ドン・キホーテって行くだけでちょっと楽しい。グッズのジャングルを分け入ると「こんなんあったんかい!」というものに出会うことがあるからだ。結構頻繁に。というわけで、ドンキをフラついていたところ、あるポスターが目に留まった。

それは永山瑛太さんがモデルを務めるドンキのPB(ピープルブランド)『情熱価格』の家電の広告だったのだが、私(中澤)が衝撃を受けたのはキャッチコピーである。そこにはこう書かれていたのだ……

・その程度の機能ならドンキで十分だ!

「進学とか単身赴任で数年間だけ必要? その程度の機能ならドンキで十分だ!」と。なんだこの説得力は。特に家電を探しているわけではなかったのだが、どう考えても「そうやな」という相槌しか浮かんでこない。永山瑛太さんも絶妙な顔してるなコレ

一方で衝撃を受けたのは、自社製品について「その程度」とか「ドンキで十分」と言い切っていることだ。繰り返すが、このポスターはドンキ自身が製作したものである


・よく通ったな

客観視を通り越してもはや自虐なレベル。試しに、Twitterで検索してみたところ「潔い」「説得力が凄い」「本当にこれ」などSNSでも話題になっているようだ。

それにしても、このコピーよく通ったな。安さを売りにしている企業でもこういう下げのイメージがあるワードは嫌がるものなのに。


・作った人に話を聞いてみた

たとえ、現場や客の共通認識であったとしても社長や上司はガチだから却下するというのはあるあるだと思う。そこでドンキに問い合わせ、このコピーを作った人に話を聞いてみた。


担当者さん「弊社のモノづくりの考え方として、“核となるべき機能に集中特化した驚安商品の創出” というのがあります。これから新生活を始める学生さんや新社会人のお客さま方に、使わないかもしれない機能をあえて外すことでコスパを追求した、十分使える情熱価格の商品を強いメッセージでお伝えしたかった。

それをそのまま『コスパがいい』『あなたの暮らしにピッタリ』と表現するのではなく、お客さまがイメージする弊社らしい言い回しを考えた結果、少し自虐的で刺激的なフレーズに行き着きました」


──上司に止められたりしなかったですか


担当者さん「会議でプレゼンする時は少し不安はありましたが、『ストレートでわかりやすい! 当社にしかできない当社らしい表現だ!』と満場一致の合意を得られました」

──とのこと。考えた人も凄いけど、満場一致なのも凄いと思う。ドンキの社風が感じられるというか。

考えたら、ドンキの冠である「驚安の殿堂」というのも良いコピーだ。短いのに、価格だけではなく店の雰囲気がなんとなく伝わってきて、これ以上適切なワードはないようにすら思ってしまう。必要なもののために、他の全てを捨てる。そうやって尖らせたものだからこそ刺さるのかもしれない。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

※ドン・キホーテは店内撮影禁止ですが、本記事の画像については特別に許可をいただいてます。