パソコンゲームプラットフォーム「Steam」を搭載した携帯ゲーム機「Steam Deck」の国内出荷がスタートした。

これまでゲーミングパソコンを中心に、大きく、重く、高価なパソコンでしか動かなかったゲームが手元で遊べるとあって、ゲームファン待望のデバイスだ。

スペックなど技術的なレビューはすでに海外サイトも含めて多数出ているし、論じられるほどの知識もないので、買おうかどうか迷っている人に向けて “手ざわり” をシェアしたい。


・Steam Deck最大の利点は

初めてパソコンゲームに触れる人にとって最大の利点は「高価でかさばるゲーミングパソコンがなくても」あるいは「パソコンの知識がなくても」世界中の人が作った大小のパソコンゲームを、MODでカスタマイズしながら遊べる、という点に尽きるだろう。

すでにSteamで遊び倒している人なら「ベッドで寝転がりながら」プレイできることも見逃せない。もうそれだけで神マシンである。


筆者が購入したのは最小モデルのSteam Deck 64GB(税込59,800円)。ストレージが64GBと小さいことや、eMMCであることなど上位モデルと細かな違いがある。

数日遊んだ印象や感想は以下のとおり。「扱いが簡単」「ゲーム機として必要十分な機能」という長所がある一方、「すべてのゲームが快適に動くわけではない」といった注意点もある。順に見ていこう。


・簡単な操作でSteamゲームを遊べる

セッティングは驚くほど簡単。言語やタイムゾーンなど、言われるままにいくつかの設定やダウンロードをすればすぐに遊べる。スマートフォンのセッティングができる人なら誰でもできるだろう。

まったくの初めて、という場合はアカウント作成のステップが加わるはずだが、すでにパソコンでSteamを遊んでいた人なら手順はさらに簡単だ。

ログインするだけで、まさに直前まで遊んでいた見慣れたライブラリが、手のひらにそのまま再現されるのだから感動すら覚える。パソコンと携帯機がシームレスにつながっている感覚。ゲーム機らしく、ボタンひとつでスリープ&スリープ解除が行えるのも素晴らしい。

これまで筆者はいわゆるゲーミングパソコンを使ってきたけれど、パソコンに詳しくない自分には購入や設定のハードルが高かった。

CPU、GPUなど見慣れないワードが並ぶし、どのモデルを購入したら自分のプレイしたいゲームが動くのか、値段の違いはどこから来るのか、わからないことだらけ。購入後もドライバの更新など、メンテナンスは続く。

その点、Steam Deckは3モデルしかないし、決まった使い方をしていれば理解を超える壊れ方をすることもないだろう。知識がなくても遊べる。パソコンゲームが日常に「降りてきた」という感覚だ。

それじゃ物足りない、という猛者には自分好みにカスタマイズする余地もある。さっそくWindowsを導入する人や、エミュレーター化する人もいる模様。知識があればあったで可能性が広がりそうだ。

※デフォルトではLinuxがベースだという独自OS「Steam OS」を搭載


・ゲーム機として必要十分な機能

VR技術の黎明期のように、熱狂をもって迎えられた新しい技術ほど、期待が外れたときの落胆も大きい。

Steam Deckも「デカそう」「動かなそう」「結局パソコンに戻りそう」と、本当に使い物になるのか半信半疑のところもあると思う。

筆者は十分に「使える!」と思った。というか、すでに毎晩寝室で使っている。

もうパソコンの前に座り、電源を入れ、パスワードを入力し、Steamを起動させ……という従来の作業が死ぬほど面倒に思えるほどだ。

気になるのは大きさ。たしかにデカい。

開封したときは「おおっ」と声が出るほど圧倒された。Nintendo Switchよりもひとまわり、ふたまわり大きいのが見てとれる。

しかし、本体は意外なほど持ちやすい。

両サイドが非常に厚いのだが、この厚みがグリップの役割を果たしてかなり安定する。手のひらにフィットし、「しっくりくる」という表現がぴったりだ。

そしてボタンが右上と左上に集中しているので、通常のプレイなら指が届かないといったことはない。筆者は女性としては平均的な手のサイズだと思うが、まったく問題なく遊べている。

重さは公称値で約669グラム。短時間なら問題ないが、自分の腕の力だけで長時間プレイは難しい。どこかに腕を置いて支えたくなるから、枕やクッションなどが必要だろう。

立体感のあるサウンドにはびっくり。AirPodsなどBluetoothイヤホンも使える。

普段、まにあわせのモニターで音を出していたので、聴き取れていない音がたくさんあったことに気づいた。「こんな効果音が入ってたんだ!」「この人、こんな声だったんだ!」と新発見の連続である。


・MODの状況

パソコンゲームの醍醐味のひとつ、MOD。おもにユーザーが作った改造データのことで、ゲームに新たな機能を追加したり、不便なところを改善したり、海外のゲームを日本語化したりできる。

中にはゲームデータに深刻な影響を与えるものもあるため、何が起きても自己責任で遊ぶのがルール。といっても違法なものではなく、ファンメイドのアイディアが後に正式にゲームに採用されたりもする。

「このゲーム、ここが○○だったらもっと楽しいのになぁ」というユーザーの夢を形にするのがMODだ。


現状、MODへの対応状況は「Steamワークショップ上のMODは(一応)動く」「それ以外の独自MODは専門知識がないと導入が難しい」というところ。Steam Deckが独自OSを採用しているためだ。

※Steamワークショップ:MODの投稿、 検索、 評価、 ダウンロードができるSteam上のコミュニティ

一例として、都市建設ゲームの最高峰『Cities: Skylines』で、昭和の日本風の家屋が見えると思う。

これはゲーム本編にはない建物で、知識と技術のあるユーザーが作ってくれたもの。Steamワークショップ上で配布されている。

このように、家庭用ゲーム機ではできないようなオリジナルな遊び方ができるのは大きな魅力。アセット(ゲームを構成する素材)を置き換えるような、簡単なものなら誰でも導入できると思う。

ただし、検索性などからSteam Deck単体でのMOD導入は少々手間に感じたほか、挙動が不安定になるものもあった。MOD遊びはある程度パソコンの知識のある人、という原則には変わりがなさそう。

※ちなみにマウス操作が想定されている『Cities: Skylines』のようなゲームはSteam Deckとすこぶる相性が悪いし、フリーズも頻発したのでプレイはオススメしない。


・気になるのはバッテリーの持ちや排熱音

おそらく多くの人が知りたいのは、外出先に持ち出してゲームができるか、というところ。メーカー公称値では「40Whrバッテリー。2~8時間のゲームプレイ」となっている。

プレイ内容により異なるが、Nintendo Switchのバッテリー持続時間は「約4.5~9.0時間」とされているので、少し短く感じる。

筆者のプレイでも2~3時間でバッテリーが空になってしまい、ゲームに熱中していると「え、もう!?」と驚くことが多かった。バッテリーの持ちを考えると、外出先ではがっつり遊ぶというよりも「すきまプレイ」という感じだろう。

ゲームから要求されない限り、オフラインプレイは可能。

また、これはSteam Deckだけではないが、熱の放出音や振動音が結構大きい。顔の間近でプレイすることもあって、「ザーッ」と雨が降っているのかと錯覚するほどの音として聞こえる。

かといって、しっかり冷却できないとパフォーマンスに関わるだろうから、痛しかゆしである。

すでに多くのレビューで触れられているとおり、パソコンに最適化された画面表示だと、Steam Deckでは文字が小さくて読みにくいなどの難点もある。文字サイズの調整ができるゲームだとありがたい。

それと「すべてのSteamゲームがSteam Deckで動くわけではない」という点には注意が必要。

「プレイ可能」と表示されているゲームでも、画面がカクつく、起動できない、フリーズするなどのアクシデントはあった。Steam Deck互換性が「確認済み」となっているゲームを選ぶのが確実だ。


・購入に一片の悔いなし

これらを総合しても、筆者は「買ってよかった」と心から思っている。

たとえば掃除機でも、廊下に出て→収納庫を開け→ノズルをつけて→コンセントに差す、というステップがあるよりも、その場に出しっ放しにしているほうが遥かに掃除の頻度が上がる。人は少しでもラクをしようとする生き物だ。

ボタンひとつでスリープしたり起動したりし、ベッドでもソファでも好きな体勢でゲームができる。おまけにSteamには何年間もやり込める超大作から、アンダーグラウンドな怪作まで、星の数ほどのゲームがあふれている。パソコンゲームが身近になる一台だ。


参考リンク:Steam Deck公式サイト日本正規販売代理店KOMODO
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.