言わずと知れた『ハリー・ポッター』シリーズのファンにとって “聖地” といえる場所が、ポルトガル第2の都市・ポルトにある。『レロ・イ・イルマオン』通称『レロ書店』だ。
原作者のJ・K・ローリングが以前この書店の近くに住んでいたという背景があり、世界観の着想を得たのではないか? と噂されているのである。しかしまぁハリー・ポッターの件はおそらく、書店側からすれば「どっちゃでもええわ」ってなもんであろう。なぜなら……
レロ書店は「世界一美しい書店」とも言われており、おまけに世界遺産に登録されているのだ。もう一度言おう…… “現役の書店が世界遺産” だぞ。日本人には想像しづらいが世界遺産はスゲェ。よってハリー・ポッターのモデルだろうが違おうが「レロ書店がスゴイ」ことは確定事項なのである。
・入場料がいる書店
さっそく入店しようとすると「あっちでチケットを買ってきて」と言われた。50メートルほど離れたチケットセンターには長蛇の列ができている。
チケット代は5ユーロ(約604円)。世界遺産だと思えば安い。しかし現役の書店へ入るのにお金がいるってのも妙な話だ。
パッと見はケーキ屋っぽいレロ書店の前にも行列である。平日の昼間でこれだから、休日は大変なことになっているのだろう。おとなしく並ぶこと10分。中へ入ると……キャッ!
なんかスゲェェェェェェェ!!!!
あと人混みもスゲェ……!
・創業150年
建物の真ん中にはひときわ印象的な階段があり、確かに今にも魔法使いが降りてきそうである。
隣のご婦人が「ビューティフォッ……!」と絶句しておられた。
実用性とコストを考えたら絶対にやらないであろう、複雑な建築様式と豪華な装飾。
吹き抜けから天井のステンドグラスが覗けるさまは圧巻である。
よく見ると隅っこや見えないところにも様々な細工が施してあり、これはJ・K・ローリングでなくとも創作意欲をかき立てられるのがよく分かる。
・果てしない美意識
レロ書店がどういったコンセプトで作られたのかは不明だが、もしかすると創業者は商売をする気がそんなになかったのではあるまいか?
だって……本を置くスペースより装飾部分のほうが多いんだもん……!
店頭に大量陳列されているのは『星の王子さま』や『不思議の国のアリス』など。誰もが知るオシャレ文学作品ではあるが、 “今の売れ筋” かといえば……絶対に違うやつばかりだ。
しかし私はこの書店に、ビジネスや芸能ゴシップ本を置いてほしくない。そして、あえて今『星の王子さま』を購入したいと思う。ここを訪れる誰もが、きっと似たような気持ちになるはずだ。そういう意味でこのラインナップは妥当であると言える。
それにしてもただでさえ高い天井ギリギリまで本棚が続いており、一番上の本は4メートルくらいの高さにある。これ売る気ないだろ? と思ったら……
本当に売る気はないようで、よく見たら本には人面の石膏像がくっついていました。魔法でしゃべり出しそうだ!
・ハリポタ兄さん
書店の一番奥にひどく混み合っている小部屋がある。そこは『ハリー・ポッタールーム』となっていた。
中は壁一面にハリー・ポッター関連の本。それからホウキにトンガリ帽子、ロウソクなどが置かれ、ハリー・ポッターの世界観を演出している。
あくまでも原作者は “この書店でインスピレーションを受けた可能性がある” のであって、レロ書店とハリー・ポッターの公式な関係性は無い。もちろん店内のどこを見てもそういった表記はない。しかしレロ書店がハリー・ポッターを激推しすることや、スタッフの服装がどこかハリー・ポッターの登場人物っぽいことは、書店側の自由だ。
中でもひときわハリー・ポッター風のスタッフが、たいして乱れてもいないハリー・ポッターコーナーの本を、いつまでもいつまでも整頓し続けている。他のコーナーは忙しそうだけど、いいのだろうか? ……ハロー?
ワッ! よく見ると顔もハリー・ポッター、あるいはダニエル・ラドクリフ君にどことなく似ている! 髪型や丸メガネまでそっくり……
……ってオオオォォォイ!!!! 額の傷跡までソックリじゃねぇか! とんでもない逸材がここのスタッフに応募してきたのも、魔法の力のなせる技なのかもしれないなァ。
・入場料は妥当
「実用性より美しさ」に重きを置く、古き良きヨーロッパスタイルは見ていて清々しいものがある。ここは書店でありながら、見せたいものは本より「書店自体」。5ユーロ取ってもこの大混雑なのだから、考えてみれば普通の書店営業などできるわけがない。まったく、美しすぎるってのも困りものだワ。
「黙っていたって世界遺産」のレロ書店が、ハリー・ポッターの世界に若干「寄せて」くれていることは、サービス精神以外の何ものでもない。ファンはありがたく享受し、魔法の世界を垣間見にポルトガルへ行こう!
・今回ご紹介した施設の詳細データ
施設名 Livraria Lello e Irmão
住所 R. das Carmelitas 144, 4050-161 Porto, ポルトガル
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
▼チケットセンターは分かりにくいのでスタッフにちゃんと聞こう
▼立入禁止の地下室に何か秘密が……?
▼貴重なハリポタ本も展示されていました
▼こんなに分厚いのは京極夏彦の文庫本以来
▼男性スタッフはコートか革製のチョッキ(?)を着用