絶叫マシン顔負けの3連ループだったり、LEDで光ったり、思わず「おい!」といいたくなる奇抜な「流しそうめん器」を生み出してきたタカラトミーアーツ。しかしこのご時世、みんなで箸をつける流しそうめんには、ちょっと抵抗があるんじゃないだろうか。

そんな思いを知ってか知らずか、同社の次なる挑戦は “流しそうめんの最小化” だという。「技術が許す限り小さくしてみよう」と、ポケットに収まる極小サイズをリリース。しかも特許出願中だというガチっぷり。

そんな熱いチャレンジを目にしたら、受けて立つのがライターというもの! 人生初の流しそうめん、ソロでやってみた。


・流しそうめんPocket(ホワイト・ブラック)税込2970円

開けてみてびっくり、本当に手のひらにのるサイズだ。ぱっと見はプラスチックのコップかなにかのようである。軽いし、通勤カバンに入れてもまったく違和感がない。

使い方は手軽で簡単だ。本体はモーターパーツ、そばちょこ、薬味入れに3分割できる。モーターパーツにはあらかじめ単3電池を入れておく。


まずは野外炊飯できるところへ行く。バーベキュー場とかキャンプ場とか、過去記事にも書いたように芋煮文化があるところでは、「芋煮広場」「なべっこ広場」などと呼ばれる公共施設もあるな。とにかく火を使えるところへ。


そうめんを用意する。今回は奮発して揖保乃糸にしてみた。いわずと知れたブランドそうめんである。


カセットコンロと鍋をセットしたら、麺をゆでる。


炊事場でゆで汁を捨て、流水で締める。土壌に影響するから、ゆで汁をその辺に捨てちゃダメだぞ。


十分な水流が生まれるよう、直径16cm以上の容器を用意して、本体をセットする。おそらくボウルのような、安定感のある丸い器がよい。


冷水を注ぐ。野良仕事の最中に渓流で冷やしたのが起源だというから、昔はさぞ冷たかったことだろう。先日レビューした重量級の大型水筒「氷点下ボトル」が役に立った。


家から持参した「めんつゆ」と、薬味をセットする。


……

……

……


────すまない。薄々気づいていたが、ここまできたら認めざるを得ない。まったく簡単じゃなかった。

本体がコンパクトでも、調理のための鍋、ザル、ボウル、熱源などが必要なことは盲点だ。大荷物になってしまう上、水道設備も必要。いまさらだが、家でゆでてくるべきだ。


なにはともあれ用意はできた。気を取り直して、スイッチオーン!


おぉぉ回ったー! 涼しげ!!


右利きの人が取りやすい左回り、左利きの人が取りやすい右回りの切り替えつき。これぞユニバーサルデザイン! 筆者は右利きなので左回り。


とはいえ、しょせんは同じルートをグルグルしているだけである。待ち伏せをしていれば、おのずから箸に飛び込んでくる。

ちょっとせき止めてやれば、入れ食い状態である! 難なく食べられる。初体験だが、流しそうめん恐るるに足らず!!

うむ、旨い! すすぎが足りず水が白濁してしまったが、野外で食べると、よりいっそう美味しく感じられる。

水筒でもってきた水は十分に冷たく、春の日射しは暑いくらいに輝いている。しばらく外出していなかったので、風に吹かれるだけで気分爽快である。最高だよ、タカラトミーさん!



……ところで、よく考えたら筆者は人生で1度も流しそうめんを食べたことがなく、見学したことすらない。コロナ禍だからではなく、学校行事でも町内会でも聞いたことがないのだ。

もちろん知識としては知っているし、竹筒の絵面(えづら)も想像できる。しかし「これをやんなきゃ夏じゃないよね☆」という郷愁は決してわかない。

それもそのはず、流しそうめんや、そうめん流し(この2つは別物らしい)の発祥は九州だというじゃないか。生まれも育ちも北日本の筆者は馴染みがなくて当然。ちなみに今回のように円形の容器で人工的に流すものは「そうめん流し」だそう。


ふと疑念がわく。


こんな初心者がシロウト考えで恐縮だが……流しそうめんって、そもそもみんなでワイワイやるものなんじゃないだろうか。

「取れなかった~!」「そっちそっち~!」などとキャッキャするために流すんじゃないのか?

1人で食べるのにボウルでぐるぐる回したからって、より美味しくなるとか冷えるとか、合理的な理由があるとは思えない。

なんだろう、この気持ち……


よく考えたら


別に流さなくても……


そのまま食べればいいんじゃ……


・筆者が間違っているのかも

いやいや、筆者が知らないだけで、副次的な効果がなにかあるのかもしれない。実際、ちょっと楽しかったし。

本場では1家に1台「流しそうめん器」があり、ソロでやるのもごく一般的という可能性もある。我こそは流しそうめんフリーク、という方がいればぜひ筆者の間違いを正して欲しい。


なんといったって

──9年間にわたり「そうめんをいかに楽しく食べるか」というテーマと向き合ってきたタカラトミーアーツが提案する、もう一つの流しそうめんの形(同社のことば)

なのだから。


参考リンク:タカラトミーアーツ
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
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