「1円を笑う者は1円に泣く」なんてことをよく申しますが、1円玉が10万枚もあって、しかもその中から希少な「プレミア硬貨」を探すなんていう話になったら、そらぁ泣きたくもなりまさぁな。するってぇと何かい? 10万枚全部チェックするのかい? 頭沸いてんのかい?

しかし、そんな悪夢みたいなことを本気で言い出すのが当サイトのボス・Yoshioという男なのだ。なんでも10万枚の中から発行枚数が少ない(希少価値の高い)年の1円玉をピックアップし、コイン鑑定士に見てもらうのだという。さあ、果たしてプレミア硬貨は出てくるのか? 検証スタート!

・10万枚の1円玉

今から数年前、とある記事で10万円分の紙幣をすべて1円玉にしたことがあるのだが、覚えている人はいるだろうか? Yoshioが銀行で硬貨に全額両替してもらい、それをお年玉として編集部スタッフに配るという無能な前澤友作の如き企画である。

しかし結局、1円玉は誰にも使われず編集部の片隅に放置されることに。私(あひるねこ)もしばらくその存在を忘れていたのだが……。ある日、これを発見したYoshioがニコニコしながら私に話しかけてきた。


Yoshio「ねえねえ! あひ……」


──嫌です。


Yoshio「ちょっと、まだ何も言……」


──嫌です。


Yoshio「ええ~? 一応オレ上司な……」


──嫌です。


Yoshio「…………」


──嫌です。



──失せろ。


Yoshioはしばらく会社に来なかった。う~む、一番エライ人に向かって「失せろ」はさすがにマズかったか。せめて「お消えください」だったなと反省していると、Yoshioから私宛てに画像データが届いていることに気付く。開いてみたところ……


え?


いや……何だよこれ。そこにはYoshioと、その家族や親戚? と思われる人たちが、大量の1円玉を囲んでいる姿が写っている。そう、Yoshioは1円玉10万枚の中から希少なプレミア硬貨を探し出すべく、一族総出で仕分け作業に取り掛かっていたのだ。

・発行年で仕分け

マ、マジかよあのメガネ。ついに身内まで巻き込むとは……。Yoshioは造幣局が公開している年銘別貨幣製造枚数という資料を参考に、発行枚数が少ない以下の年代の1円玉を10万枚の中からピックアップ。それらをまず一つの箱に集めた。


「昭和30年(1955年)、昭和31年(1956年)、昭和32年(1957年)、昭和33年(1958年)、昭和34年(1959年)、昭和35年(1960年)、昭和36(1961年)、昭和37年(1962年)、昭和38年(1963年)、昭和41年(1966年)、昭和42年(1967年)、昭和44年(1969年)、昭和61年(1986年)、昭和64年(1989年)」

「平成10年(1998年)、平成11年(1999年)、平成12年(2000年)、平成13年(2001年)、平成14年(2002年)、平成15年(2003年)、平成16年(2004年)、平成17年(2005年)、平成18年(2006年)、平成19年(2007年)、平成20年(2008年)、平成21年(2009年)、平成22年(2010年)、平成23(2011年)、平成24年(2012年)、平成25年(2013年)、平成26年(2014年)、平成27年(2015年)、平成28年(2016年)、平成29年(2017年)」


発行枚数が極端に少ない平成23、24、25、28、29年の1円玉については、残念ながら1枚も発見できなかったとのこと。これらの作業は主にYoshioの甥っ子2名が行い、すべての仕分けを終えるのに約1カ月半もかかったそうである。長ッッ!

Yoshioは二人にアルバイト代を支払っていたというが……それにしても10万枚だぞ、10万枚。指が銀色になるまで1円玉を分け続けるとか苦行すぎるだろ。頭のおかしな叔父を持ってしまった甥っ子たちには同情を禁じ得ない。

箱に集められた1円玉はその後、年代別にさらに細かく仕分けられた。さあ刮目せよ、若者二人の貴重な青春時代を奪って成し遂げた成果が……


これだ!!!

・準備完了

ピックアップされた1円玉は発行年代別にクリアケースに分けられ……


入りきならかった硬貨は空の段ボールに移されることに。


いやぁ……よくやったよ。おや? Yoshioさん、この「エラーコイン?」と書かれた箱は何ですか?

エラーコインとは、要は製造過程中のエラーによって生まれた不良品のことである。通常の1円玉と比較してみると、たしかに「1」を囲む円が二重になっているように見えるが……。希少価値が高いというエラーコイン。もしかしたらこの中にもプレミア硬貨があるかもしれない。

Yoshio「でしょ~? 聞いた話だと、1円玉1枚が3000円になることもあるらしいよ。もし全体の0.1%に当たる100枚が3000円になったとしたら、10万円が合計で39万9900円に化けることになるんだ! 約4倍ってすごくない!? ネコチャンあるよ、ネコチャン!!」


──それを言うならワンチャンでしょ。


Yoshio「そうだった、グヘヘ~」

ちなみに上のやり取りは私が勝手に創作した完全架空のものだが、Yoshioの人となりを分かりやすく表現するためそのまま掲載しておく。さて、それでは本当にこの中にプレミア硬貨があるかどうか、プロに見てもらうとしよう。

・鑑定を依頼

私とYoshioがやって来たのは、切手やコインの売買・鑑定・評価等を行う「新橋スタンプ商会」だ。

鑑定してくれるのは、コイン鑑定士の寺田実さん。テレビ等にも数多く出演するベテランコインガチ勢である。

果たしてプレミア硬貨は出現するのだろうか!? Yoshioの一獲千金の夢は!? 甥っ子たちの苦労は報われるのか!? 頼む! ネコチャンあってくれェェェェエエエエ!! 緊張の結果発表は次ページへGO!

取材協力:新橋スタンプ商会
参考リンク:造幣局「年銘別貨幣製造枚数」(PDF)
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.
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