記者(私)はグミが好きだ。かつて、味わったことのないグミを求めてヨーロッパを数カ月かけて徘徊(はいかい)したり、空港での荷物チェックの際にグミではちきれそうなキャリーバッグで検査官を困惑させたこともある。

当然グミの味に対するストライクゾーンはガバガバで、日本ではよくマズいと言われるハリボーのシュネッケン(タイヤみたいなやつ)ですら一瞬でペロリだ。しかし、そんなグミ経験値が高い私でも、今までの人生で唯一NGだったグミがある。

今思い返しても普通の人間向けの味付けとは思えない……あえて言うのであればきっとグミ好きのコアラ、あるいは半魚人ならぬ半コアラ人向けに違いない。

・異文化すぎる「ユーカリ味」

あれはデンマークのコペンハーゲンに滞在していた時のこと。夜に市庁舎近くのセブンイレブンに食料を求めて訪れた私は、運命の糸に引き寄せられるようにして絶望的にマズいグミと出会った

問題のグミは「HARIBO Eucalyptus」という。Eucalyptusとはずばり、ユーカリのこと。グミの色はいかにもユーカリっぽいくすんだ緑色で、周囲に粒の大き目な砂糖っぽい白い結晶がまぶされていた。

香りに関してはあまりよく覚えていないのだが、別段食べることをためらわせるような要素は無かったと思う。何より記憶に残っているのは、未体験のグミに気分を良くしたことだ。私は取り出したグミを光に透かして眺めるなど、遠足前日の小学生のようにして期待に胸をときめかせていた。その後、何が起きるかも知らずに……

・ほんの一口で全身を襲う吐き気

そして異変はすぐに起きた。1粒食べただけで胃からこみ上げるリバース感。口内にまとわりつく圧倒的な草フレーバーと、不快な苦味。勝手な期待をしていただけに、ダメージも大きかった。

私はこらえきれず近くの店のトイレに駆け込み、そこでイエローストーンのホットスプリング的な光景をプロデュースした。昼間食べたエゲケーというデンマークの卵料理には悪いことをしたと思っている。

・漢方薬と常温で気の抜けたミント味の炭酸の味

ここまでの話はだいたい4年くらい前の話。実は今の今まですっかり忘れていたのだが、急に思い出したのだ。きっかけは鼻炎気味だったので漢方薬を飲もうとしたこと。粉を口に含み、水だと思って手に取ったのが気の抜けたミント味の炭酸……しかも常温……!!

気づかずにそのまま飲んでこの2つが口内で混ざり合った結果、とてつもなくマズい味となった。そしてそれがまさにあのユーカリ味のグミだったというわけだ。

その後も懲りることなく、面白そうなグミを見つける度に食べているが、あのユーカリ味を超える代物にはいまだお目にかかっていない。再チャレンジしてみるのも面白いと思ってググってみたが、販売サイトのドメインはデンマークのもの。地域限定みたいなものなのだろうか。

漢方薬と常温で気の抜けたミント味の炭酸で「ユーカリ味」を再現できることは分かったが、できたらグミでもう一度あのマズさを味わってみたい。絶望的なマズさなので、何かの機会に見かけた方はぜひチャレンジしてみて欲しい。

執筆:江川資具
Photo:Wikimedia Commons、RocketNews24.

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▼羽の生えたサイみたいな像で遊ぶ子供たち

▼街中に唐突に出てくるこういうの好き

▼狭い路地の向こうに出てくるこういう広場もっと好き