
その車がロケットニュース24にやって来たのは、2014年のことだった。編集長・GO羽鳥が名古屋の中古車屋まで出向いて購入した「三菱ミニカ 660 グッピー」。価格は驚きの980円である(諸経費除く)。
以来、当サイトの社用車として、10年の長きに渡り活躍してくれたミニカちゃんだが、このたび諸々の事情によって、残念ながら廃車にすることが決定しました。
これがロケットニュースでの最後のミニカ記事なります。ぜひ最後までご覧ください。
・久々の再会
2024年6月某日。私(あひるねこ)は上司のYoshioと共に、約2年ぶりに埼玉県の山奥にある100万円の古民家、通称「ロケット荘」を訪ねていた。ミニカの引き取りに立ち会うためである。
現在、ミニカはすでにエンジンがかからない状態で、年老いた猫のようにロケット荘の敷地内で日なたぼっこをして過ごしている。私もミニカ関連の記事を書いたのは、数年前に車体をコーティング加工してもらった時が最後だ。
いやぁ、ホント久しぶりだな~。元気にしてたかい? ところが、再会を果たしたミニカは……
バカ殿みたいなメイクになっていた。
・伏してなお
なんでも今年2月、羽鳥とYoshioが「しっくい風の壁用仕上・補修剤」で車体を全塗装したらしい。まだ体張るのかよ! さすが軽自動車界の出川哲朗。ロケットニュースが誇るミニカちゃんである。
車内の荷物を外に運び出している最中、ふと走行メーターが目に入った。距離は10万7657kmだ。
2014年に書かれた羽鳥の記事によると、ミニカ購入時、走行距離は9万3452kmだったそうな。つまりミニカはこの10年間で、1万4205km走ったことになる。
一般的に軽自動車の走行距離は年間8000km程度らしいので、これはかなり少ない数字だろう。しかし、我々がミニカと過ごした時間の濃密さは、走行距離だけでは決してはかれないはず。
レッカー業者が到着するまでまだ時間があるので、ここでミニカとの思い出の数々を、編集部メンバーによる回想と共に振り返ってみたい。まずは10年前にミニカを発掘した男、編集長のGO羽鳥である。
・GO羽鳥とミニカの思い出
「そもそもミニカのネタを思いついたのは私(羽鳥)で、名古屋まで買いに行ったのも私。なんとか3ケタの販売価格にしてもらおうと、必死にお願いして20円負けてもらったのは良い思い出だ。
実はその当時、私は車の運転が苦手だった。助手席に上級者を乗せて運転したものなら罵倒が飛び交うような下手くそだった。
そんな状況なのに『1人で名古屋から持ち帰る』という無謀なミッションに挑戦したのは、このミニカを利用して、自分自身を変えたかったのかもしれない。
『名古屋から東京』以外にも、ミニカと私は2回ほど超ロングドライブを経験した。まずは『東京から石川』の往復。約11時間かかったけど、無事に行けたし、帰ってもこられた。
もう1回の長距離移動は、『東京から岐阜』の往復だ。『Googleマップの声の人』としても有名なバイリンガルフリーアナウンサー野口美穂さんを助手席に乗せて、『生Googleマップ』をやってもらうという企画。
今にして思えばよくこんな企画を受けてくれたとも思うし、よくこれだけのためにミニカで岐阜まで行ったとも思う(現地でレンタカーを借りても良かったじゃん!)。野口さん、本当にありがとう!
ちなみにミニカと長距離を走ると、2時間くらいで『一心同体』の状態になる。なんというか、エヴァンゲリオンではないが、私の神経ひとつひとつとミニカが “直結” した感覚になるのだ。
サスペンションもヘタれていて、ほぼリジットサスくらい振動がダイレクトに伝わるミニカ。タイヤで小石を踏んだだけでも、私の足は実際に『小石を踏んだ』という感覚になっていた。
エンジンの回転数は心臓と直結。ハンドルも上半身と直結。狭い視界もまた『集中しないと危険』なので、シンクロ率が高まる要因になっていた気がする。こんな体の一部になる車、あとにもさきにもミニカだけだ。
他にも思い出は山ほどあるけど、油性マジックでの全塗(ぜんと)という企画は、我ながら渾身の1ネタだった。“金をかけずに、夢を見せたい”。まさに980円のミニカでしかできなかったネタだと思う。
後半数年は調子が悪く、安心して走れるような状態ではなかったミニカ。それでも死に場所である『100万円の古民家』まで辿り着き、最後までネタに付き合ってくれた三菱ミニカ・グッピー。
購入したのは2014年の5月。ぴったり10年。もう十分に980円(コミコミ8万9800円)の元は取れただろう。本当にありがとうミニカ。そして、お疲れ様でした。ゆっくり休んでください」
ミニカへの熱い想いが、文章の端々からほとばしっている。ただ羽鳥さん、まずはこれだけ言わせてくれ……長ぇよ! 「1~2ブロックくらいで」ってお願いしただろ! 何文字書くんだよ!! それくらい、羽鳥とミニカの絆は深かったということだろう。
さあ続いてはミニカ史上、もっとも意味不明な企画に特に頼まれてもいないのに挑戦した男、中澤星児だ。
・中澤星児とミニカの思い出
「それは暑い夏の日のことだった。Wikipediaに『2018年の猛暑』というページが残っているくらい記録的な暑さだったあの夏。
日中にミニカに乗ったところ、ハンドルが焼きゴテになったのかというくらい熱かった。ハンドルがこんなに熱いんだったら、ボンネットはもんじゃ焼き焼けるんじゃねえかなハッハッハ。
というわけで、焼いてみたのが『【猛暑グルメ】車のボンネットで「もんじゃ焼き」を作って食べてみた結果!』である。だがやってみると、焼くまでが予想以上に大変だった。
当時、ミニカは屋根のある駐車場に預けられていたので、それをまず陽の元に長時間置かないといけない。とあるガレージでやらせてもらったのだが、そのガレージは私(中澤)の家からクソ遠かったのである。太陽の時間や買い出しや準備を考えると、かなり朝早くの出発になった。
記録的な猛暑の中、たくさんの荷物を持ってガレージについた時、私の体力はすでに尽きかけていた。だが、本番はここから。焼けるかどうか分からないので記事になるかどうかもまた分からない。その先行きの不安さが精神力をも削る。なんでこんなこと思いついちまったんだ……。
最初に火が通ってきていることを発見したのは、動画撮影を担当していた田代大一朗。私はだるすぎてもう焼けなくてもいいから帰りたいとすら思っていたが、田代だけは信じていた。ミニカのことを。
その純粋なる気持ちにミニカも応えたのかもしれない。あの夏、我々はミニカともんじゃ焼きを介して会話をしたのである。本記事はそんな愚か者たちにミニカがくれたプレゼントと言えるだろう。今となってはこう思う。良い車であった……と」
──ちょっと何を言っているのか分からないが、中澤の熱い気持ちだけは伝わってきたような気がしないでもない。
さて、ミニカと言ったら忘れたくても忘れられないのが、2016年に決行された「吐き気がするほどキモいおっさんの痛車」改造企画だろう。
ロケットニュース史に残るまさに一大珍事件であり、佐藤ミニカが読者と通行人に与えたインパクトは計り知れないが……この後、当事者であるはずの佐藤パイセンから衝撃の事実が語られる。
・佐藤英典とミニカの思い出
「今だから話せることなんだけど、ある時期ミニカが佐藤仕様になっていたことがある。あれはもう8年も前のことか。
私(佐藤)に対するドッキリだったがゆえ、私は車両の全面に私の顔がプリントされることを知らなかった。無論、私が考えたことでもないわけだ。お願いした覚えも1ミリたりともない。
なのにだ、編集部内で『(佐藤仕様の)ミニカに乗りたくない』なんて言われる事態に。街の視線を釘付けにできるステキな仕様だったのに、乗りたくないだなんて……。
ミニカよ、あの時のお前が1番輝いていたぜ。あばよ!」
あれ、ガチでドッキリだったのかよ! そういう体(てい)なのかと思ってたわ!! 当時の記事を読む限り、まんざらでもない様子の佐藤パイセンだが、あの時のミニカが一番輝いていたという点には私も完全同意である。マジで最高だったよなぁ。
それでは私からも思い出を一つ。先述した「車体のコーティング加工」によって、新車のように生まれ変わったミニカが記事としては非常に印象深いが、それとは別によく覚えているのが、2018年のイングヴェイとのドライブだ。
・あひるねことミニカの思い出
中澤による名物企画「突撃! イングヴェイ」の記念すべき第1弾は、女優のんさんにインタビューするフリしてイングヴェイするというものだった。私は撮影係として中澤に同行。イングヴェイが運転するミニカで、取材場所の幕張メッセに向かったのである。
純粋に社用車としてミニカと触れ合ったのは、実はあれが最初で最後かもしれない。写真も1枚しか残っていないが、今となってはかけがえのない思い出だ。
動画と写真を一人で同時に撮るという無茶なミッションにビビッていた私を、小さなボディと大きなラブで包んでくれたミニカちゃん。あの時は事故なく無事に運んでくれてありがとう!
各自の思い入れが強すぎるあまり、想定の倍以上の長さになってしまったが、ここで業者の方たちがレッカー車と共についに到着。いよいよ本当にミニカとのお別れの時間がやって来た。
涙なしには見られないミニカ、魂のラストランは次のページへGOだ……! うわあああああああ! ミニカ、行かないでくれェェェェエエ~~~~~(涙)
Report:あひるねこ
Photo:RocketNews24.
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あひるねこ
























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