最先端の技術が進歩すると、おもちゃもまた進歩する。例えば空飛ぶおもちゃであれば古くは凧(たこ)が主流だったが、やがてラジコンヘリが登場し、今やドローン型のものが発売されている。最先端を身近に体験できるのも、おもちゃの醍醐味の一つだろう。
そこで今回、「集中力で飛ばすドローン型おもちゃ」というものを発見したので購入してみた。こちらの集中力をセンサーで読み取って飛ぶらしい。いくらなんでも最先端すぎるが、どうしようもなくワクワクしてしまう。果たして本当に飛ぶのか。実際に検証していきたい。
・超技術のマインドテック
マサチューセッツ工科大学か何かが開発したのかと思いきや、東亜産業という会社が開発元のこのドローン、名前は「マインドテック」で室内専用のおもちゃとなっている。
2019年5月10日現在、価格はAmazonだとガッツリ値引きされて2880円とお手頃。「人間の集中力で飛ぶ」という技術レベルには見合わない。それだけに、買ったあとになって遅まきながら「だまされてるんじゃないか」という思いが芽生え始める。
と同時に、パッケージに踊る「君はどれだけ集中力を出せるか?」の一文に、チャレンジ精神をくすぐられもする。本当に飛ぶのだとしたら、やはりその光景が見てみたい。
筆者(西本)は集中力がある方ではない。が、受験生だった頃は頑張って集中して勉強したものだ。そういう人間が世の中にごまんといることはこの際抜きにして──見せてやろう、私の持てる集中力の限りを。
意気込んでパッケージから中身を取り出す。出てきたのはドローン本体にUSBケーブル、説明書、そしてスイッチらしきものが付いたベルト。
説明書によれば、スイッチらしきものはヘッドリンクと呼ぶらしい。ドローンに赤外線を飛ばす機能があるようだ。
そのヘッドリンクの付いたベルトを、読み取り部分である電子接点がおでこに当たるようにして頭に巻くと……
集中力の度合いに応じてドローンのプロペラが回転し、空中に浮遊するとのこと。集中していればしているほど高く舞い上がる寸法だ。ちなみに2.5mまでの高度制限機能がきちんと備わっている。
遊ぶ前には充電が必要なので、USBケーブルを使ってドローンとヘッドリンクを充電。
正直、最先端すぎる原理にまだ納得しきれていない部分もある。しかし早く舞わせたいという気持ちが勝ち、充電が終わるやいなやベルトを頭部に装着していた。
ドローンを飛ばすはずなのに昔のアイドルのような風貌になってしまったが、やる気はみなぎってくる。ベルトは大人でも巻けたのでご安心を。
ドローンが落下した場合のクッション性を考え、ベッドの上にマインドテックの空き箱を置き、その上にドローンを設置。ヘッドリンクのスイッチを押し、ドローンとの同期を開始させる。さあ、これで準備は万端だ。
・飛べ! マインドテック!
あとはもう、筆者の集中力がいかに花開くかの勝負。ドローンと向き合うように座り、目をつむって意識を研ぎ澄ましていく。
飛べ……! 舞え……! 見せてくれ、私にその景色を……!
しばらく集中していたが、ドローンは沈黙している。集中力が足りないのか。それともやっぱりだまされているのか。
頼む……お願いだ、飛んでくれ……! これマジのやつ……! マジのやつだから頼む……!!
さらに集中しても沈黙を続けるドローン。私はマインドテックに裏切られたのか? 諦めかけていたその時……
キュィイイイイイイイイイ!!
と、アンドロイドの赤子のような機械的な高い鳴き声を上げて、突如プロペラが回転。
と、飛びやがる……! 自分で念じておいて何だが、コイツ飛びやがるぞ……!!
うぉおおお!! やったやった、本当に飛ぶんだ!! フライトテストは成こ……
ヒュンッ!!!!!!!!
えっ
ガンッ!!!!! ドンッ!!!!!! バキィッッッ!!!!!!!!
猛スピードで飛び立ったドローンは壁に衝突して落下、直後に再び跳ね上がってベッドのヘッドボードに激突し、停止。
元気すぎるカナブンのようなアクロバティックな動きに、思わず口を開けて固まってしまう。
思ってたのと違う……。
てっきりもっとこう、フワンフワンと優雅に舞うものだと思っていた。ドローンと触れ合った経験の少ない筆者の思い込みだったのかもしれないが、それにしてもあんまりでは……?
まさかこちらの潜在能力がスパークしてしまったのか? おそらくそれはないので、集中の仕方がよくなかったのだろう。力(りき)みがあったと言われればそうだ。
今度は静かな水面をイメージしながら、落ち着いて集中力を高めていく。
舞え、ドローンよ……できるだけ静かに、優雅に……
美しい蝶のように羽ばたけ……!
ヒュンッ!!!!!!!!!
だから飛ぶの速いって!! 何なんだお前は! 聞かん坊か!
いや、だかしかし……これは……!
結構スピード感あるけど……フワンフワンしてくれてる……!!
先ほどとは見違えるような動きで、ドローンが上下しながら空中を舞っている。この上下具合はこちらの集中力の波を反映しているのか? 何にせよ、こうなると気分も俄然(がぜん)盛り上がってくる。
スイッチを切ってドローンを回収し、同じ要領で飛ばすことを繰り返す。
フワンフワン……
フワンフワン……
楽しい……!!
上昇したり旋回したり、縦横無尽に浮遊するドローン。こちらがやったことと言えば、ヘッドリンクのスイッチを押して、集中力を高めただけ。ラジコンのようなリモコン操作を必要とせず、予期せぬ軌道を描きながら自由奔放に飛んでくれる。
今までにない独特の「非操作感」が実にクセになる…! マインドテック……これは間違いなく新時代のおもちゃだ……!
感動していたところで、ふと、頭の隅にイタズラめいた考えが芽生える。逆に「とことん集中力を欠いた状態」でドローンの飛行を試みたらどうなるだろうか。一周回って飛んでしまうなんてことになったりしないだろうか。
まあ、これは番外編のようなものだ。せっかく面白いおもちゃに出会えたことだし、いろいろ試したいという出来心である。
スゥッと息を吸い込み……
あぁ~~~金ほしい~~~!! 金一封ほしい~~~!! から揚げ山ほど食いてぇ~~~!!
巨大なケーキも食いてぇ~~~!! 欲望まみれ~~~!! こんな感じでどうじゃ~~~!!
ヒュンッ!!!!!!!!!
いや飛ぶんかい。
しかも天井に張り付いとるやないかい。今日1番の飛行やないかい。
・楽しすぎるぞマインドテック
というわけで、こちらの集中力をどのように反映しているのかは不明なままだが、マインドテックの楽しさはおわかりいただけたのではないだろうか。とにかく操作不要で自由に飛んでくれるのがたまらない。それさえ伝わっていれば筆者としては思い残すことはない。
おそらくベルトを身に着ける人によって、マインドテックは千差万別の軌道を描いてくれることだろう。ぜひとも多くの人に遊んでみてほしい。
ただし、時おり前述のようにアクロバティックに動くこともある点には注意だ。プロペラは柔らかいので、壁や物にぶつかってもおそらく問題ないと思うが、できるだけ広い部屋で新時代のおもちゃを体験しよう。
参照元:東亜産業、Amazon「マインドテック」
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.