ポルトガル第2の都市『ポルト』に “ハリー・ポッターゆかりの地” がある、という件は以前の記事でお伝えした。おまけにこの街は、なんと映画『魔女の宅急便』のモデルになったとも噂されているのである。どちらも魔法使いモノとは偶然か、あるいは必然なのだろうか。
実は『魔女の宅急便』のモデルと噂される場所は、世界各地にいくつか存在している。 “赤い屋根が続く小高い街を河川が横切る” という印象的な風景に、似ている場所が複数あるらしい。しかしその中でもポルトは、他の候補地を一歩リードする強みを持っているのだ。
なんと宮崎駿監督は、映画製作前しばらくポルトに滞在していたらしいのである! ……まぁ、だからといって「どこが正解」と公表されているわけではない。けど『魔女の宅急便』に影響を与えた可能性が高い街、というだけで十分スゴイ。……で、どれくらい似てるのかな?
・南から北へ
ポルト中心部を流れる『ドゥエロ川』沿いから反対側を見る景色。それこそが最も「魔女の宅急便っぽい」と言われるポイントだ。私の調査によると『ドン・ルイス1世橋』を境に「南側から北側」を眺めた景色がかなりイイ線いっている。
もう一度言おう。「南から北」だぞ!
ドゥエロ川の南サイドは古き趣の残る旧市街だ。人通りは少なくどこか寂しげではあるが、もしも住むなら私は絶対こっち側!
静かな坂道を下っていくと、カーブの向こうに「もしや……」という景色の片鱗が見えてくる。
ドゥエロ川が近づくにつれ期待は確信へと変わってゆき……
ついにデターーーーーーッ!!!!!
青い空、青い川、赤い屋根…………まさに、まさにキキの街!
そういえばキキが言っていた。「魔女は血で飛ぶ」のだと。私の体内にもしも魔女の血が流れているとしたならば、今なら飛べるんじゃないだろうか? ……美しすぎる街並みを眺めていると、そんな気すらしてくるのだ。
この様子だと”デッキブラシを持ったおじさん” もどこかにいそうな気がする〜!
・私、この街が好きです
どこまでも続く赤屋根の家は、どこもかしこも「いかにもキキが住んでいそう」だ。イイよ……この街すごくイイ!
屋根の上では猫がひなたぼっこなどをしており、思わず仕込みを疑ってしまう。
美しい街並みに見とれる観光客が多数。
あっ! 頭上にはロープウェイ!
ロープウェイから見えるのは、ホウキに乗って見る景色とほぼ同じに違いない。最高の撮影ポイント見つけたり! あとで乗ろうっと!!
・とんだ落とし穴
ドン・ルイス1世橋は2階建て構造の様子。下ルートは歩道と車道、上ルートは歩道と線路だ。橋そのものもアーチ状で非常に美しい。
最高の景色を見たいなら、どう考えたって上ルートをチョイスすべきだろう。
急な坂道を登るのもまた楽しいのだ。
全長400メートルにもなる上ルートには、下よりもかなり強い風が吹いていた。この強風の中を飛ぶ魔法のホウキってのは、ああ見えてなかなか安定感があるのだな。よ〜し、カメラを構えていざ出発だ!
地面「ベコン」
……んっ?
私「…………!」
・震え、発汗、目まい
自分の立つ足元を見て、私は全身から一気に血の気が引くのを感じた。橋の高さが100メートル近いことは分かっていたが……仮にも鉄道の走る橋の素材が、まさか「薄そうな鉄板」だなどとは思ってもみなかったのである。
おまけに鉄板同士の間には大きめの隙間があり、真下の景色が見下ろせるだと……!
いや、もちろん過去に1度とて崩落していないドン・ルイス1世橋。どんなに重い人間が何人乗ろうが、絶対に大丈夫であることは承知している。そもそも電車が同時に2本も走っているのだ。ポルトガル人が “無類のスリル好き” だという話も聞いたことがないし、これが超頑丈な鉄板だということに疑いの余地はない。
だが……ここで問題になるのは私が大の高所恐怖症であるということ。高所恐怖症の人間にとって、「実際に落ちるかどうか」は問題ではない。「落ちるんじゃないか」と一瞬でも思ってしまえば、それでジ・エンドなのである。
あれほど輝いて見えた橋からの景色は、今や恐怖の光景と化した。勇気を出して5歩ほど進んでみたものの、足が震えて後戻りすら困難なありさま。橋の手すりは腰ほどの位置までしかない……万一何者かに押された場合、一体どうればいいというのか?
しかもメッチャ近くを電車が通っていくじゃねぇか……!
・忘れていた大切なこと
もと来た坂を急いで下り、地上に戻った私は心から安堵した。仮に魔女の血が流れていたとして、おそらく私に空を飛ぶことは叶わないのだろう。だが、それでいい。それでいいのだと、下ルートを歩きながらしみじみと思った。
ちなみに帰り道、一応逆サイドからも上ルートにチャレンジしてみたが結果は同じ。
ロープウェイに乗る前に気づけて本当に命拾いした。
・街のいたるところに
川を越えポルトの中心地を歩いていると、そこかしこに「キキの街っぽさ」を見つけることができる。
広場の時計台、ショーウィンドウ、街角のパラソル、異様に数の多いカモメたち……。「聖地」などはなくとも、ここへ来れば「街そのものが映画の世界観を醸し出している」のだと分かるはずである。
西ヨーロッパエリアでは比較的物価も安いといわれるポルトガル。旅行で行くならポルトが絶対にオススメだ。どうか一度行ってみてほしい。そして願わくば私の代わりに、ドン・ルイス1世橋とロープウェイから見える景色を拝んできてくれっ……!
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
▼この街のカモメの多さは異常
▼全然逃げない
▼君の名は……!
▼パン屋は多いが『グーチョキパン店』のようにショーケースが正面を向いているスタイルはほとんどなかった
▼こんなシーンあったような……?
▼こんなシーンもあったような……?
▼はたまたこんなシーンも……?
▼こんなシーンはなかったかもしれない……?
▼「北から南」を見るのももちろん素敵だぞ!
▼電車で橋を越えてみたけどやっぱり怖かった
▼なんと「魔法グッズ」を扱う店もあるぜ!