話題のインド映画『RRR』がついにアカデミー賞をとったらしい。これは当サイトのサンジュン記者がかねてより「絶対観ろ」と周囲にしつこく勧めていた作品であり、そろそろ観念して観るしかないようだ。

ってことで観た。超スゴかった。どうスゴかったかはサンジュン記者の記事をご覧いただくとして、しかし1つだけ、私にはどうしても気になる問題があった。それは「作中で描かれるイギリス人があまりに極悪すぎる」ということ……これ、イギリス人が観たらどう思うんだろう?

・フィクションと分かっちゃいても

私がここまでイギリス人に同情するのには理由がある。それは小学生のころに観たブルース・リー主演の伝説的映画『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972)。この作品に描かれる日本人があまりにも悪者すぎて、幼少期の私は大きなショックを受けたのだった。

もちろんどの国にもいい人と悪い人がいる。しかしリーほどの人気者をあれほどイジメてしまっては、外国の人たちに「日本人って全員こんな感じなんだ……」と思われるのではないか? 幼い私にとって、それはとてもつらいことに感じられた。

『RRR』の舞台は1920年のインド。当時イギリスの統治下におかれていたインドではイギリス人が幅をきかせ、インド人たちを虫ケラのように扱っていた(という設定)。そんな巨悪に立ち向かう2人のたくましきヒゲ男の友情・信念・ド迫力のバトル……というのが、『RRR』の超大まかな構図である。

多少なり世界史をかじった人ならば、植民地時代のイギリス人がインドでどれくらいヒドイことをしたか、ある程度はご存知だろう。とはいえ『RRR』はフィクションであり、この映画を観るイギリス人は植民地時代を生きた人たちではない。

「かっこよくて正しいインド人が悪いイギリス人をやっつける映画が世界的に大ヒットしている」という事実を、イギリスの子供たちが知ったら悲しむのではないか? 私の気にしすぎ??


・イギリス人に聞いてみた

あまりに気になったので翌日、私はイギリス人の友人(イギリス在住)に意見を求めてみた。彼女は果たして『RRR』を観たのだろうか?


友人「ソーリー! 家族にも聞いてみたけれど、誰も『RRR』を観ていなかった……ってか、その映画を知らなかったわ! でもテレビのニュースを見ているかぎり、悪い意味で話題に上がっている様子はなさそうね」

──イギリスが悪者の映画がアカデミー賞をとったことについて、率直にどう思う?

友人「う〜ん。植民地時代のイギリスはマジでリアルガチの悪者だったんだから、別に今さらどうとも思わないかも。むしろイギリスのイメージって “世界中で悪徳の限りを尽くした国” でしょう? 日本人はそう思わない?」

──イギリスといえば “ステキな英国王室” ってイメージかなぁ……

友人「そのロイヤルファミリーだって植民地時代の負の遺産なのよ。だからインドの皆さんに何を言われても返す言葉はないわ。個人的には “ガンガンやっちゃって” って感じかしら」

──なるほど

友人「ちなみに今のイギリス首相はインド系なの。時代は変わったものよね。でも彼はなぜか移民や難民を排除しようと動いているんだけどね」


・何度も観たいヤツ

最後はちょっと返答に困ったものの、ともかく友人が冷静に自国を客観視していることはよく分かった。今回ご紹介した内容はあくまで一個人の見解ではあるが、意外とイギリス人は、私が心配したほど今回の問題を気にしていないのかもしれない。

なおアカデミー賞の影響もあってか、『RRR』は現在都内の映画館で満席の回が続出するほど混雑している。上映中はセリフより先に客席から笑いが起きる場面もあり、リピーターの多さがうかがえた。心配が解消されたので、私も改めてもう一度観に行きたい所存だ。

本作の素晴らしさに関しては、冒頭でお伝えしたサンジュン記者の記事にだいたい書かれているのでそちらをご覧いただきたい。個人的に大きな興奮をおぼえたのは「主人公が容赦なく悪者を殺す」という点だ。

ハリウッドや日本の映画に登場するヒーローは多くの場合、敵に情けをかけがち。そこへきて『RRR』の主人公は容赦なく殺しまくるので観ていて爽快である。普通のヒーローものに抵抗感がある人も、これならきっとイケるはずだ。オススメです、マジで!

執筆:亀沢郁奈
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