いつも一緒に世界を旅していた俺の相棒・ノースフェイスのテルス45(リュック)を押し入れにしまって1年半。ようやく日本でも新型コロナワクチンの接種が進み始め、割と近いうちに再び相棒の出番が来るかもしれない。今のうちにファブリーズを「シュッ」しといてやるか!

久々に広げた相棒の中には1年半前の荷物が残っていた。またすぐに旅立つつもりで、そのままにしていたんだなァ……しみじみ……とかやってたら、底のほうに謎の小袋を発見。銀色の怪しいブツからネチャネチャと汚い汁が染み出しているぞ。コレ……何だっけ!?

・そういえばあの日

一瞬「海外で何者かに危険ドラッグ的なものを持たされた可能性」を想像し震えたのだが、記憶の糸を辿ること1分……そうか、思い出したぞ!


これは「インドの座薬」だ!


思い起こせば1年半前、インドで食中毒にかかった私は薬局へ駆け込み、息も絶え絶えに「Glycerin enema(グリセリン・エネマ)をくれ!」と叫んだのである。enemaとは浣腸のこと。実は私は外国でお腹を壊すたび、浣腸を求めて薬局へ出向いている。

別に浣腸をしたからといって食あたりが治るわけではないのだが、なんとなく「悪いものを排出せねば」という気持ちが働くのだ。インドの食中毒(鶏肉が原因)は10日ほども続き、私は人生の終わりを意識するほど苦しんだ。外国での食事は計画的に!


・世界の浣腸事情

ちなみに私がこれまで、のべ5カ国以上の薬局で「浣腸をくれ」と叫んだ結果、イチジク浣腸に代表される「液体の浣腸」を出されたことは一度もない。

ただし意味は通じているようなので、もしかすると諸外国では日本ほど液体の浣腸がメジャーではないのかもしれない。私の経験ではグリセリンを用いた「suppository(座薬)」を手渡される場合がほとんど。こちらの画像はタイの首都バンコクで購入した座薬だ。

密封されたプラスチック容器に入れられて、いかにも清潔そうな雰囲気が漂う。おかげでこの時は腹具合も、精神的にもかなりラクになった。やっぱ困った時にはGlycerin suppositoryやな。

いっぽうインドで座薬を購入したのは観光地として知られる都市ジョードプル。都会すぎず田舎すぎない、日本でいうと奈良みたいなところである。中心部の薬局で「Glycerin enemaをくれ!」と叫んだ私に対し、古びたボトルを取り出す薬局の親父。


そして……



おもむろに素手で薬を取り出したーーーーっ!!!!!!


・インドの座薬事情

薬にメーカーや薬品名などは一切記されていない。いちおう銀紙で包まれているものの、細工しようと思えば誰にでも簡単にできてしまう保管状況である。

ってか、よく見たら……

モノによっては完全に中身が剥き出しになっているな。個体ごとに微妙にサイズが違い、機械で生産されたとは考えづらいデコボコ感だ。なんなら薬局の親父が自分で調合した可能性も大いにありえる。

正確な価格は忘れてしまったが、「夕飯が食べられるくらい高い」と思った記憶があるから、たぶん1錠100ルピー(約152円)くらいだったはず。ただし私は日本人旅行者丸出しなうえ、当時は切羽詰まった雰囲気を醸し出していた。ボラれていた可能性も高い。


で、この怪しげな座薬を私がどうしたかと言うと……



一瞬の迷いもなく我が尻の穴に挿入した。


・あの感覚アゲイン

「インドの病気はインドの薬でしか治らない」という話をインド人に教わったことがある。そういえば中国人も「中国の病気は中国の薬でしか」と同じことを言っていた気がするが、ともかくインドの座薬のおかげで私は無事インド旅を続けることができた。

ちなみにリュックから出てきた座薬の残りは、キモかったので迷わず捨てた。今思うとあんな得体の知れないものをよく体内に入れたものだと、我ながらゾッとする思いだ。

しかし海外旅行中って、不思議と「これはなんとなく大丈夫そう」「これはアウトっぽい」というギリギリの勘が働くものだと思う。しばらく日本にいるので勘はすっかり鈍ってしまっているが、いつかまた海外でお腹を壊した時は迷わず座薬を買いに行きたい。

(※ 本記事の画像は2019年12月のインドの様子です)

執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼インドでは食品や生活雑貨、タバコなども1本ずつ「バラ売り」されることが全然普通