そういえば、この世には香水というものがあったな……。そろそろアラフォーという年齢になって、ようやくそのことに気づいた筆者。身だしなみの一環として、たしなんでおくべきかもしれない。まあ、20年ほど遅かったかもしれないが。

気付いたは良いものの、これまでの人生で纏(まと)ったことのある香りと言えば、せいぜい飲みすぎた酒由来のアルコール臭や、特定の植物の葉を燃やした時に漂いがちな甘ったるい臭いが関の山。香水のような品のある香りについては、とんとわからぬ。

しかし、わからぬものをわからぬままでいるのは、あまりに進歩がない。遅くとも、わかるようになれば今より1ランク上の高みに至れる気がする。では、どんな香りならデビューに相応しいのだろうか? 高み、高み……やはり、重視すべきは高度か……

・究極の高みへ

真っ先に思い浮かんだのは東京スカイツリー。634メートルという高さは、人口の建造物としてブルジュ・ハリファに次ぐ世界第2位。申し分ない高さだ。スカイツリーをイメージした香水なら、どこかがコラボして作っていそうだしな。それでサクッと香水デビューをしようではないか。


……と思ったが、筆者の香水デビューは相当に遅れている。いわばマイナスからのスタートだ。スカイツリーの高さでは足りないかもしれない。この際だ。限界を追求すべきだろう。我々から見て、究極的に高い所にあるものとは……そうか、宇宙か!

ということでゲットしたのは「宇宙の香り」がするという香水『Eau de Space』。かなり出遅れた香水デビューだが、宇宙のスケールの前には多少の遅れなど一瞬。勝ったな!


・宇宙の香り

ちなみにこちら、なんとなくKickstarterを巡回していたら見つけたものだ。お値段は29ドル。日本円だと3066円だった。ウェブページ内の記述によると、船外活動を終えた宇宙飛行士たちが宇宙船に戻ってきた時に嗅いだと主張した、特徴的な臭いを再現したものらしい。

もとはNASAが宇宙飛行士をトレーニングするために開発したものなもよう。そのレシピを情報公開法を利用してゲットし、調香師を雇って作った……的なストーリーがサイトには書かれている。真偽のほどはよくわからないが、とにかくそういう香水だ

「宇宙の香り」というと船外の宇宙空間の臭いのようにも読み取れるが、正確には宇宙空間にある人間が呼吸可能な人工設備の香りというところだろうか。まあ、それとて確かに「宇宙の香り」である。地上のあらゆるものよりも高度的に勝っている点に変わりはない。

さっそく全身にふりかけてみたが……ふむ。何せ筆者はこれまで香水など使った事が無い。こうして「宇宙の香り」をまとった状態が、一般的にどのような評価となるのか見当がつかぬ。こればかりは誰かに聞くしかあるまい。


・聞いてみた

ということで、編集部にいた面々に「宇宙の香り」をしみ込ませた紙を渡し、感想を聞いてみることに。

和才雄一郎「美術の部屋とかで、なんか凄いにおいが強い時あるじゃないですか……塗料とかで。ああいうにおい」「あんま好きじゃない。なんかアルコールっぽいっていうか、このにおいの人とすれ違ったら、飲んでるのかな?って」


P.K.サンジュン香水なの?って感じ。なんか、医者? 病院? お洒落でつけるにおいじゃない気がする」「これをつけてる人がお洒落だとは全く思わない。全然お洒落なにおいとは思わない」


GO羽鳥「なんか……海外の、宿のにおいがするね。あ、いや違う。病院か。結局……病院だ。病院の入院施設かなぁ」「(香水としてまとっている人がいたら)え、どこから来たの?って。病院から来たの?って(笑)」


原田たかし「確かに病院のにおいしますね。なんでしょうね。香水ではない」「ファッション的に、病院の先生ならやっぱそうなのかなって。一般の人なら……嫌なにおい……かどうかは……うーん。あんまり、良い匂いではないですね


・そして宇宙へ

圧倒的に不評。宇宙なのに、圧倒的多数で病院という感想が。しかし、よく考えたら、彼らの香水に関する経験値とてわりと疑問ではなかろうか? 

むしろ、筆者と同じくらい香水とは無縁なライフを送っていそうですらある。ここは誰かもっと、香水経験値が高い人物に聞くべきだろう。

そういうことなら1人しかいない。佐藤英典だ。『ドルチェ&ガッバーナ』の香水を身に纏い、果ては「ドルチェ&ガッバーナ風呂」に入ってしまった経験を持つ彼ほど、香水経験値が高い人間はそうはいまい。


佐藤英典「あー……これキツいなぁ……確かに病院。で、何のにおいなの?」


筆者「宇宙の匂いです」


佐藤英典「宇宙……(苦笑)」


佐藤英典「宇宙だな(笑)」


参考リンク:Kickstarter
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.