宇宙食といえば、宇宙飛行士の活動を支える機能食。失礼ながら、あまり美味しくないイメージを持っていた。

しかし2020年、ISS(国際宇宙ステーション)に滞在した野口聡一宇宙飛行士が「大変美味しい」と絶賛した宇宙食がある。それが福井県にある、若狭高等学校の生徒たちが開発・製造した“鯖缶”だ。

『若狭宇宙鯖缶』は、ISSに飛んだ鯖缶のレシピを再現して市販化した商品。どんな味がするのか? なにが宇宙っぽいのか?? 秘密を探ってみたぞ。

・宇宙の味を地球でも

筆者が若狭宇宙鯖缶に出会ったのは、福井県の日本海さかな街にある物産店、島屋。

店頭に掲示されていた「宇宙食サバ缶地球でも」という見出しの新聞の切り抜きに惹かれたのだ。


店員の女性に話を聞くと、地元の若狭高等学校(旧小浜水産高等学校)の生徒たちが作った宇宙食のレシピをもとに、福井缶詰株式会社が市販化した商品。地元でも話題と言うことだ。

元となっている宇宙食は、13年にわたって高校生たちがたすきを繋ぎながら研究を進め、正式にJAXAから認証されている。

2020年に野口聡一宇宙飛行士がISS(国際宇宙ステーション)に滞在した際、実食したというのだからすごいことだ。

価格は税抜700円と少し高価だが、宇宙で食べられている味と思えば安いもんである。ロマンはプライスレスなのだ。


・食べやすくて味も良い!

市販化に伴い、パッケージも若狭高等学校の生徒たちが考案したのだそうだ。

宇宙服を着たサバが、校名の入った旗を持っているという斬新なイラスト。金色の箔押しをされ、プレミアム感が漂っている。


さっそく開封してみよう。

宇宙食に採用されるための厳しい条件のひとつが、液が飛び散らないこと。ISS内で使用している機械に飛び散ると、故障の可能性があるためだそうだ。


開封してみると……

本当だ!


一切液体がこぼれない!

秘密はタレに使われている葛粉。適度なトロみがつけられているのだ。


タレだけ見ると、この通り。

「こぼれにくい」というのは、食レポをするライターにとっても嬉しい特徴だ。カメラなどの機材が汚れにくいし、撮影中にこぼす心配もない。


ISSでの食事にはスプーンが使われているんだとか。

筆者も宇宙気分を味わうため、試食はスプーンで行うぞ!


サバの身がやわらかい。軽い力で切りわけることができた。


シットリと味が染みて美味しそう……!


おっ、コレは!


鯖に脂がのっていて美味しい!

タレには甘みとコクがあって、家庭の味・ふるさとの味といった雰囲気。こんなの宇宙で食べたらホームシックになっちゃうかも……!

宇宙空間では重力の関係から味覚が鈍くなり、地球での食事よりも濃い味付けが好まれるらしい。醤油や塩ではなく 砂糖を増やすことで、バランス良く濃い味付けにしてあるのだそうだ。


うまっ……!

食べながら目を閉じれば、目の前には数えきれないぐらいの星々が広がっている……ような気がする。

たかが缶づめ、されど缶づめ。いつもよりも宇宙を身近に感じることができた。

参考リンク:宇宙の店 若狭宇宙鯖缶
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.
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▼野口聡一宇宙飛行士による食レポはこちら。

▼パッケージの側面には、開発ストーリーが簡潔に紹介されていた。

▼開発に関する詳しい話は、書籍『さばの缶づめ、宇宙へいく(税抜1500円)』に書いてある。鯖缶を通して生徒たちが成長し、地域まで巻き込んで変化していく様子が伝わってきた。

▼原材料はこちら。オリジナル宇宙食は小浜産の『よっぱらいサバ』が使用されているが、若狭宇宙鯖缶はノルウェー産。市販化に伴い調整が必要だったのだろう。

▼余談だが、NASAの公式アプリ『NASA Selfies』を使うと、宇宙望遠鏡『スピッツァー』が撮影した美しい宇宙背景と合成したセルフィーが作れるのだ。

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