中国を旅行された方はご存知だろう。中国ホテルの「○ツ星」ほど信用できないものはない。「4ツ星」で何とか日本のビジネスホテルクラス。「3ツ星」だとかなりの確率で小汚く、ある意味お察し状態だ。
そんなお察しホテルなかでも、とくに低評価を食らっているホテルがある。中国人さえも全力で “無理” と評価する場所には、一体どんな絶望が待っているのだろう。……って私(沢井)の定宿、そんなに低評価だったのか! ということで魔都・上海の最悪評価ホテルを紹介したい。
・立地は最強
そんなホテルがあるのは地下鉄10号線四川北路駅から徒歩5分圏内だ。上海最大の観光地 “バンド(外灘)” からも遠くなく、近くにはコンビニもスタバだってある。立地に関しては間違いなく最強クラスである。
・設備は文化遺産レベル
宿泊費も1部屋3000円前後~とメチャクチャ安い。だが、そのアドバンテージも生かせず、中国内外のクチコミサイトに「最悪」と書かれている理由はズバリ「設備」である。
薄暗い部屋にはホコリがつもり、ベッドにはかなりの確率でダニが潜伏! エアコンは動くけど、滝のように水が漏れる。水と言えば、シャワーは21世紀とは思えない貧弱な水圧だ。無論、独特の香りがする。
そして、貴重な備品であるスリッパは、シルクより薄く、天使の羽のごとく軽い。むしろ技術の高さを感じるレベル。なお、無線LANは根性なし。有線LANはもっと根性なし……。
繁華街に行けば、東京なんか遥かに凌駕するスーパーシティ上海に、まだこんな宿があったなんて! 「守りたい……この上海」一周回ってそんな風にさえ思えてしまう文化遺産級の設備なのだ。
・でも人情がある / 仲良くなるとヤミツキに
正直、ある程度の経験値をつんでいないとオススメできないこのホテル。それでも私はこの宿が大好きだ。それはホテルで働く人の人情である。一見、とても不愛想だが、馴染みになると帝国ホテル並のサービスと心遣いを見せてくれるのである。
具体的な例を紹介しよう。2011年3月11日のこと。同じくここを定宿、いや家かってレベルで利用している「上海 “赤ふん” 保存協会・会長」のショーロンポー・アツイ氏は、ちょうどこの日に宿泊していた。
日本では東日本大震災が……するとホテルの社長夫妻が「日本が大変だ!」と飛んできてアツイ氏を連行。社長室の電話で日本に連絡するよう指示し、家族の安否が確認できるまで傍にいてくれたのだとか。さらに帰国の折には「今、日本は食糧がないらしい。これを持って行きなさい」と大量のカップ麺を持たせてくれたのだという。
また、ビニール傘を盗まれたときは、ホテルの警備員が「任せろ」と出動。数時間には取返してくれたそうだ。ボコボコにされた犯人と共に。
一度、彼らの懐に入れば家族同然に接してくれる。泊まれば泊まるほど愛着がわくというものだ。かつてタイ・バンコクに存在した「ジュライホテル」や「台北旅社」などを愛した旅人の方にはわかってもらえると思う。このホテル……翰庭酒店(ハンティン)がない上海なんて考えられない。
さて、そんなホテルで顔なじみになった結果……予想外のモノを見せてもらえた。警備のオッサンによると「この先は牢屋。拷問が行われていたらしい」。……マジかよ。<次回につづく>
参考図書:『上海歴史ガイドマップ(大修館書店)』
Report:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.
こちらもどうぞ→沢井メグの『魔都上海案内』
▼外観
▼窓からの景色
▼360度カメラで、お気に入りの部屋から外を撮ってみた! タップするとクルクル回るよ
上海、下町の宿 - Spherical Image - RICOH THETA
▼恒例行事、帝国ホテル並の心遣いへの感謝のしるし。安いだけあって客層もアレだ、スタッフは本当に戦場のような忙しさだからね……