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親しい人とのコミュニケーションツールとして、すっかり浸透しているネットサービス「Twitter」。日々の出来事を頻繁につぶやいているという人も多いはず。好きな楽曲の歌詞を、つぶやいたことがあるという人もいるかもしれませんね。

しかし、この何気ない行為は著作権の侵害にあたるかもしれない。事の発端は、2010年の日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原瑞夫理事(現理事長)の発言です。歌詞をTwitterでつぶやくことについて、ニコニコ生放送でコメントしたのですが……。三年前の発言ですが、以下にまとめてみました。

・2010年の発言
2010年2月28日、菅原氏はニコニコ生放送のオンラインワークショップ「著作権講座」に出演しました。そのときに視聴者からの質問に答えて、Twitterで歌詞をつぶやくにはJASRACの許諾が必要という意向を明らかにしたのです。

・当時使用料については決まっていなかった
当時JASRACでは、Twitterで歌詞をつぶやいた場合の著作権使用料について、具体的に決まっていませんでした。あれから三年が経ち、現在は何か取り決めが行われたのでしょうか? その後の動向が気になった記者(私)はJASRACに尋ねてみました。

・JASRACは投稿して欲しくない
電話で問い合わせたところ、三年が経った現在も著作権使用料については、「今のところ具体的に決まっていない」と担当者は話しました。使用料が発生しないのなら、歌詞を投稿しても問題ないのか? と尋ねたところ、「(著作権を)管理する側としては、投稿して欲しくないですね」とのことでした。

・専門家の意見
法律の専門家に意見を求めたところ、次のような回答を得ることができました。

専門家「誤解を恐れず、できるだけ簡潔に申し上げたいと思います。当たり前のことですが、著作権を侵害したと評価されるためには、著作物(歌詞)を無断で利用(複製等)したと評価されなければなりません。この点、仮に著作物として認められてしまうと、その内容については著作権者に独占的な権利が発生するため、他者の表現の自由等を制約する可能性が生じます」

・ありふれた表現は著作物として認められない
「したがって、何でもかんでも著作物として認めることはできないのです。著作物として認められるためには、あくまで創作性がなければならないとされており、ありふれた表現は著作物として認められないことになっています(そうでなければ、我々は日常会話すらできなくなってしまいます)。よく例に挙げられるものとして、『川端康成の雪国の冒頭にある「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という一文だけであっても著作物として認められるか』という問題があります」

・法律家の間でも意見が分かれる
「仮に著作物として認められれば、第三者はこの一文を無断で利用することができなくなります。他方、著作物でなければ、誰でもこの一文を真似するのが自由となるのです。そして、この一文だけをもって著作物といえるかといえば、おそらく著作物とは認められないのではないかと思われるものの、法律家等の間でも意見が分かれるところであります」

・1フレーズであれば著作物と認められる可能性は低い
「たとえば歌詞の一節、歌の1フレーズという短さであれば、著作物として認められる可能性は低くなるでしょう。他方、その1フレーズだけであっても当該作詞家の創作性が表現されているような強い個性的な内容であれば、場合によっては著作物として認められ得るものと思われます。仮に著作物として認められなければ、誰しもツイッターで配信することが自由にできるといえます」

どうやら短いフレーズは原則として、著作物であると認められにくいようです。しかし、その線引は専門家でも難しいとのこと。私たちもTwitterで歌詞をつぶやく際にはこのことを頭に置いておいたほうがいいかもしれません。

Photo:Rocketnews24