「大ヒット上映中!」、公開直後の映画の宣伝文句としてよく聞く言葉である。以前から使い古されている売り文句で、正直それを聞いても「じゃあ、観に行こう!」とはなりにくい。少なくとも私(佐藤)はならないのである。

そこで、これに代わる言葉を考えてみたいと思う。もっと作品を観に行きたくなるような言葉が、きっとあるはずだ。

・もしかして代わる文句がない?

そもそも、この言葉は今の時代に即していない気がする。というのも、いくらテレビやウェブで「大ヒット上映中!」と宣伝したところで、仮にヒットしていなければ、そのことがすぐにわかってしまうからだ。その作品の上映劇場を調べて空席状況を見ると、スカスカであるケースは少なくない。

それにも関わらず、「大ヒット~」を繰り返しているところを見ると、「面白くないのかな……」と思ってしまうのだ。

私(佐藤)の経験上、本当に観に行こうと思う作品は、割と身近な人が「面白い」と言っていたり、SNSで話題が流れてきたりするものである。そういう作品は、肌感でヒットしていることがわかるので、「大ヒット~」に違和感を覚えない。


先に挙げた前者と後者では実情に大きな開きがある。それでも同じ文句で宣伝されるのは、おそらくほかに代わる文句がないからではないだろうか? そもそも「大ヒット上映中!」が行動に駆り立ててくれる気はしないというのに。


・「大ヒット」は大ざっぱ

そこで考えてみたいと思う。どんな言葉だったら行動に駆り立ててくれるだろうか? まずもって「大ヒット」がしっくり来ない。きっとこの言葉が大ざっぱにすぎるからと私は考えている。

そこでたとえば、音楽関連のセールスで用いられる言葉「スマッシュヒット」を使うのはどうだろう。上映初日から「大ヒット」というより、「初週スマッシュヒット」というと勢いを感じる。これからヒットしそうな予感さえする。


同じく使い古された言葉で「全米が泣いた」も大ざっぱなので、もう少し範囲を狭めても良さそうだ。「ニュージャージーが泣いた」とか「テキサスが泣いた」と言われると、一定の層に支持を得られたという気がする。

いっそのこと国内で「杉並区が泣いた」とかなら、より具体的になるかも。とはいえ、国内の地域を挙げると誇張になる可能性も否めない。「全米が泣いた」でも十分誇張ではあるけどね。



・ネットの動向を織り込んでは?

別の切り口で考えてみよう。近年は情報を拡散させる上で、SNSをはじめとする「ネットでの話題性」を無視することはできないだろう。とくに拡散力のあるインフルエンサーやYoutuberに、ネタとして拾われるかどうかが肝になってくる。

そこで、「Youtuberの間で話題沸騰!」「解説系Youtuberに人気!」なども有効な売り文句になるのではないだろうか。

もし仮に、作品に関して辛辣な意見の動画が多くあったとしても、それはそれで見てみたいと思うものだ。

実際、私は厳しい意見を目にしたことをきっかけに、『シン・仮面ライダー』を見ている。人の評価を参考に、自分なりにこの作品について感想を持ちたいと思ったからだ。

ネット上の動向を織り込むことで、「大ヒット~」よりは行動を促すかもしれない。


・飲食店の文句を参考に

他業種の文句を参考に言葉を考えるのも良いかもしれない。たとえば、飲食店でありがちな文句は使えそうだ。「元気に上映中!」「絶好調上映中!」など、居酒屋のようなハイテンションな接客に期待して、作品内容の関係なく、劇場に入ってしまうかもしれない。静かに鑑賞したい人の足は遠のくかもしれないけど……。

「心を込めて上映中!」なんていうのも良さそうだ。そんな言葉を掲げる劇場には、作品に関係なく行ってみたい気がする。映画を愛する人にとっては、好印象のはず。



・ヒットだけが尺度じゃない

いずれにしても思うのは、作品を「面白い」と思うかどうかは、人それぞれ。必ずしもヒットしている作品が、その人にとって良いものとは限らないはず。むしろそこまでヒットはしていないけど、良作・名作と言われるものはたくさんある。

それなのに「大ヒット上映中!」としか、宣伝で語られないのは惜しい。もっと作品によりそって、心をくすぐるような、劇場に足を運びたくなるような、そんな宣伝文句が使われることを願っている。


執筆:佐藤英典
イラスト:Rocketnews24