少しずつ気温も下がり、温泉が恋しくなってくる今日この頃。特に景色を眺めながら浸かる露天風呂は最高だ。

そして、もし世界に一つだけのオリジナル露天風呂を自分の手で作ることが出来たら……。そんな願いが叶うかもしれない場所、和歌山県の「川湯温泉」へと今回はやってきた。

川原を掘れば地面の底から温泉が沸いてくるらしいのだが……そんなに上手く行くのだろうか? スコップ片手に格闘すること5時間、その一部始終を見よ!

・地面から湯気が!

和歌山県田辺市。紀伊半島を東西に貫く国道311号線から少し南へ入ったところに、今回の目的地はある。大塔川沿いに広がる川湯温泉は、文字通り川原を掘ると源泉が湧き出てくるという、全国的にも珍しい場所だ。

もちろん共同浴場や温泉宿もあるのだが、川原自体は一般に開放されており、個人で温泉を掘ることが可能となっている(入浴の際は水着を着用のこと)。利用料金などは発生しない。

また例年12~2月ごろは川を一斉にせき止めて作られる「仙人風呂」がオープンし、この期間は個人での掘削が出来ないことにも注意しよう。

いざ現地に到着してみると、地面の所々から湯気が立ち昇っており、ほのかに硫黄の香りも漂う。間違いなく、間違いなく地下には温泉がある……! そいつを掘り当てて、ここに「ロケットの湯」を建立するんじゃい!

・死闘の予感

近隣のキャンプ場に前泊し、朝8時ごろに川原へ。さーて、いよいよ掘りますか!

とは言っても、この広い川原のどこらへんを掘るのが正解なのだろうか? どこを掘っても温泉が出るのか? どのくらい深く掘れば出るのか? うーむ。

てなことを考えながら川原をブラブラ歩いていると、所々に掘り返したような穴が。「掘ったけど出ませんでした」といった感じの穴も多く、早くも厳しい戦いになりそうな予感が漂い始める……。

しかし旅館が軒を連ねている付近まで歩いてくると、見事に温泉が湧き出ているらしき穴も! 試しに手を浸けてみると……。

あッツ! 熱いよコレ!!

考えてみると、地下から湧き出る温泉が都合よく入浴に適した温度であるはずもないのだが……。とにかく、そのまま入るには熱すぎる温度だ。

川原に到着してから十数分、はやくも2つの問題点が露見した。「どこを掘っても温泉が出るわけではなさそう」ということ。そして「地下から湧き出る温泉はかなり熱い」ということだ。はて、どうしたものか。

・ベストポイントを探せ

その2つの問題点をクリアできそうな場所を発見した。

川の流れを遮るように、大きな流木が流れ着いている場所だ。すぐ隣にある穴は温泉が湧いているので、こちらも温泉が出る確率は高い(多分)。

さらに流木の上には隙間があり川の水が流れ込んでいるので、ここを掘って温泉が出れば、冷たい川の水と混ざってちょうど良い温度になるのではないか?

うまく事が運ぶ保証はない。しかしこれ以上の妙案も思い浮かばない。よし、ここを掘ることに決めたっ!

そうと決めたら、後はひたすら掘るのみだ。持参したスコップを使い……

掘る!

掘る!

ひたすら掘る!

掘り続けること3時間程度、それなりの深さにはなってきた。さらに流木の端から川岸までを石で封鎖し、少しずつ湯船のような外形にもなりつつある。

しかし、肝心の水温が上がらない。流れ込む川の水が多すぎる可能性もあるが、どうも温泉が湧き出ている感じがしないのだ。この場所は出ると思ったのだが……。

・一筋の光が

体力は底を尽きつつある。この場所を掘り続けるべきか。場所を変えて新たに掘るべきか。あきらめて公衆浴場に行くべきか。自問自答していたそのとき、筆者はあることに気付いた!

何気なく川底をまさぐっていると、明らかに砂が熱を帯びているエリアがあるのだ。それは筆者が定めた「湯船」の端っこの方だ。もしやと思い、そのエリアを重点的に掘ってみると……。

硫黄の香りを伴い、お湯が湧き出てくるではないか! つ、ついに温泉が出たぞぉぉぉ! しかも、水温を測ってみると約40℃……理想的な温度っ……!

最後の力を振り絞り、「出るエリア」の方向へと湯船を掘り広げていく。さらに2時間ほどの時間を要した末に……

・人生最高の「ぬるま湯」

掘削開始から5時間あまり。死闘の末、ついにマイ露天風呂が完成したっ!!

思っていたのと違う部分は、確かにある。当初の予定では「熱い温泉+川の冷水=ちょうど良い温度」となるはずだったが、実際に筆者が掘り当てた温泉は約40℃。つまり結果的には「ちょうど良い温度+川の冷水=ちょっとぬるい」となってしまった。

また途中で「深く掘る」から「広く掘る」にシフトチェンジしたため、最終的には寝そべり湯くらいの深さしか確保することは出来なかった。

だが、そんなことはどうでもいいと思えるくらい、やっぱり自分の手で作った温泉は格別だ。あきらめずに頑張って本当によかった……。そして長時間の掘削で体が温まりまくっているので、実はこれくらいの水温がちょうど良かったりする……。これは人生最高の「ぬるま湯」だ!


色々あったけど楽しかった、川湯温泉での一日。しかし一人で掘るのは本当に疲れた。翌日に帰宅したのだが、マジで2日くらいは何もする気が起きなかったぞ……。

というわけで一生モノの体験が出来る川湯温泉だが、イチから温泉を掘るのなら誰か友達を連れていくのがベター。一人で挑むと「あしたのジョー」よろしく真っ白に燃え尽きる羽目になるから、覚悟してくれよなッ!

参考リンク:熊野本宮観光協会「川湯温泉
Report:グレート室町
Photo:RocketNews24.

▼水の透明度はガチ。温泉抜きにしても良い場所だ

▼温泉を掘る筆者を不思議そうに見つめていた水鳥のグラビア。動物好きなアナタのために

▼更衣室もあるぞ

▼川湯温泉から徒歩5~10分ほどの距離にあるキャンプ場「川湯野営場 木魂の里」。快適なキャンプ場でした