2017年2月2日、JASRACが音楽教室での演奏について、著作権料を徴収する方針を明らかにした。これに対して、ネット上では、音楽関係者を含め多くの人から批判の声が挙がっている。
そんな中、JASRAC正会員にして『残酷な天使のテーゼ』の作詞家である及川眠子(ねこ)さんが、今回の発表について Twitter で批判の声を投稿していた。
・今回の件の概要
まず今回の「著作権料徴収の範囲拡大」についてJASRAC側が根拠としているのは「演奏権」。これは、著作権法で作曲家、作詞家が占有すると規定されており、公衆に聞かせる目的で楽曲を演奏したり歌ったりする権利のこと。
この権利についてJASRACは、音楽教室での指導者や生徒による演奏を「公衆の前での演奏」と解釈し、徴収を始める方針だという。そしてそんな今回の発表に批判の声を挙げているのが、前述の及川眠子さんである。
・大御所作詞家が批判
及川眠子さんと言えば、エヴァンゲリオンの『残酷な天使のテーゼ』『魂のルフラン』、Winkの『愛が止まらない』『淋しい熱帯魚』などを作詞した超大御所。彼女のツイートをかいつまんでご紹介しよう。
「JASRAC正会員の一人として。私は『営利を目的とする場』での演奏であるなら、当然楽曲の著作権使用料は払うべきものだと思う。だけど、音楽教室で「練習のために」弾いたり歌ったりするものから、使用料をもらいたいと思ったことなどない」
──続くツイートでは「音楽を作ってる、そして音楽によって生計を立てている者の側から言わせてもらう。音楽を不自由なものにしてはいけない!」と強い意志を表し、「他の作詞家・作曲家はこの『ほぼ決定した徴収案』に賛同してるのだろうか」と疑問を投げかける。
・音楽著作権は誰のもの?
もはや「権利」が作った人の手を離れて1人歩きしているようにしか思えない今回の一件。90年代、いろんな人に莫大な富をもたらした「音楽著作権」という化け物の行く先は、ディストピアが広がっているように見えてならない。
参照元:朝日新聞、Twitter @oikawaneko
執筆:中澤星児
▼今回の件についての及川眠子さんのツイート
JASRAC正会員の一人として。私は「営利を目的とする場」での演奏であるなら、当然楽曲の著作権使用料は払うべきものだと思う。だけど、音楽教室で「練習のために」弾いたり歌ったりするものから、使用料をもらいたいと思ったことなどない。https://t.co/ituJlOo0yY
— 及川眠子 (@oikawaneko) February 2, 2017
極端な話、そのうちに街角で鼻歌を歌ったり口笛で曲を奏でていても、著作権使用料を支払えと言われそうだ。
音楽を作ってる、そして音楽によって生計を立てている者の側から言わせてもらう。
音楽を不自由なものにしてはいけない! https://t.co/ee3srRaSwv— 及川眠子 (@oikawaneko) February 2, 2017
音楽はタダではない。違法ダウンロードなど著作権を侵害するものに対してはもちろん厳しく取り締まってほしい。だけど、音楽を学びたい、いつか音楽の世界で花を咲かせたいと願う子供たちには、自由に楽曲を使わせてあげてほしい。それが今の私たちにできる、未来の音楽への恩返しだ。
— 及川眠子 (@oikawaneko) February 2, 2017
他の作詞家・作曲家はこの「ほぼ決定した徴収案」に賛同してるのだろうか。さっき帰宅して、ネットのニュースを見ただけなのでよくわからない。肝心の作家の意見がどうなのか、知りたい。https://t.co/463gfal7mY
— 及川眠子 (@oikawaneko) February 2, 2017
▼以下、その他ミュージシャンのツイート。岸田繁さん(くるり)
著作権に関わらず、〜権て難しい。得るものに対し対価を払う心意気があるかどうか、て自分は考えるようにしてるけど、なんだかなー。https://t.co/xMw0fUdiAQ
— 岸田繁 Shigeru Kishida (@Kishida_Qrl) February 1, 2017
▼石田ショーキチさん
音楽教室からも使用料を徴収するJASRACはお歌の時間に歌を歌う幼稚園や保育園からも徴収し始めるのも時間の問題だろうな取るだけ取ってまともに分配しない癖に本当にもう
— 石田ショーキチ (@Ishidalf) February 2, 2017
▼伊藤健太さん
生徒は楽器の演奏技術を体系的に学ぶためにその対価として授業料を支払っているのであって、「聴衆」として楽曲を楽しむために音楽教室に通っている訳ではない。JASRACは著作権保護という本来の目的を完全に見失っている…https://t.co/n9QXa7vP0u
— 伊藤健太 (@ITO_KEN) February 2, 2017