俺は英語ができない。中学まではそこそこの点数を取っていた気もするけど、高校のテストは赤点の常連だった。

英語で話しかけられようものなら頭は真っ白。知っている単語でも意味が分からなくなってしまう。これはそんな俺がイギリスに行った時の話だ

・バーキンだらけ

そこら中に『バーガーキング』があるイギリス。大型の駅には大体あるし、街の中でも、ひょっとしたらマクドナルドより多いんじゃないかってレベルでバーガーキングを見かける

ある朝、俺は忙しかった。開け放ったドアが閉まる間もなく、ホテルをチェックアウトしてパディントン行きの電車に飛び乗った。昼までにニューカッスル・アポン・タインに行かないといけなかったからね。

・英語ができない俺は適当に注文した

そしてパディントンに着いた時、俺は朝食をとっていないことに気づいたんだ。周りを見回すとそこには例の『バーガーキング』野郎が我がもの顔で駅の真ん中に佇んでいる。やれやれ。仕方がないから俺は店員にメニューを指さしながら言ってやったよ。

コレクダサイ(英語の発音を意識した日本語)


……ってね。指さしたのは「ベーコンキング」ってハンバーガー。「THE KING’S SELECTION」と書かれたメニューは全て見たことがないものだったが、店頭メニューにはパティのハンバーガーがこのシリーズしか載ってなかった。

まあ、多少言葉やメニューが違っても結局は普通のハンバーガーが来るんだろ? 英語のできない俺にだってそれくらいは分かるさ。

・店員「OK」

幸いにも店員は意味を理解してくれたようだ。「OK」と言って値段を教えてくれたよ。8.09ポンド(約1051円)か……まったく、ロンドンの物価の高さにはあきれるぜ。俺はテイクアウト用に包まれた品を受け取ってヒースロー空港行きの電車に乗った。

・包み紙を開けると

やっとやって来た束の間の安堵。イギリスの電車はとにかく遅延とキャンセルが多い。俺はここで初めて朝の爽やかな空気を感じた気がした。だから開いたのさ。さっき店員に渡された包み紙を。しかし、そこにはとんでもないものが入っていた


……?


でッッッッッか

両手でも手に余るサイズのハンバーガーが包み紙の中からこんにちはしやがった。ハッキリ言ってクレイジーだったね。なにせ、片手で持つと逆側のハンバーガーの端が広がって具がこぼれそうなほどなんだぜ?

・このサイズのみなのか

信じがたいことにパティが2枚とベーコンが大量にサンドされてやがる。おいおい、今日はお祭りかな? これはライオンのエサか何かなのかい?

だが、俺はそこでふと気づいたんだ。あの店員はひょっとしたら俺も知らない俺の中の肉食獣に気づいたんじゃないかってね。「OK」とはそういう意味だったのかもしれない。

ロンドンの洗礼を受けた気がしたあの日。俺はあれからずっと考えている。「ガッツリ派じゃない人はどうするんだろう?」と。いや、ガチで。

Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.