日本のアニメやマンガが海外でも人気のようだが、中でもフランスは特に熱狂的だと伝え聞く。首都パリに通称 “マンガ通り” なる区間があると知り、訪れてみると付近には多くの日本食店や日本の雑貨を扱う店も並んでいた。日本好きの人が集まるゾーンなのかしら?
以前の記事で “スペインの人気コミックベスト5” をお伝えした。スペインで1番人気の『鬼滅の刃』を私は知らなかったのだが、調べたら相当な人気作品と知り反省。アニメを見て予習してきたのである。隣り合うスペインとフランスでランキングに差が出るのだろうか?
そのあたりを探るべく通りをウロチョロすると、目につくのはコスプレ衣装を扱う店の数々。パリのコスプレ人口ってこんなに多いのか……! マンガ通りに数軒あるマンガショップの中で、とりあえずひときわ人の出入りが激しい店に突撃取材を敢行してみたぞ!
・圧倒的品数
今回訪れたのは『MANGA DORI』というお店。
店内は常に客が入れ替わり、立ち読みなどしている隙間はない。
パリジェンヌやパリジャンたちはみな狙いを定めて来店しているのだろうか? 商品をパパッと選ぶと、迷うことなくレジへ向かう様子である。
整然とマンガが配置されたスペインのショップと比べると、「狭いスペースでいかに多くの商品を置くか」が店のテーマとも感じられる。日々大量のマンガが売れてゆくとみえて、奥には在庫の入ったダンボールが山積みだ。
店内の本棚をよく見ると、なんと “手前の本の奥にもう1列、別の本が並んでいる” 状態! この画期的手法によって、漫画本を従来の2倍展示することが可能となっている。そして “集英社ごと” “講談社ごと” などに分けられていないため、お目当てを探すのが大変だ。何か別の法則にそって並べられているのだろうか……?
・使い道が気になる
それはそうと入店時から気になっていたのは、店内じゅうに並べられた大量の「刀」である。
それは壁一面……とにかく空きスペースの全てを活用して陳列されていた。
刀のひとつひとつにはマンガ(アニメ)のキャラクターとおぼしき顔写真と名前が添えられている。おそらく作品中でそのキャラが使用している刀のレプリカなのだろう。
刀だけでなく “アックス” とか “ランス” と呼ばれていそうなものも。
ハイリアの盾や……
かぎ爪に……
忍の武器……
ハンマー……
悪魔の実もあるぞ!
マンガ通り周辺にコスプレショップが多数存在していたことからも推測すると、おそらくコスプレの小道具と思われる刀類たち。さすがはファッションの街・パリである。パリジェンヌ・パリジャンたちはマンガを読むだけではなく具現化するのもお好きなようだ。
・人気トップ5を発表
「日本から来た」と告げるとスタッフや周りの客も親切に接してくれた。ランキングを尋ねると売上データを集計した正確な回答をもらえたぞ!
第5位:『ブラッククローバー』
よかった! 知っている作品だ! ……と、言っても読んだことはない。しかし予習が功を奏し、かろうじてタイトルと “魔法モノ” だということは分かるぞ! 舞台が異世界だと外国の人にも受け入れられやすいのかもしれないな。
第4位:『約束のネバーランド』
お店の人は英語をあまり話せないとのことだったが、タイトルを全て日本語で教えてくれたので問題なくコミュニケーションを取れた。第4位の『約束のネバーランド』はちょうど在庫切れらしい。ちなみに簡単には入荷できないのか、店内では “1巻と2巻だけ売り切れ” という状況が多発していた。海外の漫画ファンには苦労も多いのだろう。
第3位:『鬼滅の刃』
ななんと! スペインでは1位だった『鬼滅の刃』が3位にランクイン。『DEMON SLAYER(デーモンスレイヤー)』というかっこいいタイトルがついている。入荷状況等もあるかもしれないが、同じヨーロッパ内でもランキングは微妙に違うようである。
第2位:『ワンピース』
根強い『ワンピース』が第2位。ここまで4つ全てが週刊少年ジャンプの作品だ。なんだかんだ言ってやはりジャンプは王様なのだな、海外でも。そしてワンピースを抑えて1位に輝くのは……もしかして私も大好きなドラゴンボー……
第1位:『僕のヒーローアカデミア』
と、いうわけで『僕のヒーローアカデミア』がこの店で人気ナンバーワンの作品でした!
……タイトルを聞いたことはあるが、漫画知識に疎い私にはイマイチ実感のわかない第1位である。よってこの結果についての見解をきくため、当サイト1の漫画ツウことK.Masami記者に国際チャットを飛ばしてみたぞ。
──『僕のヒーローアカデミア』は日本でどういった位置づけの作品なんでしょう?
「『ヒロアカ』はジャンプの看板作品です。もうすぐ日本で映画が公開される人気作ですよ」
──『ヒロアカ』って言うんだ! どういう内容なんですか?
「言い方は悪いですけど……周りに比べて力を持っていない落ちこぼれな子が、努力と周りからの支援によって段々とヒーローになっていくという王道ストーリーです」
──さすがマサミ記者! じゃあパリで人気というのも納得?
「そうですね。わかりやすいストーリーなので外国で人気なのも分かります」
・やはりパリはガチだった
人気トップ5が全てジャンプ作品という結果になったパリ取材。1位の『僕のヒーローアカデミア』を購入し読んでみた。
価格は1冊5ユーロ(約602円)。コミックの種類にもよるだろうが、全体的にスペインよりもだいぶ割安な印象だ。
さすがフランスというべきか、翻訳の手法が職人技である。効果音に付属するルビも作画を完璧にコピーした字体。場面によっては「海外の作品です」と言われても信じてしまいそうだ。
スタッフのお兄さんに「好きな作品は?」とたずねると、日本語のタイトルをド忘れしてしまったらしく「オーマイガー! 俺はバカだ!」としきりに憤っておられた。そんなの分からなくて当然じゃん、と思ったが、海外ファンにとってそこは譲れぬこだわりなのかもしれない。
パリジェンヌ・パリジャンたちの日本に対するリスペクトがヒシヒシと感じられる店『MANGA DORI』。ここへ来ればひょっとして日本でも手に入らぬ品が見られるかも? パリ中心部からもほど近いマンガ通りへ、漫画好きでなくとも一度足を運んでみてほしい!
【追記】1位の『僕のヒーローアカデミア』に関して。記事内で、店員さんが持っている本はヒーローアカデミアのスピンオフ『ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミアILLEGALS-』になります。画像と表記が異なっておりますが、1位は『僕のヒーローアカデミア』で間違いありません。気づかずにごめんなさいm(_ _)m
・今回ご紹介したお店の詳細データ
店名 MANGA DORI
住所 23 Rue Keller, 75011 Paris, フランス
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
▼一番人気の刀は「ゾロさん(ワンピース)の刀」だそうです
▼店内では『NARUTO』のアニメが放映されていた。もちろんフランス語版
▼「こんなのもあるの!?」という作品が多数。パリのファンもまた “ガチ” なのだ
▼周辺のコスプレショップ
▼マンガ通りは正式には「ケレ通り」という。ちなみにケレ通りへ向かう道中は「ロケット通り」