
アスファルトタイヤを切りつけているといつも思い出すことがある。私(中澤)があるプロギタリストの付き人兼運転手をやっていた頃のワイルドでタフな出来事だ。
ギタリストを助手席に乗せて機材車のハイエースで飯能に向かっていたあの時。私はチープなスリルに身を任せていることにすら気づいていなかった。一歩間違っていたら、我々は心どころか体に消せない痛みを抱くことになったに違いない。分かりやすく言うと、マジ死ななくて良かった。
・窪田晴男
そのギタリストの名前は窪田晴男さん。ギタリスト、作曲家、音楽プロデューサーとして、1980年代から活躍する売れっ子ミュージシャンで、私が付き人をやっていた当時も椎名林檎さんのバックの仕事とかがあった。
Wikipediaによると、他にも、坂本龍一さん、井上陽水さん、矢野顕子さん、アニメ『王立宇宙軍 オネアミスの翼オリジナルサウンドトラック』とかも参加しているらしい。ちなみに、ちょっとマニアックになるが、FISHMANSの『King Master George』も窪田さんプロデュース。曲がりなりにも15年バンド活動をしてきた私のミュージシャンとしての視点で言うとマジでスゴイ人である。
・付き人になった経緯
ただし、当時私は20代前半の若造だったので、そんなに凄い人だということは全く知らなかった。ではなぜ付き人をすることになったのかと言うと、吉祥寺の山野楽器のメン募掲示板で募集されていたのである。上京したてで右も左も分からなかった私は、とりあえず金がもらえるという理由だけで応募して採用されたわけだ。
そんなスゴイ人が山野楽器のメン募で付き人募集してると思わないじゃん? というわけで、私は窪田さんにかなりフランクに接していた。飲み屋で窪田さんの初恋の人に会いに行こうと提案したこともある。完全にアホの所業だ。
・機材車にて
前置きが長くなったが、事件が起こったのはあるライブリハーサルのために機材車のハイエースで飯能に向かっていた時のこと。がたがたの道を走っていると、窪田さんが唐突にこう言ってきた。「なんか変な音しないか?」と。
窪田さんによると、タイヤから普段聞こえない音がするという。そこで注意を払ってみたが、普段聞こえない音がどれのことなのかよく分からない。窪田さんにどんな音か詳しく聞いてみたところ、タイヤの回転に合わせて等間隔で「カチカチ」した音が鳴っているとのこと。
・音の原因
言われてみるとそんな気もするが、なにぶん道も荒れているため、タイヤの異変か道によるものなのかが分からない。そこで1度路肩に停めてタイヤを見てみたところ、溝に丸い鉄クズのようなものがハマっていた。なるほどこれが原因か。
とは言え、タイヤの溝にちょっとついてるだけなのですぐ取れるだろ。それより今は遅刻しないことの方が大事な気がする。そう判断した私は、「なんか溝に鉄クズがハマってただけだった」と報告してそのまま飯能まで行き、リハが終わって再び飯能から都内の自宅に窪田さんを送り届け仕事を終えた。
・鉄クズを外してみると
翌日は休みだったので、ハイエースの管理を任されていた私はタイヤを改めて確認してみることに。駐車場に行きタイヤを見ると、鉄クズはまだハマッている。これはかなりガッツリ食い込んでるな。ちょっと指で引っ張っただけではビクともしない。
そこで機材車に積まれている工具で鉄クズの出っ張りを挟んで外そうと試みた。テコの原理も使って、思いっきり引っ張ったところ……やった! 外れた!!
と思った瞬間……
ブッシュゥゥゥーーーーーー!
タイヤから猛烈な勢いで空気が抜けていく! なんで!? 軽くパニックになりながら鉄クズとタイヤの間をよく見たところ、な、なんじゃこりゃああああ!?
鉄クズから棒のようなものが伸びてタイヤにぶっ刺さっている! 要するに、鉄クズだと思っていたものは釘のような形状をしていたのである。だが、5cmくらいは引っ張り出してるはずなのにその先端が見える気配がない。釘が長すぎる。全部抜き切ってしまうのがなんか怖い。
そこでもう1度刺し直したところ止まる空気の漏れ。状況が落ち着いたところでロードサービスを呼び、ことなきを得たのだった。
・よく音に気づいたな
しかし、こんな長い釘が刺さったまま東京~飯能間を往復したという事実が怖すぎる。一歩間違えば大事故になっていてもおかしくなかった。思いだす度に冷や汗が止まらない。それにしても窪田さんよく音に気づいたな。
「さすがプロミュージシャンだけあって耳が良いなあ」なんて思ったものだが、その時は想像だにしていなかった。約10年後にこれが衝撃に変わる事実が判明するなんて。
・衝撃の事実
その事実を知ったのは音楽雑誌「サウンド&レコーディング・マガジン」を読んだ時。誰が弾いたか謎だったTMネットワーク『Get Wild』オリジナルバージョンのギタリストを探す企画だったのだが、状況証拠や関係者の証言などから結論付けられた人物の名は窪田晴男。
『Get Wild』弾いてたなら早く言ってよ! とは言え、一時期スタジオ仕事が多すぎて、曲タイトルもよく知らないままスタジオに連れていかれギター弾いてたと言っていたから、その時の仕事なのかもしれない。しかし、それ以上に衝撃的だったのは……
『Get Wild』のギタリストがアスファルトタイヤを切りつける音に敏感だったこと──。
私では気づけないはずである。そして、そう考えて聞くと『Get Wild』のギタリストは窪田さんしかありえない。まさしく、パズルのピースがハマッたようなこの曲は間違いなく名曲と言えるだろう。
参照元:サウンド&レコーディング・マガジン、Wikipedia「窪田晴男」
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
中澤星児



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