秋の味覚と言えば……栗である。さて、突然だが、あなたは栗を皮がついた生の状態から調理したことがあるだろうか?

ちょっと料理に凝りだした人なんかは一度は手を出して痛い目にあっていると思う。そう、栗の皮剥きは一言で言って苦行

二度とやるもんかと思っていたのだが、ネットには「簡単に栗の皮が剥ける方法」の情報がたくさんある

今回はそれを全部試してみて、一番栗の皮が簡単に剥ける方法を探してみるというマゾ企画である。前編では道具を使わない方法を試してみることにした。

・栗の皮剥きは地獄

料理をやったことがない人からすると「え、栗のお菓子とか世の中にたくさん出回ってるじゃん」と思うだろう。21世紀になるというのに、そんなに苦行があるわけがないと。

栗の皮剥きは予想の10倍くらい辛い。いうなれば、丁寧な暮らしの中にある闇である。あれは調理ではなく懲罰であるのではないかとさえ思う。

まず、栗の皮には外側の固い「鬼皮」と内側の柔らかい「渋皮」という2つの皮がある。この2つの皮を綺麗に剥かないと、栗ご飯などは作れないのだが……。日本産の和栗の場合、渋皮が非常に剥きづらいという難点があるのだ。


・今回のルール

個体差を考慮し和栗をランダムで5個選び、その5個の渋皮まで完全に剥けるまでのタイムを測る。

・鬼皮が剥けるまでの中間タイム
・渋皮まで剥きおわった最終タイム
・剥き終わった栗の見た目

によって、栗の皮剥きのしやすさを競う。なお、チャレンジャーの御花畑は非常に不器用である。



①熱湯に30分〜1時間漬けてから剥く方法

わりとオーソドックスな方法。熱湯の中に栗を漬け、湯の粗熱がとれる30分〜1時間ほどして、栗の鬼皮をふやかしてから剥くというやり方。栗は冷めると剥きづらくなるので、湯の中からひとつずつ取り出し、鬼皮が剥けたら、ふたたび湯の中に戻す。

・鬼皮


栗のザラザラした部分から包丁で切れ込みを入れたら、あとは手で剥けるくらいに柔らかくなった! 逆に包丁を使って全部剥こうとすると手が滑って怪我しそうになる。

中間タイム……6分10秒

意外なほど鬼皮を剥くのはすんなりいった。

・渋皮

さて、ここからが苦行の始まりである。湯に漬けていた渋皮を剥いていく。え、渋皮は外側より柔らかそうだし、ツルっと剥けるんじゃないの? と思うでしょう。ツルッと行かないんだな、これが。りんごの皮剥きみたいな要領で、包丁で実ごと皮を剥くのだが……。栗の実は固いので全然刃が進まないのだ。

ちなみに皮剥き機は危なくて使えなかった。栗が冷たくなるほど剥きづらくなる。たった5個なのにこんなに時間がかかるなんて……。

最終タイム……22分20秒

かなりの実を犠牲にしてなんとか剥き終わった。え、実を削りすぎてもったいない? そんなことは栗の皮を剥いてみてから言ってほしい。



②栗を一晩冷凍したあとお湯につける方法

これをやるとツルッと渋皮まで剥けることもあるらしい……という方法。栗を一晩、冷凍庫入れて凍らせたあと、5分ほど熱湯に漬けてから剥く……という方法。なお、こちらも湯から一粒づつ取り出して皮を剥いていく。冷凍→お湯に漬ける という過程で、皮と実の間に空洞ができるとか。

・鬼皮

たしかに、こころなしかさっきのときよりも、鬼皮がツルッと剥ける気がする。手でポロンっと鬼皮が気持ちよく剥ける。剥きづらい底のザラザラのところもベリベリっと剥がれた。しかし、渋皮までは剥がれなかった。

中間タイム……6分42秒

と思ったら、別にさっきの「1時間湯に漬ける」ときよりタイムが伸びていた。なんで?

・渋皮

剥きやすさの差があったのは渋皮の部分。さっきの湯につけるだけのときより、こころなしか渋皮が薄く剥けるのだ。しかし、根気のいる作業で苦行であることには変わりなく、手と肩が痛い。早くもこの企画を考えたことを後悔する。あと、虫食いの栗が多すぎて「苦労したのにハズレかよ……」と心が荒んでいく。

最終タイム……21分02秒

剥き終わりは①よりも実が多く残るので綺麗。渋皮剥きのタイムが少し短縮された。(虫食いのものは割れた)



③皮に切れ目を入れてから電子レンジでチンする

生栗の状態で、栗の底のザラザラした部分を切る。切り落とさずに皮がブランと残るぐらいにするのがポイントらしい。そのあと耐熱容器にいれて栗がかぶるくらいの水を入れて、ラップをふんわりかけてレンジ600Wで1分20秒ほどチンする。

うまくいくと渋皮までツルッと剥けるらしいが……。

・鬼皮

そもそも、生栗の状態で底に切れ目を入れるところで難航。底の部分は特に固いうえに、包丁の刃が全然入らない……。包丁が刃こぼれしそうで不安になるし、普通に手を怪我しそうになって危ない。なんとか底に切れ目を入れてチンするも……。

刃がしっかり入ったものはスルっと剥けたが、そうでないものはなかなか剥けない。

中間タイム……6分56秒

生栗の底に切れ目を入れる時間は入ってないので、それを入れると実際は10分近くになる

・渋皮

実が生に近いので、渋皮と栗が密着しすぎてぜんぜん剥けない……。果てしなく時間がかかって、本当に泣きたくなったし写真も撮り忘れた。誰ですかこんな企画を考えたバカは。私だよ!

最終タイム……40分以上

ストップウォッチを再開し忘れたけど、時計を見たらこれくらいの時間が経っていた。これで栗5個の皮しか剥けていないなんて……。



・最終結論

鬼皮の皮をむき終わるタイムはどれも6分前後で変わらなかった。最大の難関は渋皮剥きであることを考えると ②一晩栗を冷凍してから湯に漬ける の方法が、こころなしか皮を薄く剥きやすく、実が残る割合が多くてよかった。

しかし、作業時間2時間超でたった15個の栗の皮しか剥けていないことを考えると、簡単に栗の皮を剥く方法などこの世にはないに等しい。

手も痛いし、ずっと下を剥いていたので肩も痛い。正直、栗の皮剥きは素人が手を出すべきはない。私は非常に後悔している。

次回は、栗の皮むき器などの道具を使って性懲りもなく苦行を展開する予定である。人が苦しむのを見るのが好きな人はお楽しみに!


執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.

▼なお、栗は水に浮いたものは虫食いの可能性がある。先に水に浮いたものは取り除くのをオススメする。半分くらい虫に食われていた

▼剥き始めた栗が虫食いだったときの絶望感は異常。あと虫がキモい