
北京に行くと、そこら中で『豆汁(ドウジー)』というものが売られている。大衆食堂のスープ的メニューとか、観光地のお土産屋に積まれたドリンク型とか、バリエーションも豊富なので見慣れない観光客はひょっとしたら「喉乾いた」くらいの気持ちで買ってしまう人もいるかもしれない。
でもちょっと待って! その飲み物は覚悟が必要なヤツ!! 日本人的には豆乳を想起させるんだけど、豆汁は全く世界観が違う。中国人が「絶対飲むな」とまで言う代物なのだ。
・食べてみた結果
私(中澤)が豆汁の存在を知ったのは、中国本土で食べ歩くYouTubeチャンネル『ブッチ旅』の取材に同行した現地でのこと。北京に着いて1発目の朝食に入った大衆食堂で、ディレクターの北斗さんが豆汁をご馳走してくれたのである。
北斗さんによると、中国のYouTuberがチャレンジメニューにしたりもしている北京名物なんだとか。目の前に置かれた時点で、生臭さがふんわり漂ってくるんだけど、過去に世界一くさいと言われる「シュールストレミング」を食べている私は、「そこまでではない」と思った。
また、こういう臭いに癖のある食べ物って、口に入れたら癖に慣れて味はウマイというケースがある。北京名物だし、そもそも豆を発酵させた食品は日本にも多いため、全然イケるんじゃないか? スープをひと口飲んでみたところ……
目が覚めるくらいマズかった。
・強烈な酸っぱさと生臭さ
臭さはむしろ口に入れた後の方がキツイ。漂っていた生臭さが濃縮された臭いが鼻の奥にこびりつくのである。さらに味は、まろやかさとかじゃなくて、むしろ酸っぱい。
方向性的には、豆乳が酸っぱくなるまでたくわんの汁を入れて、そこに塩辛の汁で生臭さをプラスしたみたいな味だ。ただし、臭みや酸味は100倍。同じ豆でも豆乳だとか納豆だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……。
思わず、ポルナレフばりに怯えてしまった。そんなわけで私にとっては泣きそうになるほどキツイ味だったのだが、『ブッチ旅』のメインであるブッチさんは「好きかも」とガブガブ飲んでいたので、味覚は人それぞれである。
・中国人の評判
むしろ、あまりにブッチさんが「ウマイ」と言うので、私の味覚がおかしかったのかと思ったんだけど、その後Xに北京に来たことを投稿したところ、多くの中国人から「豆汁は絶対に飲むな」という注意喚起のコメントが寄せられた。
X民の中国人によると、北京民でも若者は飲まず、中国人でも飲める人は少数派なんだとか。中には「多くの若者が豆汁を妖魔化していますが、妖魔はそんなに怖いものではありません」というコメントも。
・豆汁食べ比べ
少なくとも私に合わないことはひと口で分かったんだけど、なにせ『ブッチ旅』の取材に同行している身。ブッチさんがウマイと言うなら、色んな店を飲み比べてみようぜって話になった。ここにまさかの豆汁評論家が爆誕したのである。
必然的に私も豆汁グルメを食べ歩くことに。また豆汁って、温かい豆汁から冷たいドリンク、コーヒータイプなど、グルメ展開が謎に豊富なのだ。
中国人の評判を聞いていると本当にこの展開の豊富さが謎なんだけど、「何も知らない外地の人が豆汁を飲んで苦しむ様子を見るのが北京民のエンタメの1つ」という声も。
・豆汁を食べ歩いた私の感想
確かに、私が豆汁を飲む時、周りに人が集まってきていた。店の人はもちろん通りすがりの人でさえみんなめっちゃ良い笑顔をしていたし、そういう意味では私は大分北京民を楽しませることができたに違いない。
とは言え、飲む度に鮮烈にマズさを塗り替え続ける豆汁の味。ブッチ豆汁評論家は「まろやか」とか「炭酸がある」とか言ってるけど、もはや違いとか分からん。ただただ辛い。そんな感じで6店舗を食べ歩いたところ、驚くべきことに私でもウマイと感じる豆汁グルメがたった1つだけあった。それが……
『尹三豆汁(インサンドウジー)』の豆汁ソフトクリームである。臭みや酸味がほとんどなく抹茶ソフトみたいなクリーミーな甘みが支配していた。食べた瞬間、一体何が起こったのかと逆に混乱するくらいに普通のソフトクリームの味がする。
豆汁ソフト全般がこういう味づくりかは責任が持てないが、『尹三豆汁』の豆汁ソフトクリームだけはまた食べてもいい。それほど口当たりが優しく食べやすかった。
・不可解な感情
たくわんが濃縮されたような香りもしないし、生臭さも猛烈な酸っぱさもない。そう、問題なくウマイ。だが、その豆汁ソフトクリームを食べれば食べるほど、ある不可解な感情がむくむくと自分の中に湧き上がってくるのを感じた。その感情とは……
「こんなキャッチーな味は豆汁じゃない」という気持ち。豆汁を飲みすぎたせいだろうか? 豆汁と聞くと、あの強烈なパンチを期待する体になってしまったのである。恐るべし、豆汁。
なお、『尹三豆汁』は、豆汁ながらミシュランにも選ばれている店。しかし、だからと言って豆汁が特別癖のない味ということではない。通常の豆汁も飲んでみたところ、豆汁らしさ全開のキツイ味でちゃんとマズかったからだ。クー! コレコレェェェエエエッ!!
その目が覚めるようなマズさがなくなるとなぜかちょっと寂しい豆汁。ウマイとかマズイ以上に可愛げを垣間見たのであった。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
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北京来たヨ pic.twitter.com/KrwkEXMVtt
— 中澤星児(ロケットニュース24) (@sorekara_jona) July 2, 2026
中澤星児



















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