先日、Uber Eatsで気になる店を見つけた。「がっつりラーメン 豚六三(ろくじゅうさん)」という二郎系のラーメン店である。メニューを覗くと、「本商品はローソン店舗で調理しております」との文言が付記されていた。つまりローソンのゴーストレストランということだ。

以前当サイトで紹介した店もそうだったが、ローソンのゴーストレストランはローソン色を前面に出していないことが多い。ゆえにたまたま出くわすと妙な興奮がある。かつて大学生時代に味わった、「偶然入った店が親しい友人のアルバイト先だった時」の興奮に似ている。

さておき、「二郎系」と「ローソン」という組み合わせに興味を引かれた筆者は、さっそく注文してみることにした。そして判明したのは、意外と言うべきか何と言うべきか、同店がかなりピーキーな店であるという事実だった。


まず知っておきたいのは、同店のラーメンの価格である。オプション無しのプレーンな状態(麺240g・野菜200g・チャーシュー90g)が1970円となっている。だいぶ高い。また、麺も極太のワシワシ系ではなく、オーソドックスな中太麺である。

「値段が高いうえに、二郎系の麺ではない二郎系ラーメン店」とだけ書くと心象は悪いだろうが、しかし無論、こうして紹介するからには美点もいくつか存在する。

1つには、野菜が3倍盛り(600g)まで変更可能で、かつ変更が無料であるということ。2つ目に、ローソンでお馴染みの鶏から揚げ、メンチカツといったレジ横スナックが注文できること。最後に、複数の店舗が展開されており、どれも基本的に24時間営業と見られることだ。

最も注目すべきは1点目だろう。おそらく1970円という価格は、3倍盛り前提なのではないかと思う。これを加味して考えれば、Uber Eatsにおける他の二郎系ラーメン店と比べても、実はそれほど価格は高くない。

逆に言えば、3倍盛りにしないなら損をする感は否めない。わざわざ逆に言う必要があったのかはともかく、折角なので今回は3倍盛りにしつつ、「鶏からもも 旨塩(338円)」と「旨みあふれる牛肉メンチ(150円)」も合わせて注文した。



届いた実物の上蓋部分には、もやしや麺、チャーシューがぎゅうぎゅうに詰まっていた。調理方法は、受け取った状態のまま「レンジで500W以上6分~8分」温めればよいとのこと。加熱後に上蓋を外し、その下にあるスープに麺と具材を投入して完成だ。

試しに6分ほどレンジアップしたところ、勢いよく湯気が立つ程度には温まった。容器の色合いも相まって、一瞬ジンギスカンかと錯覚した。まあ、これほどもやしが支配的なジンギスカンもあるまい、などと含み笑いつつ上蓋を開けると、そこには驚愕の光景が待っていた。


もやしが出てきたのである


もやしを開けたらもやしが出てきた。もやしマトリョーシカである。野菜3倍盛りを少々舐めていた。無論、これは嬉しい誤算だ。



大量にもやしが浮くスープに麺と具材を投入すると、なかなかの壮観が出来上がった。なんだか気分が良くなってきたので、「ここにさらに鶏から揚げとメンチを投入したらどうなるのだろう」という思いつきを、あまり脳内で精査することなく実行に移した。

結果、圧巻の光景が出来上がった。もやしの厚底を履いたもやしの山の裾野に、から揚げ、メンチ、チャーシューが織りなす茶色い森林が広がる。描写していて良い意味で目まいがしてくる。この光景こそが正解なのではないかとさえ思えてくる。

たまらず箸を手に取り、最初にもやしをつかんで口に運んだ。みずみずしいシャキシャキとした食感は、二郎系の実店舗で食べるものとまるで遜色なかった。なにせ三倍量なので、もやしの質があまり良くなければ苦境は免れなかったが、美味しいとなれば愉悦の塊でしかない。

続いてスープに口をつける。ニンニクの風味と背脂の旨味がふんだんに溶け込んだ味わいだ。二郎系に求める味がしっかり全うされている。さりとて飲み続けてもすぐに飽きが来ることもない。カドが削ぎ落とされた、ほど良いパワフルさである。

そのスープと前述の中太麺との相性だが、これもまた良い。極太麺よりもスープと絡む。絡んだまま、つるつると胃に入っていく。極太麺の方が良いという人もいるだろうが、これはこれで実にアリだと感じる。

極めつけに、チャーシューと肩を並べるレジ横スナックたちの仕事ぶりも素晴らしい。から揚げも、メンチも、衣の食感と引き換えに得たスープをまとい、何とも絶妙に舌を喜ばせてくれる。

筆者の酔狂によって投じられたにしては、まるで生え抜きのメンバーであるかのようなハマり具合である。見込みは間違っていなかった。それが証拠に、ボリューミーながら箸が止まらない。



というわけで、今一度結論を書くなら、「豚六三」はラーメンからサイドメニューに至るまで、「仕様さえわかっていれば存分に楽しめる店」だった。筆者のようにやりたい放題やるかは好みの域だとしても、やはり物量に浸るつもりでいた方が幸福になれるのは確かだろう。

ピーキーである。ピーキーであるが、もし興味を持った方がいれば是非お勧めしたい。親しい友人が、普段とは異なる形で、あなたの心を満たしてくれるはずだ。

執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.