
若者のカリスマ・米津玄師さん。昨年の紅白歌合戦では、サザンオールスターズに次ぐ視聴率を記録するなど、もはや日本を代表するミュージシャンと言っても過言ではないだろう。
彼のような存在は、売れないバンドマンである私(中澤)にとって非常にまぶしいものだ。そんな米津玄師さんと対バンした時の話をしたい。
・対バンとは
売れないバンドたちがひしめくライブハウス。日々、ライブは行われているが、ワンマンでライブハウスを埋められるバンドなんて1ヵ月ひと組いたら良い方だ。ほとんどの日は、何組かが出演するイベントとなっており、この共演者を対バンと呼ぶ。
かれこれ12年ほどライブハウスシーンで活動している私。自主企画以外の対バンイベントはライブハウスがバンドをブッキングするため、知り合いではないバンドとの対バンが圧倒的に多い。2014年5月8日の渋谷O-Crest(現TSUTAYA O-Crest)もそんな日だった。
・いつもと違う雰囲気
対バンは、phonon、PURPLE HUMPTY、赤色のグリッター、℃フーズ、YANKEE。PURPLE HUMPTY とは大阪でライブをした際に対バンしたことがあった。赤色のグリッターは、当時バンドシーンで火がつき始めていたため、名前は聞いたことがある。逆に言うと知っているのはそれくらい。
リハに行くと、いつもの雰囲気となんか違う。ザワザワしているような気がするのだ。実際誰かが騒いでいるわけではないのだが、ライブハウス自体が胸騒ぎしているようである。
・ザワザワの正体
そのザワザワの正体が判明したのは、私のバンド「ソレカラ」のリハが終わって控室にいる時。ドラムの萩原が口を開いた。「なんか今日ネットで有名な人が出るらしいよ」と。萩原の友達がサポートをしており「よろしく」と言われたそうだ。
へー、どのバンドだろう? いずれにしても聞いたことがないバンドばかりだし多分音楽を聞いても分からないだろうな。
そうこうしているうちに、ほとんどのバンドのリハは終わり、残すはYANKEEのみになった。リハは本番の出順と逆に行われるためYANKEEはトップバッターだ。
・YANKEEのリハ
このバンドじゃないだろう。「YANKEE」ってバンド名もハードロックとかやりそうだし。やっぱり知らなかったな。そう思いながらボーッと控室でリハを聞いていると……
え? 米津玄師??
──隣で聞いていたベースの田畑君がそうつぶやいた。いやいや、米津玄師なわけないでしょ。この前なんかの雑誌で「天才」って書かれてたよ?
当時、米津玄師さんはすでに鳴り物入りでデビューし、メジャー2ndを出したところ。初めて顔出しした直後くらいだったと思う。私も名前だけは知っていた。
・ステージに立っていたのは
リハを見に行ってみたところ、ステージに立っていたのは前髪で目を隠すようなヘアスタイルの男性だったが、何せそれまでほとんど顔出しをしてなかったため本物かどうかが分からない。こんな髪型のバンドマン多いし。なぜ「YANKEE」というバンドなのかも謎である。
だが、リハが終わる頃には、渋谷O-Crestの受付に行列ができていた。開場前から行列なんて自分の出るライブであまり見たことがない私は思った。「これガチや……」と。
ライブは素晴らしかった。MCによると初ライブとのことだが、絡み合うリズムが立体的に攻めてくるような楽曲がそれを補って余りあるほどの才気を放っていたのである。邦楽の新しい扉が目の前で開いたような気がした。
・ステージ裏でのこと
4曲を演奏して早々とステージを去った米津さんにステージ裏で声をかけた。まず驚いたのは背がめちゃくちゃ高いこと。緊張して「凄く良かったです!」と何のひねりもない感想しか言えなかった私にはにかむような笑顔を返す米津さん。
でも、なぜ今日? なぜトップバッターなのか? 聞いてみたところ「代官山UNITでのワンマンライブが決まっていて、練習として覆面バンドで出演した」とのこと。
・後日談
後日、ライブで演奏していた『百鬼夜行』という曲がどうしても聞きたくなった私。その曲が収録されている2ndアルバムをタワレコで購入したところ、アルバムタイトルが『YANKEE』だった。
ちなみに、対バンのアルバムを後日タワレコで購入したのはこの1回だけである。それだけ私にとって米津玄師の音楽は衝撃だった。5年前だが、昨日のことのように思い出せる。今でもあなたはわたしの光。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼対バンしたバンドの「ソレカラ」がこちら
中澤星児


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