2019年が終わろうとしている。私事で恐縮だが、筆者は8年間ニートの身分だった人間なので、西暦の概念に疎い。そんな私でも「2019年が終わる」と自信を持って言い切れるのは、ライターという職に就いた今年1年が特別なものだったからである。

そこでその締めくくりに際し、はなはだ浅い職歴ながら今年書いた記事の中から「お気に入りの5選」をまとめてみたので、読者の方々にぜひお読みいただければと思う。嫌だと言ってもまとめてしまったので、どうか読んでみてほしい。

吉野家に一度も行ったことのない男が初入店した結果 → もう一店舗ハシゴしちゃった

まず1本目は、吉野家を初体験した時の記事だ。ライター業に就いてまもない頃に、ハイハイとヨチヨチの狭間くらいの姿勢で書いたものである。自分が今でも続けている「初挑戦」系記事の原点であり、かつグルメレポとしても第一歩であったので思い出深い。

見返すとつたなさが目につくものの、自分の色は出せたのではないかと思うし、ライターデビュー直後のちょっとした名刺代わりの記事になってくれたように感じる。

取材の際、付き添いに来てくれた編集部の中澤記者に「ここからは1人で行ってね」と吉野家に放り込まれた時は千尋(せんじん)の谷に突き落とされた気分だったが、それも今となっては良い思い出だ。私も機会があれば誰かしらを千尋の谷に突き落としたい。


プロの探偵に聞いた「今までで1番の修羅場」があまりに意外すぎて震えた / 東京・池袋の「探偵と話せるカフェ」に直撃

有益な情報量で言えば、吉野家を初体験した男に関する記事は芥子粒(けしつぶ)ほどのものでしかないが、こちらの記事は「誰もが気になるであろう知られざる世界」の情報をだいぶ盛り込むことができたのではないかと密やかに自負している。

プロの探偵にお会いするのは初めてだったし、インタビュー形式で腰を据えてお話しするのも初めてだった。タイトルにある項目もさることながら、それ以外にも探偵業にまつわる様々な疑問をぶつけ、真摯にお答えいただけたので、多くの方々にご覧になってほしい限りだ。

この記事で訪れた「探偵カフェ」で、人生で一番美味しいオムライスを食べたのも印象的だった。いっそタイトルを「探偵の作るオムライスがガチで美味しすぎる」にしようかと気の迷いに襲われたほどだったが、さすがにそこは踏みとどまった。


「史上初のブラックホール画像」のジグソーパズルが地獄すぎて精神が崩壊しそうになった話

岩下の新生姜巾着」や「集中力で飛ばすドローン」など、グッズレビュー系の記事にも手を出してきた1年だったが、ここではあえてこの記事を挙げたい。とはいえ語れることは少ない。この記事についての思い出と言えば、「マジのマジのマジのマ~~~ジで大変だった」に集約されるからである。

世の中にもっと難しいジグソーパズルがあることは理解していても、自分にとっては本当に地獄のような難易度だった。申し訳ないことにタイトル詐欺的な部分もあって、「精神が崩壊しそうになった」というより、した。あれはしてた。

ただ、そのぶん完成した時には比類ない達成感を得られたのも事実だ。「あまり思い出したくないお気に入りの記事」である。


回転寿司を20年間食べていない男が、『かっぱ寿司』マーケティング部の部長にガイドされながら「初かっぱ寿司」した結果

皆さんは「かっぱ寿司」の広報の男性を抱き締めたことがあるだろうか。私はある。そんな謎マウントをつい取りたくなってしまうほどに人当たりの良い広報の方にガイドされ、初めて「かっぱ寿司」を体験した時の記事である。前述の抱擁については記事内で見られるので参照してほしい。

回転寿司自体が超絶久しぶりだったため、当時はきらびやかなテーマパークに迷い込んだような心地だった。「かっぱ寿司」の企業努力やメニュー誕生秘話などについてもお聞きできたおかげで、ただの体験談には終わらない記事に仕上げることができたと思う。

ちなみに皆さんは「かっぱ寿司」の広報の男性に「あーん」をしてもらったことがあるだろうか。私はある。


家系ラーメン総本山の「吉村家」に行ってみたら、“家系はなぜ流行ったのか” がわかった / でも少し気がかりなこともある

もしも何か神がかり的な手違いが起きて、来年の大学入試センター試験の現代文の問題で上記の記事が出題され、「この文章が伝えたいことを漢字4文字で書け」という設問に出くわしたら、「家系最高」と答えてほしい。要はそういう記事である。

家系好きにとってはメッカとも呼ぶべき地を訪れることができたのは、非常に嬉しかった。同時にラーメン屋ではあまり類を見ない、とぐろを巻く大蛇のような行列が印象的だった。そして言わずもがなラーメンの味は最高だった。

とにかく少しでも元祖家系「吉村家」の魅力を伝えられていれば幸いだ。ついでにセンター試験で良い点数を取ってくれれば幸いだ。


三十路の男が初めて「ラピュタ」を視聴した結果、深い絶望を味わうことになった

ねたみ、そねみ、歪み、苦しみ……この世のあらゆるネガティブな「〇〇み」が詰まった記事となっている。読む際には奥歯の辺りに軽く力を入れてからご覧になってほしい。

などと言いつつ、「誰かの時間潰しになって一笑に付してもらえればそれでいいな」くらいの気持ちで書いたのだが、自分の想像を上回る反響をいただけて驚いた記事でもある。この記事を通して自分のことを知ってくださった方も多いようで、吉野家の記事が普通の名刺なら、この「ラピュタ」の記事はA4サイズくらいの名刺になってくれたと感じる。

世の中何が起こるかわからないものである。「ラピュタ」のようなスペクタクルとは言わないまでも、好奇心や探求心を捨てずにいれば、ささやかなドラマは起こるのかもしれない。そんな風に思える機会をもらえて、あらゆる方面への感謝の思いで一杯である。


さて、ここまでつらつらとお気に入りの記事を挙げてきたが、鋭い方なら「ある事実」にお気付きかもしれない。そう、タイトルや冒頭で5選とうたっておきながら、取り上げている記事は6つなのである。

「5つと言っておいて余分にもう1つ入っていたらお得感が出るのでは」という目論見だったのだが、いかがだっただろうか。これからも良い意味で読者の方々を裏切る記事を書いていければと思う。ゆるく慎ましく、時に激しく活動していきたい。それでは皆さん、良いお年を。

執筆:西本大紀
イラスト:稲葉翔子
Photo:Rocketnews24.
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