2023年1月25日から26日にかけて日本列島を荒らしまくっている凄まじい寒波。世間では「最強寒波」などと呼称されているが、報道で伝え聞く被害のほどから、この表現には同意しかない。

しかし都内とその近郊はこの2日間けっこうな快晴に恵まれ、寒さも別に言うほどでもねぇなという感じだった。寒波の前まで装着してた手袋とマフラーも、この2日間は日差しのおかげで使わなかったし。

主観的には、ぶっちゃけ対岸の火事。雪に慣れてない関西や九州の人は大変っすねぇ……みたいな傍観者ムーヴだったのだが、ついに寒波の影響を実感する事態が発生した

・クエ

きっかけは、2023年1月26日から全国のはま寿司で始まった「天然まぐろ中とろと冬の絶品祭り」。このフェアをレビューすべく近所のはま寿司に向かったところ、寒波の影響で完全にやられていることが発覚したのだ。

さて、今回のフェア。公式HPの対象メニュー一覧を見ると、どう考えても注目すべきメニューは1つしかない。

フェア名的には「天然まぐろ(110円)」が主役のように見えるが……否! 今回最優先で試すべきは、どう考えても「愛媛県宇和島産くえ(319円)」だ!!

これは私の推測だが、恐らくこのクエは宇和島で養殖されたものだろう。天然物のクエは死ぬほど貴重&高価なので、天然なら全力で天然であることをプッシュしまくるはず。

いちおう四国は天然のクエの水揚げが盛んな場所のうちの一つではある。しかし愛媛県の宇和島は、特に南部の海域にて冬でも高い水温が維持されることからクエの養殖が盛んなエリアだ

また、1月末というタイミングでフェアにブッこんできたという点も、12月から3月ごろにかけての養殖クエの出荷シーズンと合致している。どこにも明記されていないが、私は養殖だと見ている。


・養殖でも高級

さて、世間一般的に養殖というと、それだけで謎に軽視される感がある。しかし養殖の魚というのは、全く馬鹿にできない。

確かに値段だけ見れば、供給が不安定だったり数が少ない方が高額になるのが世の摂理なため、どうやっても天然の方が高額にはなりがちだ。しかし高い=希少というのはおおむね正しいが、高い=ウマいではない。

養殖魚というのは最先端の水産学の叡智の結晶。高い効率でウマく育てるためのあらゆる工夫が行われており、品質にどうやってもバラつきが出る天然物より、養殖の方が味が良くても普通だ。

とはいえ、ことクエに関しては、養殖でも非常に高額。これはクエが成長に時間がかかる魚であることが要因の一つとなっている。最低でも3年から4年程度。それ以上もあり得るというくらいに、水揚げまで時間がかかるのだ。

商業的にそんなに待つのはキビしいため、成長の早い他の魚と交配させる研究も盛んなくらいだ。例えば近畿大学の水産研究所が生み出した、「タマカイ」とのハイブリッドな「クエタマ」(野生には存在しないはずだが、特に鹿児島の錦江湾などで釣り人による釣果の報告がSNSでアップされまくっており、個人的には生態系の保全のためにも踏み込んだ調査が必要な気がしている)。

また、はま寿司でも以前フェアで目玉になったことがある、「アラ」と交配した「アラクエ」というのもある。


他にもウィルス性神経死病という、養殖業界においては昔からコモンな、しかし致命的な病気による被害のリスクも、クエは育成コストが高いがゆえに大きい(病気自体はクエに限ったものではなく、タイ、スズキ、フグ等多くの魚で共通して厄介視されるものだ)。

なんにせよ他の魚と比較して、クエの養殖は非常に歩留まりが悪いと言って良いと思う。ということで、クエというのは養殖でも非常に有難いのだ。全国チェーンの回転寿司で出てくるならなおのことだ。

それにはま寿司レベルのチェーン店が全国の店舗で提供するとなれば、それはもう養殖業者の今季の出荷数のかなりの割合を買い占めているんじゃないかという可能性。

ワンチャン、はま寿司で食えば今冬の宇和島産のクエの品質をジャッジできるのではないかという気すらしている。

というわけで、ここまで寿司を1つも食うことなく、なぜ今回のフェアで「愛媛県宇和島産くえ(319円)」に注目すべきかという話をしてきたわけだが……





入荷待ち


・最強寒波

一瞬頭をよぎったのは、出遅れたのではないかという考えだ。誰もがクエの有難さを認識しており、この機を逃すまいと はま寿司に殺到した可能性は否定できない。

しかし私が店舗にやってきたのは平日の昼過ぎ。さすがに世の中そんな暇人ばかりではないだろう。何かあったに違いないと公式HPを見ると


最強寒波にやられていた。きっとクエを乗せたトラックも、新名神高速道路とかその辺の大雪による渋滞に巻き込まれてしまったのだろう。

宇和島から関東までだしな。きっとあの辺の高速道路はマストだよな。こればかりは仕方がない。全ての店舗で未入荷とは限らないので、皆さんはワンチャンあるかもしれません。あったら是非宇和島のクエを食べてみてください。

参考リンク:はま寿司
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

▼いちおうフェア対象メニューで気になるものは食べてみた。全5品。


▼天然まぐろ中とろ 110円。美味しい。マグロを安く食うチャンスではある。


▼えんがわチャンジャ軍艦 110円。酒のツマミ枠。チャンジャ力は高いが、えんがわ力は低い。


▼大切り炙りとろ穴子 165円。加熱した穴子でこのサイズはちゃんと大切りしてると思う。味もグッド。


▼炙り金目鯛 110円。ウマさとコスパ的に、クエ抜きでエースを選べと言われたらこいつかもしれない。


▼厳選かにづくし 748円。ビジュアル的な満足度は高い。大葉が爽やかで、料理としての味はウマい。でもカニは弱めで、こいつから得られる「カニを食った!」という満足感は微弱だと思う。