ちだ。チバさんのキャリアには本当に名曲が多い。語り始めたら止まらないくらいに。なので特に思い入れの深い5曲をあげさせていただいた。

私自身が売れないバンドマンゆえに、人の記憶に残るというのはミュージシャンの誉れの1つだと思っている。よって、その気持ちをこうやって記すことで私なりの弔いに変えさせていただければ幸いだ。ロックキッズ永遠の憧れ・チバユウスケに捧ぐ。

参考リンク:UNIVERSAL MUSIC JAPAN
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼世界の終わり / THEE MICHELLE GUN ELEPHANT

▼The Birthday – さよなら最終兵器

▼SATANIC BOOM BOOM HEAD

▼ジェニー

▼ドロップ