突然だが、あなたは10年以上続けていることって何かあるだろうか? プロミュージシャンを目指して上京した時、私(中澤)はこう思っていた。「10年やればさすがになんとかなるのではないか」と。だが、当時の自分に会えるなら言ってあげたい。15年やっても売れないぞ……

まあ、そう言われたところでやるだろう。なにせ、今でもバンドを続けているくらいなんだから。っていうか、売れるとか売れないとかもはやどうでもいいのである。と、そう思っていた矢先のことだ。地下アイドルの作詞の仕事が舞い込んで来たのは

・ヒロインズ

依頼をしてきたのは、ももいろクローバーZやHey! Say! JUMP、アニソンなども多数手掛ける作曲家のエンドウ.さんだ。以前の記事で、作詞をさせてもらったことはお伝えしたが、実はその後も作詞の依頼が来てコツコツ仕事しているのである。

ロケットニュース24で書き始める前、作家事務所からドロップアウトしている私。正直、ベタベタなアイドルソングは苦手だが、エンドウ.さんから頼まれる「ヒロインズ」と呼ばれるアイドルたちはちょっとだけ違うような気がする

・毒も棘もある

例えるなら、どこか居心地の悪さを感じている人たちへと向けたような。文句も言えば、愚痴も言う。毒も棘もある本音の音楽で、その突き刺すような存在感はアイドルというよりバンドっぽさを感じた。

思えば、私が音楽を聴き始めたのはイジメに遭ったことがキッカケである。学校に居場所がなさすぎて、もういっそ全部瓦礫になんないかなーという気持ちでLUNA SEAが描く世界に逃げ込んでいた。週刊少年マガジンの『ミュージシャン実録ストーリー LUNA SEA』でRYUICHIがハミッていたらしき描写にどれほど勇気づけられたことか

・ふと気づいた

ついつい、話が逸れてしまったが、思い返せば、バンドを始める前から売れていない私。作詞をさせてもらえるだけでもありがたい。というわけで、作詞活動を粛々と続けていたところ、ある日、エンドウ.さんから以下のような連絡が来た。

「作詞してもらった曲の「スティグマ」を歌うグループ『GILTYxGILTY(以下、ギルギル)』が6月28日にお披露目ライブをするそうです。もし良かったら見に行かれますか?」

──そう言われてふと気づいた。自分が作詞したグループのライブを見たことがないことに。作詞の仕事を受け始めたのがコロナ禍が始まってからだったためかもしれない。

・初めての地下アイドル

そして、気づいたらめちゃくちゃ見てみたくなってきた。そこで行ってみることに。日時は6月28日の17時オープン18時スタート。場所は……


渋谷の『Spotify O-EAST』

でっか! デビューからハコ、でっっっか!!! 私なんて15年やってきてそのステージに立てる気配を感じたことすらないぞ。こんなところワンマンで大丈夫なのか? 売れないバンドマン的には話を聞いただけでプレッシャーで眠れなくなりそうだが……


なんとオープン待ちの列ができていた


スゲェェェエエエ

自分のライブでこんな状態になったのは、米津玄師のバンドがお忍びで前座出演したイベントだけである。当時、どこからともなく嗅ぎつけて集まって来るファンの列を見て時代の風みたいなものを感じたが、本日並んでいる人の目にも同じ輝きが宿っているように見えた。尊い。ファンのファンになりそうだ

・初めて触れるムーブメント

客層は10代の女子が多い印象。病みメイクでゴス的なドレスアップをしている子などもいてシーンを感じた。一方で、男子はドルオタっぽい人も。ライブが始まると、後方のスペースではヲタ芸が始まる。初めて生でロマンス見た……!

前者と後者は全然違う人種に見えるのだが、ひょっとしたら違うのは表現方法だけなのかもしれない。そして、その想いと熱さが視覚化されるかのようにサイリウムがキラキラと場内を埋め尽くす。カオスに星が輝くように

だが、ステージはステージで星の光を押し流さんばかりの光の洪水。そんな光と光と轟音の中、バックスクリーンには歌詞が踊り狂うみたいに映し出されている。

・ヤバイ

ギルギルを依り代にして、ライブ会場全体が1つになるような雰囲気にただただ圧倒されていると、私が作詞した『スティグマ』の演奏が開始した。人で埋め尽くされたO-EASTのバックスクリーンに映し出される歌詞……


最高かよ……!

自分では届かなかったステージ。届かない理由はいっぱいあると思うけど、子供の頃から一貫しているのは「人を惹きつける魅力はない」ってことなんだろう。

思えば、ミュージシャンになったのは、そんな自分を変えたかったからだ。しかし、結果として変えられてはいない。悔しいけれど。そんな渦巻く想いも浄化するほどにギルギルのステージは魅力的でヤバイ油断すると泣きそうだ。これが地下アイドル……。

地下アイドルをちゃんと見たのも初めてだったのだが、私のどうしても変えられなかった部分がこの光になったのなら悪くない。この光景を刻め。この瞬間を刻め。刻め刻め刻め。


刻め生きてる証を この身に刻みつけて 空っぽ埋めてくの祈るように──。
(GILTYxGILTY『スティグマ』より引用)

なお、『スティグマ』は現在、デビューライブで披露されたのみで配信はされてない。しかしながら、ギルギルは今後、アイドルフェスの「RAD JAM」や「SEKIGAHARA IDOL WARS 2022」にも出演予定なのでどこかで出会うこともあるかも。願わくば、私のように世の中に居心地の悪さを感じてる人に届いてほしいと思う。

参考リンク:Twitter @GILTYxGILTYGILTYxGILTY
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]

▼ライブで聴いてて、良い曲だな~と思った『秘密の箱』。

[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]