1983年7月15日、任天堂からファミリーコンピューターが発売された。そう「ファミコン」である。それから35年を経て、現在の家庭用ゲーム機は驚くべき進化を遂げているが、ファミコンこそが平成時代の先駆けとなったゲーム機であることは間違いない。
だが、その平成も間もなく終わりを迎える。つまり今年の夏は「平成最後の夏」なのだ。たくさんの思い出の詰まったファミコン、今プレイしたいゲームは何だろうか? 編集部メンバーに意見を求めたので、それぞれのコメントを紹介していこう。まずは私(佐藤)から……
・佐藤英典『メトロイド』
ファミコンが発売開始した当時、私(佐藤)はすでに10歳だった。小学校から帰ると夕飯までの時間、兄弟や友達と夢中になってゲームし続けたことをよく覚えている。夏休みは我が家の子ども部屋に友達がみんな集まって、親に怒られるまでひたすらゲーム三昧。
そんな私が、この夏にプレイしたいゲームのひとつがメトロイドだ。カセットではなく、ディスクシステムのタイトルで恐縮なのだが、このゲームのクリアの瞬間を鮮明に覚えている。同級生たちが集まって興奮してその最後を見届けようとしていた。イシヅ君は興奮のあまりに、その場で鼻血を出してしまったことをよく覚えている。
鼻血と夏のファミコンは私の記憶の奥底で、セットでおさめられている。
・GO羽鳥『スターソルジャー』
私(羽鳥)が最も「夏」を感じるタイトルといえば、高橋名人ブーム真っ只中に登場した縦シューティングゲーム『スターソルジャー』だ。なぜなら、夏といえばキャラバン。「HUDSON夏の全国キャラバン’86」の公式認定ソフトが、このスターソルジャーだからである。
当時、まだ幼かったのでキャラバンには参加していないが、画面いっぱいに出てくる「ビッグスターブレイン」のデカさにビックリした記憶がある。本格的にプレイしたのは小4年くらいの時。やはり夏に遊んでいた。エアコンのついた部屋で。
・P.K.サンジュン『アイスクライマー』
夏だろうと何だろうと、友人とプレイして一番熱く燃えるのは間違いなく『アイスクライマー』だ。クーラーのガンガン効いた部屋で容赦なしの殺し合い……! 「一緒にクリアしようね」「待っててね」なんて言葉は無意味、信じられるのは己だけである。
とはいえ、協力しないとなかなか進めないのがアイスクライマーの奥深いところ。殺し合いモードを捨てガンガンクリアを重ね「新しい野菜(クリアボーナス)」が出現したときの感動は一言では言い表せない。平成最後の夏はアイスクライマーで決まりだ。
・中澤星児『ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会』
1989年に始まった平成。その2年後に発売されたのが『ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会』だ。当時、3人以上で同時プレイできるゲームは珍しく、格闘横スクロールアクションというゲーム性も最高で、誰かの家に集まってはみんなでこのゲームをしたものである。
私(中澤)はステータス最強の「れいほうチーム」を主人公くにおくん率いる「ねっけつチーム」で撃破するのにハマっていた。足の遅い「もりもと」をあえてクロスカントリーに出して、武器投げで皆殺しにしていたのは良い思い出。まぶたを閉じれば、今でも勝ち抜き格闘大会のBGMが聞こえてくる。
ジワジワうるさいセミの声、水滴のついた麦茶、友達の断末魔……うだるような暑さの平成最後の夏、眩しすぎたあの夏を思い出すのもまた一興。
・原田たかし『スーパーマリオブラザーズ3』
1988年(昭和最後の年)に発売された『スーパーマリオブラザーズ3』は、毎日のようにプレイしても全く飽きなかったことを覚えている。夏休みになれば、誰かの家に集まってみんなでプレイしたものだ。
笛を使わずワープなしでクリアできるか、全部のステージをクリアするなど、いろんな楽しみ方ができたのも最高だった。初代もいいが、平成の最後の夏は時代を代表する『スーパーマリオブラザーズ3』をプレイしておきたい。
・和才雄一郎『グーニーズ』
私(和才)にとって、夏休みに友達や親戚と一緒にやるファミコンの代表格だった『グーニーズ』。ファミコンのソフトが今まで何本世に出たのか知らないが、グーニーズの「誰でもある程度そこそこ楽しめる感」は抜きん出ていたように思う。
だからきっと、マリオの1-1もクリアできない私のような人間でも楽しませてくれる気がする。むしろ、今やるとどう感じるか確かめたいところ。「パチンコとか爆弾を使ってたな」とか、「次の面に行くために鍵必要やったよな」とか言いながらやるなんて、絶対に楽しいだろ。
・Yoshio『ドクターマリオ』
ビンの中に入ったウィルスをカプセルで退治するパズルゲーム。テトリスのようなシンプルな操作性ながら、奥深い連鎖が楽しめる。できれば任天堂には新作のドクターマリオも期待したい。ちなみに私(Yoshio)は毎日このゲームをプレイしているが、3連鎖以上を出したことがない。一向に上達しないのだ。なんでだよ。
・あひるねこ『トランスフォーマー コンボイの謎』
どちらかというとスーファミ世代の自分にとって、ファミコンへの思い入れは実はそこまでない。しかし、このソフトを初めてプレイした時の衝撃は、今後も忘れることはないだろう。超絶的な難易度でクソゲー界の歴史にその名を刻んだ迷作、『コンボイの謎』である。
よくある横スクロールアクションながら、開始5秒で死亡。1分を待たずゲームオーバーになった時は、友人たちとバグを疑ったものだ。ちょっとやそっとの失敗がなんだ。こんな理不尽にまでに難しいゲームが、この世界には存在するのだ。平成最後の夏は、すべての悩みを置き去りにするこの鬼畜ゲーと共に……。
──以上である。
いかがだっただろうか。編集部メンバーはゲームソフトを紹介しているというよりも、通り過ぎた夏の思い出を振り返っているように感じられる。それはきっと、ファミコンのある日常が当たり前であり、ファミコンを通して青春を送った証なのだろう。
近頃のゲームに比べれば、当時のゲームのクオリティは恐ろしいほど低い。しかしながら、そのゲームを通してイマジネーションを鍛えられたのは間違いない。なぜなら、振り返ると思い出のなかのゲームたちは飽きることなく私たちを楽しませ、いまだにその思い出が「ワクワク」を与えているのだから。
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24