天ぷらを調理していた主婦が目を離した隙に、鍋に入った油が発火して大火事……。そんな悲惨な事故を毎年のようにニュースで見る。なかには住宅が全焼するなど取り返しのつかない事態になってしまうことも。

しかし、こういった事故の怖さの1つには「他人事だと思ってしまう」こともあると思う。かくいう私は以前、発火した天ぷら油に大焦りしてバケツ水をぶっかけてしまい、こんなことになった。

・私は発火した天ぷら油にバケツ水をかけた

私が昔、東京都の離島「八丈島」に住んでいたときの話。この島は釣りの聖地と呼ばれ、私も毎日のようにアジを釣り上げては、たたきにして海の幸を楽しんでいた。

そしてある日、アジを天ぷらにしたらアジフライよりも美味そうじゃないか?と思い立ち、自室のキッチンで油を温め始めたのであった。

天ぷらを作る際にやってはいけないこと。それは油を温めている間に目を離してしまうことだ。天ぷらの存在を忘れてしまい、知らないうちに温度が発火点まで上がってしまうということが往々にしてあるらしい。

まさにそんな典型的な形で、油の入った鍋に火を付けた私はリビングのソファに寝転がり、テレビの電源を入れて『とんねるずのみなさんのおかげでした』を見始めてしまった。

その後起こったことのショックが大きすぎて番組の内容はまったく覚えていないが、とにかく面白い回で、ヘラヘラしていた私の頭の中には天ぷらの「天」の字もなくなっていたというわけ。

・発火した天ぷら油に水をかけると水蒸気爆発してしまう

火を付けてから15分~20分ほど経ったころ、キッチンの方から “パチパチパチパチ“ と音が聞こえてきた。「ん、なんだ?」と一瞬戸惑ったが、すぐに「やべ、天ぷら!」と思い出しキッチンに駆け込むと……。


「メラメラメラメラ」


鍋に入った油から20センチほどの火柱が立っているではないか! 火が出ているだけならもう少し冷静になれたのかもしれないが、 “パチパチ” という音が「いつ爆発するか分からない」という不安を掻き立てる。

さて、ここで1番やっちゃいけないことは、そのままにしておくことと、火を消そうとして水をかけることである。水をかけると油の温度で水が一気に沸騰し、水蒸気爆発を起こしてしまうのだ。

しかし私は何を間違ったか、風呂場でバケツに水を溜め、キッチンの入り口から鍋めがけて水をピンポイントでぶっかけた!

・バケツ水ぶっかけるとこうなる

バケツの水はまとまった塊となって、発火した鍋の油にジャストミート! その瞬間、


「ドカン!!」


という爆発音とともにキッチン中に火が広がった。キッチンの空間はちょうど一畳くらいほどの大きさ。広がった火は綺麗に空間の四隅に行き渡たりボックス型の火になった。かろうじてキッチンの入り口から水をかけた私。一瞬火が目の前までやってきたがギリギリセーフ。

爆発は一瞬だけで、火はすぐに小さくなったが、まだ油に火は付いている。パチパチ音もさらに大きくなっているし、これはシャレにならないかも……。家が全焼して、後ろの森も全部なくなってボクの人生終わっちまう!

私は軍手をしていつ爆発するか分からない鍋を外のアスファルトまで運んだ。グツグツしている油が溢れかえり、部屋の絨毯に垂れてはジュージューいっている。そしてもう一度バケツ満杯に溜めた水を鍋にぶっかけた。


「ドカン!!!」


八丈島の静かな夜空に爆発音が鳴り響く……。だが発火した火は消えていた!

私は奇跡的に消火に成功(?)したが、いわゆる「絶対やっちゃいけないこと」をことごとく犯し、死にかけてしまった。まずは目を離さないことが第一だが、もし発火してしまった場合は焦って水なんて絶対にぶっかけないように。

消火器だったり、専用のスプレーだったり、濡れタオルをかぶせるなど、どうか正規の消化方法で対処してほしい。くれぐれもお気をつけて……。

参考リンク:横浜市消防局
Report : 國友公司
Photo : Rocketnews24.

▼八丈島のからの風景