期待の大作ゲーム『ホグワーツ・レガシー』が発売された。おなじみ『ハリー・ポッター』シリーズをもとにしたオープンワールド・アクションRPGだ。

原作者への反発から不買運動が起こったり、「ホグワーツレガシー気」という謎ワード(=ホグワーツレガシー気になる)がTwitterのトレンド入りするなど、発売前から世間を騒がせてきたが、フタを開けてみればヒットが確実視。

しかしAAAタイトルだけあってPS5通常版で税込9,878円、Steam版で税込8,778円と、なかなかの価格帯だ。セールになるまで様子見……という人もいるかもしれない。筆者がいえるのは「探索好きなら、今すぐ買ってよし!」だ。


・初クエストまでに3時間も徘徊してしまった理由

舞台となるのは、その名のとおりホグワーツ魔法魔術学校。時代設定はハリー・ポッターやファンタスティック・ビーストよりも前なので、おなじみのキャラクターは登場しない。血縁関係にありそうな人の名前を見かけるだけだ。

「知っているキャラクターが出ない」というのは、IPもの(既存の著作物をもとにした作品)としてはマイナスポイントに思える。ところが、それが吹っ飛ぶほどの尋常じゃない “作り込み” が待っていた。

シリーズファンなら既視感だらけの、動く絵画、騒々しい甲冑、自動筆記する羽根ペン、ひっそりと労働している屋敷しもべ妖精、隠し扉や隠し通路……城内を歩いているだけで数えきれないほどの発見がある。

見覚えのある菓子の箱や、映画に出てきた部屋を見つけることもある。初見の人には新鮮な驚きが、ファンには母校に帰ってきたような懐かしさが込み上げるだろう。


ディティールを観察しているだけで時間が溶けていく。“神は細部に宿る” とはこのことだ。

筆者など壁の絵を1枚1枚眺めているだけで退屈しないほど!(お気に入りはグリフィンドール塔の「太った婦人」を出て2枚目の絵画!)


ゲームには、そんな探索が無駄にならない仕掛けが随所にほどこされている。気になった場所を呪文で捜索すると、解説ページが登場。

シリーズファンなら「ああ!」と思うような豆知識が表示されて、かつそれがコレクション実績となり、RPGでいうところの経験値につながっていく。ちょっとした謎解き要素もちりばめられている。

歩いているだけで「この場所はなんだろう?」「何に使う道具だろう?」「夜はこんな景色になるんだ!」と興味が尽きず、見るものすべてが珍しい。

それはまさにハリー自身が初めて魔法界を訪れたときに抱いた感覚だ。驚き、感動、これから何が起きるんだろうという高揚感。

ゲームが進むにつれ、楽器がひとりでに鳴るくらいでは驚かなくなっていくのもハリーと一緒。プレイヤーはホグワーツ魔法魔術学校への転校生として、ハリーの感情を追体験できる。

多くは原作小説&映画にアイディアがあったとはいえ、これだけのオブジェクトをデザインし、ギミックを考え、配置した制作陣には脱帽してしまう。

オープンワールドゲームの優劣を決める要素に「探索が楽しいか」という絶対的ポイントがある。

どんなに広いマップでもコピー&ペーストの単調な景色が続いたり、じっくり見るのもはばかられる貧弱なグラフィックだったり、なんのイベントも起こらない「スカスカ」マップだったりすると一気に冷める。


そういった意味では、複雑に入り組んだホグワーツ城は「一生ここにいたい」「ゲームが終わらないで欲しい」と思える珠玉の舞台装置だった。

そんなこんなで、自由行動解放後の初クエストといえる「転校初日の初授業」に出るまでに、現実時間で3時間も徘徊してしまった。その後に訪れたホグズミードでも、杖を買うという目的をほったらかして2時間も探索する始末だ。


・オーソドックスな親切設計

ゲームシステムとしては「画期的」とか「ユニーク」といった要素は少なく、ごくごくオーソドックスだといえる。レベルを上げ、装備をととのえ、敵と戦う。

この手のゲームの経験者なら、操作方法すら迷うことなくすぐに世界のルールを理解して遊べることと思う。ボタン操作やヒントも含めて親切すぎるくらいの設計なので、オープンワールドゲームを初めて遊ぶライトユーザーでも安心だ。


“探索と発見” に重きを置いているため、すぐに強敵とバトルしたい人……たとえば『ELDEN RING』のような命を削り合うヒリヒリした感覚を味わいたい、という人には向かないかもしれない。

また、多くのRPGのようにレベルアップで魔法を自動的に覚えるわけではない。なにしろ舞台は魔法学校で、プレイヤーは学生。

授業や指導でスキルを少しずつ習得していく過程は、役になりきる「ロールプレイ」と非常に相性がいい。ただし、そういったプロセスを「まだるっこしい」と感じる人には、おすすめできない。

一方で「もともとハリー・ポッターが好きな人」や「世界観を楽しむゲームが好きな人」には全力で推したい!

原作を知らなくとも、ゲーム中に出てくるあれこれに興味を覚え、原作を読む or 視聴する人も出るのではないかと思う。

筆者は初めてゲーム内でホグワーツ城を目にしたとき鳥肌が立ち、息をのんだ。英国らしい美しい村や、イングリッシュガーデンも必見だ。大げさに聞こえるだろうが、海外旅行に来たときのような感動を覚えた。

最大限に恩恵を受けるなら、なるべく大画面がよい。筆者は最初Steam Deckでプレイしていたのだが、やはり描画処理の限界で、少しぼんやりした印象になった。

モニターに映して初めて「目の前に広がる魔法界」を体感! 将来的にはNintendo Switch版の発売も予定されているが、TVモードで遊ぶことをおすすめする。

日本語フル音声ありなので、没入感を高めるには「字幕オフ」にするのがGOOD。字幕がないだけで、相手の話を聞きもらさないよう熱心に耳を傾けるようになる。



・ひとつだけ注文をつけるなら……

『ホグワーツ・レガシー』はPS5とXbox Series X/Sを中心に、2023年2月7日にデラックス・エディション、2月10日に通常版が発売。2023年4月4日にはPS4・Xbox One版、7月25日にはNintendo Switch版が発売予定だ。

しばらくホグワーツ旋風は収まらないだろう。ひとつだけ注文をつけるなら「VRでやらせてくれたら、もうゲーム人生で思い残すところはない」ってことだ。


参考リンク:ホグワーツ・レガシー公式サイト
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES

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