ここ数カ月、特に都心では「コロナ前より多いんじゃね?」というほどインバウンド客を多く目にする。円安の真っ最中である日本は、海外の人からすれば「最高にコスパがいい国」なのだろう。いいぞ、日本でお金をたくさん使ってくれ。

さて、インバウンド客の増加に伴い、街中では「明らかに迷っている外国人観光客」が多く見受けられるようになった。そんな時に使えるのが「Where do you want to go?」である。

・英語力ゼロ

あらかじめ断っておくと、私(サンジュン)は全く英語が話せない。隙あらば海外旅行に出かけてはいるものの、英語力はほぼゼロ。持ち前の明るさと勇気で、その場その場を何とかしのぎ切っているだけである。

ちなみに先日出かけたニューヨークの入国審査でも「Do you Know Pokemon go?」「I’m Pokemon go journalist」「5Days stay」「5days,5days!」だけで何とか乗り切った。所詮、その程度の英語力しか持ち合わせていないのが実情だ。

……が、日本で道に迷っている外国人観光客を見かけたら、そのまま放っておけない。でもきっかけが……と思っていたとき、1つだけ覚えた英語が「Where do you want to go?」だ。

・どこに行きたいんですか?

意味は「どこに行きたいんですか?」で、これ以外のフレーズは知る由もない。ただ「Where do you want to go?」を覚えてから5年ほどが経過するが、少なくとも300組以上の外国人観光客には話しかけているハズだ。

基本迷っている人たちはスマホ(もしくはガイドブック)を持っているので、あとは地図さえ見せてもらえれば何とかなる。ボディランゲージと「ライト」「レフト」「ストレート」を駆使すれば、ある程度の意思疎通は可能だ。

もちろん稀にわからない場合もある。そんな時は「ソーリー」と謝れば恨まれることもないハズ。私も経験があるのでわかるが、異国の地で迷うのはかなり心細いもの。そんな時に向こうから「どこへ行きたいんですか?」と声をかけられて迷惑な人はいないことだろう。

ライトだのレフトだのと道を教えてあげると、ほとんどの場合「サンキュー」「エクセレント」「アリガトゴザマス」などと言ってもらえる。きっと私が今まで声をかけた300組の人たちは、記憶のどこかで「そういえば日本人に親切にされたなぁ」と残っているに違いない。

まあ、私は在日韓国人なのだが、それはいい。ちょっとした勇気と「Where do you want to go?」で人助けができるなら、こんなに素晴らしいことってあるだろうか? 気持ちはあっても声をかけられなかった人たちは「Where do you want to go?」をぜひ覚えていただきたい。

・声をかけるときのコツ

ちなみに声をかけるときのコツは「1秒も迷わないこと」である。電車で座席を譲るときもそうだが、この手の親切は迷えば迷うほど行動には移せなくなるもの。真面目な話、1秒単位で自分への言い訳が増えていくので「反射的に声をかけること」が何より重要だ。

なので私は、娘と自転車に乗っていようと、会社の誰かと一緒にいようと、それらしき人を見たら迷わず声をかけるようにしている。そんな父の背中を見て育った娘も、きっといつの日か同じように誰かに親切にしてくれる……といいなぁ。

勇気は自分の内側からひねり出すものである。ケチケチしなければきっと勇気は出せる。というか、出そう。ほんの少しの勇気と「Where do you want to go?」があれば、昨日までは無力だった自分が誰かの助けになれるのだ。


Hello! Where do you want to go?


執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.