かつ丼と言えば卵とじ……そんなふうに考えていた時期が俺にもありました。ここ最近、卵とじない「焼きカツ丼」にハマった私(中澤)。これは2023年くるで

しかし、毎日、色んな店を食べ歩いていると、卵とじないかつ丼は焼きカツ丼だけではないことに気づいた。っていうか、ほとんどの店が「とじないカツ丼」や「焼きカツ丼」と検索してもヒットしない。これ思っていたより深いぞ……! そんな深海を足でサーチしようというのが本連載『卵とじないカツ丼を探せ』である。

・呼び名がまちまち

なぜ検索でヒットしないのかというと、卵ととんかつが別になっているかつ丼に決まった名前がなかったからだ。これまで、とんかつ別のかつ丼はあくまで個々のオリジナリティーの探求の末に生まれていたところが大きかったのだろう。魔術師が自分だけの地下室で新しい魔術を生み出すように、かつ丼師たちもソロでの研究の成果だったのだ

バンドで例えるならインディーズである。今回発見したのは間違いなくそんなインディーズ店。四谷の住宅街・荒木町にあるとんかつ屋『鈴新』だ。

・歴史

昔は花街だった荒木町。今『鈴新』の入っているビルは、元は、花街の「見番(事務所)」や、唄や三味線の稽古場であったらしい。2代目店主の鈴木洋一さんいわく、昭和33年に移転してきた時は、街にはまだ50人ほどの芸者さんがいたという。まさに、日本の変遷を見てきた店。そんな歴史ある店のかつ丼が……


とじてない。

一見すると、とじられているようにも見えるが、実はとんかつは別。卵がとんかつの上に布団のようにかけられているのだ

・衣サクサク

食べてみると、まず豚の旨みが感じられる。そして、衣のサクサクさはまぎれもなく「とじないカツ丼」の味だ。しかし、とんかつ別とは言え、卵自体は玉ネギととじられている分、くたくた感も味わえてなかなかにハイブリッド。ちなみに、価格は1400円だった。

ただ、これも前述の「とじないカツ丼」と検索してもヒットしないものの1つ。「とじないカツ丼」でも「焼きカツ丼」でもないそのメニューの名は……


かけかつ丼

・かつ丼師の想い

確かにかけている! 事実、かけ布団みたいだと思ったし……!! 本当にネーミングって個性だな。こういう別ネーミングを見つける度、理想のかつ丼を目指したインディーズかつ丼師の想いを感じずにはいられない。激熱だ。かつ丼だけに。

今日、様々な呼び名で呼ばれている卵とじない系かつ丼。そこには深淵さが感じられる。シンプルな検索では表層に出てこない、そんな深海にこれからもサーチライトを照らしていきたい。

・今回紹介した店舗の情報

店名 とんかつ鈴新
住所 東京都新宿区荒木町10-28 十番館ビル1F
営業時間 11:30~13:30、17:30~20:00
定休日 日曜、祭日

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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