年の瀬である。今年1年を振り返ると、「新型コロナウイルス」は外して語れないワードだろう。コロナ禍前と別世界に感じるほど社会が変わった。立ち食いそば業界においては、閉店や休止が目立った年だったように感じる。
今年「立ち食いそば放浪記」で紹介した店の中でも、小川町『桃山』や御徒町『お勝ちそば 蔦や』はすでに閉店している。また、ビルの建て替えがキッカケとは言え、50年秋葉原を見守った『六文そば 昌平橋店』の閉店も印象的であった。
残っているそば屋にはぜひ頑張ってもらいたい。そんな思いから2020年に私(中澤)が食べた立ち食いそばのベスト6をここにまとめよう。
・その1『はせ川』早稲田
圧倒的なコスパを誇っていたのが早稲田『はせ川』。ほとんどのメニューが290円から450円の中に収まっているところは、さすが学生街の立ち食いそば屋である。だからと言って、量が少ないわけではなく、むしろガッツリしているところも好印象。
そばは多少もっさりしているがつゆがウマイので、この価格だと十分満足度がある。立ち食いそば屋的な “味” のある店だ。
・その2『そば切り うちば』品川・青物横丁
立ち食いそば屋だけど、ちゃんと派手さがあるのが品川・青物横丁の『そば切り うちば』である。肉そばの肉はガツンとしておりホロホロとろける旨みがあるが、その肉に負けないほどそばもウマイ。麺はしまっていてざるそばでも勝負できそうだし、つゆもコク深い爽やかさがある。東京南部の名店だ。
・その3『東京バッソ』馬喰町
浅草橋~神田~秋葉原は、東京東部の立ち食いそばトライアングルゾーン。数々の名店がひしめいているが、その中でも麺においては『東京バッソ』がトップの一角だろう。キリリと締まった十割そばを辛めのつゆにつけて食べると、キレすら感じるのど越し。これでワンコインは安すぎる。
・その4『一〇そば』駒込
立ち食いそば界の名店として知られる駒込の『一〇そば』は、今年「太蕎麦」を開始。プラス50円で特注の極太麺にできるものだが、これがガシガシに歯ごたえがあってコクのあるつゆと非常にマッチしていた。丼をはみ出すサクサクとり天と合わせると食べごたえ抜群で、寒い日はこの1杯が欲しくなる。
・その5『デイリーチコ』中野
巨大ソフトクリームで知られる中野の『デイリーチコ』が、そばもやっていることを知ったのは読者からのタレコミ。さっそく行ってみたところ、これが非常に良い味を出している立ち食いそばであった。
天ぷらは、基本をおさえつつも、「ニラキムチ」や「なのはな」などオリジナリティーも十分。思いのほかドカンとしたとり天にはカレー味がついており、その味が染み出すつゆがどことなく中野ブロードウェイっぽいジャンクなウマさ。この意外性はまさに立ち食いそば!
・その6『DX肉盛り冷やしかき揚げ』しぶそば蒲田店
そう言えば、渋谷駅の駅そば「本家しぶそば」も今年閉店している。とは言え、東急沿線のしぶそばは無事で、蒲田店で夏にやっていた『DX肉盛り冷やしかき揚げ』は最高だった。
肉の山を食べ進めていくと、下からかき揚げが登場する。まるでお宝を掘り当てたような感動がそこにはあり、味だけではなく、食べる側の気持ちも考えられた一杯だと思った。
──以上、今年食べた立ち食いそばのベスト7をご紹介した。うまいそば屋を求めて色んな街を放浪する「立ち食いそば放浪記」。コロナ禍などもあり、2020年は思うように放浪できないことも多かった。また、気ままに街をブラつける日が来ることを願いつつ、今年は筆を置きたい。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.