私の名前は褌シメタロウ。日夜日常の些細な出来事について、深く思いを巡らし、実働時間を無視して記事を書いているライターである。あなたはうんこを漏らしたことがあるだろうか? 胸に手を当てて考えてみて欲しい。赤ちゃんのときは別にして、人は誰しも1~2度くらいはうんこを漏らしたことがあるはずだ。

しかしながら、そのことを自らの傷として恥じるか、それとも人の痛みが分かると理解するかでは、大きな違いとなる。恋愛においても同じ痛み、同じ恥を共有し、許し合うことはきっと大切なはずだ。今日は、自称おっぱい上級者を名乗るS氏の、感動的な恋愛説教についてご紹介しよう。

S氏は、私よりも少し人生の先輩だ。結婚しているのだが、奥さんとは大恋愛の後にゴールインしたという。あまり普段、自分のプライベートを語りたがらない彼なのだが、最近、最若年のZ氏の恋愛相談を受け、結婚にまつわる経緯について語った。

Z氏は人生的にも恋愛的にも経験が浅い。とても好きな女性が現れたのだが、お付き合いをする前から結婚を夢見ているのである。私は、恋に患うZ氏のため息がうるさくて仕様がなかった。

「どうしたらいいんすかね~、俺、もう彼女しか見えないんすよ~。結婚したい、もう一生一緒に居て欲しい。彼女のためならなんでもできるのに、『結婚しよう』って言えないんですよ」

まだ付き合ってもいないのに、このようなことを言い出していると、ドン引きされて振られるに決まっている。「落ち着け」という説得を聞かずに妄想は膨らむばかりだ。

私が取り合わないものだから、妻帯者のS氏に相談の矛先を向けた。

「Sさん、どうして結婚したんですか?」

この問いかけに、S氏はゆっくりと、しかし確実に言葉を選びながら、こう問い返した。

「お前、うんこ漏らしたことあるか?」

普段は柔らかい言葉遣いを心がけている彼が「お前」と言ったのには驚いた。さらに結婚の問いかけにうんこを返すとは。さらに言葉を選んで続ける。

「あのね、結婚というのは、お互いにどこまで自分をさらけ出すかにかかってるんだなあ、うん。僕がうちの奥さんとの結婚を決意したのは、うんこがきっかけなんですよ、うんうん。元々おなかが緩い僕は、急におなかが冷えるとダメなんだね。半分同棲していたあるときに、不本意ながらうんこを漏らしちゃった。それを奥さんが、文句言わずに『そういうこともあるよね。私も子供の頃、失敗したことがある』と言って洗ってくれたんだ。それでこの人にしようと、思ったんだな、うん」

なるほど、さすがは妻帯者。お互いに痛みを分かち合ったからこそ、優しくもなれるという訳だ。この話にZ氏は、なぜか涙を流していた。「そうっすか、そうっすか。なんか分かるなあ、うんこ漏らさなきゃダメなんだなあ」と、妙に納得している様子。しかしながら、S氏の伝えたいこととは、別の部分を受け取ってしまったかも知れない。

その心配は的中。後日、Z氏はお目当ての相手に「うんこ漏らしても良いですか?」と聞いたらしいのだ。それを「うん」という人はいないだろう。Z氏はその人と断絶してしまった。

この報告を受けてS氏は、「よかったじゃない。うんこ許してもらえなかったんでしょ? そういう人は、一生一緒に居られないよ、うん」と慰めた。Z氏は少々先走ったが、独りよがりを解消できてよかったのではないだろうか。これで彼も、またひとつ大人になった。

長い人生を添い遂げるのなら、うんこ程度でつまづく訳にはいかない。うんこを踏み越えられた2人こそ、ゴールにたどり着けるのではないだろうか。

文=褌シメタロウ