ウワァァ…………スッゴイ。人ってスッゴイ至近距離にとつぜん有名人が現れたとき、ビックリしすぎて笑っちゃうものなんだね。ってか、メジャーアーティストってもっとこう、冷たくて怖いオーラを放ってるものと思っていたけど、この人たちってメッチャ腰が低いのな。「ヤンキーがズブ濡れの子犬抱きしめてる現場を目撃した気分」とか書いても大丈夫かな?

マキシマム ザ ホルモンの正しい扱い方が分からなさすぎるので、とりあえず成り行きを見守ることにする。

この日のミーグリは専用チケットを購入すれば誰でも参加可能。優先入場やサイン入りポスターがもらえるほか、メンバー4人と記念撮影もできちゃう超豪華版だ。流れ作業のように撮影して終了……かと思いきや、ファン1人1人とキッチリ会話するスタンスらしい。嬉しそうな海外腹ペコたちを見ていると、なんかジ〜ンとなるな。

ただしこれ、日本在住者は参加不可。せっかくロンドンまで来ているのに、ちょっとかわいそうなんじゃない? という気もしたので、会場の日本人ファンに意見を求めてみた。すると意外にも「それは当然だ」という答えが大多数を占めたのは驚きである。

聞けば日本でも時おり、メンバーと触れ合えるイベントなどが実施されているのだそうな。「今日は海外の腹ペコが主役だから」と、至極マトモな発言を繰り返すジャパニーズ腹ペコたち。ホルモン界隈の治安のよさを感じてホッとした。きっと彼らなら、ホルモン食わず嫌いの私がここにいることも許してくれるだろう。

しつこいようだが、私はマキシマム ザ ホルモンのことを何も知らない。知っているのは『恋のメガラバ 〜ミズキちゃんVer.〜 』だけだ。読者の中には「なんでそんな奴がホルモンの取材しとんねん」というご意見をお持ちの方も当然おられるかと思う。

だがしかし……考えてもみてほしい。この日の会場には、会場全体としては多くはないが、数十人の日本人がいた。みな今日のために日本から参戦した猛者中の猛者だ。ってことは、だ。 “ホルモンのこと何も知らない状態でライブを見る日本人” って、この会場で私1人なのではないか? 言い換えれば私は真っさらな気持ちでステージと向き合える唯一無二の絶対的存在……。

あとみんな、私のこと会社の金で来たと思ってるかも知れないけど、コレ100%自費だからね? 素人なりに私、覚悟キメて来てんだから。ってことで、ここからは素人である私の完全な主観でレポートを進めさせていただく。私がハマれば本物や……いくぞ。


・ロンドン公演、始まってしまう

そして開演15分前の午後8時。会場内は……


ギュウギュウのパンッパンである!


今の日本ではまず、これほど遅い時間の開演があり得ない。そもそもノーマスクが絶対にあり得ないし、あまり神経質じゃない私ですら瞬間的に「いいんスか、コレ?」って思っちゃうほど客同士の距離が近い。いいんスか、コレ?

……とか考えてるうち、約30分押しで唐突にライブが始まった! この大歓声も今の日本じゃあり得ねぇ!!! ちなみに私はホルモンの楽曲をほぼ知らないが、事前に「この曲が始まったら気をつけたほうがいい」というリストを日本の腹ペコさんにもらい、頭に叩き込んでおいた。

なんでも海外の腹ペコは “ある楽曲が始まると異様な盛り上がりをみせる”らしいのだが……あっヤバイ、マジで始まる! 何度も言うけど専門的な話は一切できないので、ここからは ”ライブ中の私の状態“ を時系列で記させていただくとしよう! それではどうぞ!


1曲目:開始と同時に後方からマンモス級の押し上げ。下手後方に居たはずが、気づけば前から2列目に。

2曲目:ゲ!!! ウソでしょ!? なぜか服を脱ぎ始める周囲の男性たち。みな汗でベチョベチョ。全く嬉しくない。

3曲目:ゲゲッ!!!!! これ例の「気をつけたほうがいい曲」やん!!!  はよ逃げな……あぁっ! 時すでに遅し。上から人が降ってきてよろける私。周囲の方が支えてくれました。ありがとう。

4曲目:半裸の黒人男性に抱かれた状態のままモミクチャになる私。序盤でありながら、もはや事後。

5曲目:2メートル級の大男に挟まれ、ついに視界ゼロへ。

6曲目:相変わらず半裸の黒人男性に抱かれているのだが、彼はずっとカタコト日本語で「ナヲチャ〜ン! アイシテェ〜ル!」と叫んでいる。複雑な気持ちだ。

7曲目:ついにガチ転倒。女の子に救助される。ありがとう。

8曲目:生まれて初めて素で「ギェーッ」って声出た。ここへきてようやく、初心者にしては前方へ来すぎたことが判明。

9曲目:スキをみて後方へ脱出! 助かった〜!

10曲目:だが、それがいけなかった。

11曲目:後方には鳴門海峡より巨大な “人の渦” が出現していたのだ。(※ サークルモッシュと呼ばれるもの。コロナ以前は日本のライブハウスやフェスでも一般的に見られた)

12曲目:渦に巻き込まれ再び転倒。今度のはマジでヤバい。「日本人女性ライター、ロンドンで圧死」という新聞の見出しが脳裏をよぎる……しかし周囲の皆さんが即座に異変に気づき、光の速さで救助してくださいました。本当にありがとうございます。

13曲目:後方ではなく左右に避難すればいいことが判明。

14曲目:ここへきて私はようやく、ステージ全体を見渡すことができたのでした! さっきは「よもや圧死か」なんて焦ったけど、ここからだと気を使い合って楽しんでいる感じがよく見えるな。みんな本当はいい人たちなんだよねぇ〜! ほっこり〜!

15曲目:……とか思ってたら次の曲がラスト!? ヤダーーーーッ!!!


・正直に話そう

……ふぅ。以上が “ロンドン公演で私の身に何が起きたか” である。嘘を言っても仕方がないので正直に申し上げると、私は今回「曲がめっちゃ良かった」「かっこよかった」という類の感想は抱かなかった。てか、そんな余裕はなかった。自分の身を守るので精一杯だったからだ。

だがしかし。これほど多くの人たちが互いの汗をTシャツに吸わせ、国籍も超えて一体となっている。語彙ゼロで申し訳ないが、純粋に「超スゲェな」と思った。例えるなら太陽みたいな巨大エネルギーがあって、今はヤケドしそうで怖いけど、いつかは中に入ってみたい……みたいな気持ち。

普通に考えれば太陽はステージのはずなのだが、この日に関しては不思議と「会場の中心は客席」って気がした。ちなみに転倒していたのは会場内で私1人であり、慣れればもっと安全な立ち回りができるだろう。曲名は1つも覚えちゃいないが、帰国してDVDでも見れば済むことだ。いやぁ……語彙ゼロだけど超スゴかった!

でもって……なんとこの日、最後の曲はあの『恋のメガラバ』だったのであるッ!!! この時ばかりはさすがの私も再び鳴門海峡へダイブ! たぶんホルモンたち、全部知ってたんやな。完全にワシへのサプライズや、コレは。

おかげで15年越しのアレルギーは一瞬で完治。『恋のメガラバ』は私にとって最高の思い出ソングと生まれ変わったのであった。本当にありがとうございました。


……と、ここで終わらないのが海外ツアー。ワタクシなんとなんと! 楽屋訪問させていただいちゃったんだぞ〜!!! たぶんこれ「ホルモンを好きになってからご本人と話すまで」の世界最速タイムじゃないかな? ドッキドキの楽屋訪問は次のページへGO!

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.