息をのむ審査員、巻き起こるスタンディングオベーション。その渦中であるピアノの前に座った22才の男性は子供のように無邪気に手を叩いている。まるで何が起こっているか分からないかのように──。

2019年5月28日にアメリカで放送されたオーディション番組『America’s Got Talent 2019』に出演した男性が話題になっている。透き通るような美声は鳥肌必至

・盲目で自閉症

その人物の名はコーディ・リー。彼は、母親に手を引かれて『America’s Got Talent 2019』のステージに登場する。審査員の質問に対して、名前や年齢などを答える彼。だがその受け答えはたどたどしい。母親のティナさんはコーディが盲目で自閉症であることを明かした後、次のように話す。

「かなり小さい頃から、コーディは音楽が大好きでした。音楽を聞くと、目をすごく見開く子だったんです。そしてコーディは歌を歌いはじめ、彼の歌は私の目に涙をもたらしました。その時にコーディは、エンターテイナーだと気づいたんです。

音楽のおかげで、彼はいろんな苦難を乗り越えてくることができました。自閉症だと、他の人たちができることができず大変な思いをすることが多々あります。でも音楽が彼の人生を救ったんです」

──そして、審査員が演奏をうながす。「準備は良い?」というティナさんの問いかけに「準備万端!」と子供のように答えるコーディ。ティナさんのサポートを受けながらピアノの前に座る。

・一変する雰囲気

マイクの位置を口で確認すると、ボロン……とピアノを引き出す彼。なんか雰囲気が変わった? と、その時

響き渡る伸びやかで透き通る歌声!! 天空にまで突き抜けるような声が空気を鳴らし、どこまでも広がっていくようだ。ウマイ……だが、それ以上に、なんだこの心の奥を揺さぶられるような響きは。鳥肌……!

・息をのむ会場

一瞬、別人なんじゃないだろうか? と疑ってしまうほどのギャップ。しかし、その心地いい声に驚くよりも先に涙が出そうになった。事実、息をのむ審査員たちの中には目に涙を浮かべながら聴き入っている人も。

やがて、演奏が終わると、客も審査員も総立ちのスタンディングオベーションに。その光景を見て、コーディ本人も手をパタパタと叩く。その表情は無邪気な子供のそれだ

・世界を変えた

会場にいる1人1人の心を鳴り響かせるようなこのパフォーマンスに、審査員の1人であるガブリエル・ユニオンは言葉を確かめるように話す。

「私は今年母親になったのですが、母親というのは何よりも大変な仕事であり、何よりもやりがいのある仕事だと思っています。母親は子どもに世界のありとあらゆる最高のものをあげたくなるものです。そして今夜、私から特別なものを贈らせてもらいたいと思います」

──そう言うと、ゴールデンブザーを押した。なお、ゴールデンブザーが押されると、その場で2次審査が免除され、準々決勝進出が決定する。各審査員および司会者が1シーズンにつき1度だけ使える特権のようなものだ。

最後、「あなたは世界を変えたのよ!」とハグするガブリエル・ユニオンに「Yeah!」と答えるコーディ。この先どういうパフォーマンスをするのかが非常に楽しみだ。神のいたずらのようなその才能は、ぜひご自身の目で耳で確認してみてくれ。

参照元:YouTube
執筆:中澤星児

▼コーディが演奏している1分半は時が止まったようになる