【検証】「ディズニーがトラウマな男」と「ディズニーマニア」が一緒に東京ディズニーシーに行ったらこうなった(最終ページ)

・中澤の希望で「タートルトーク」へ

3つ目のアトラクションは、中澤が唯一「行ってみたい」とリクエストしていた「タートルトーク」である。個人的にはジェットコースター系のアトラクションにも乗りたかったが、中澤はいわゆる絶叫系がダメらしい。今回のコースはそんな中澤の特性をベースに田代が組み立てている。

さて、タートルトークは映画「ファインディング・ニモ」に登場した亀 “クラッシュ” が登場するアトラクションだ。観客からの質問にクラッシュが変幻自在の回答をするというが、果たして──。


中澤「タートルトークだけは来てみたかったんですよね。ネットでもよく話題になってるじゃないですか」

田代「よくご存じですね! そうなんです、クラッシュの切り返しは本当にスゴいんです!! ユーモアセンスは抜群だし、間の取り方も受け答えも素晴らしいものがあります。さすが100歳以上生きている亀ですよね☆」

サンジュン「僕も初めてなんですけど、観客と亀がしゃべるんですか? アドリブで? え? 機械が? それとも人間が?」

田代「サンジュンさん、クラッシュはクラッシュですよ☆ さあ、ショーが始まりますよ!」

サンジュン「めっちゃ華麗にスルーされた


初めてのタートルトークはというと……想像の20倍くらいおもしろかった。というか、すごかった。田代の言う通り、クラッシュのユーモアセンスは抜群で、常にこちらの予想を上回る切り返しの連続。クラッシュすげえ。ダテに100歳以上生きていない。


サンジュン「いやー! タートルトークすごかったね!! ちょっと感動したよ! せいじくんもコレは良かったでしょ!?」

中澤「これは……」

サンジュン「これは?」

中澤「これは良かった! ライブ感があった!! いやー、タートルトークだけずっと見てたいですね。いやー、すごいライブ感あったなー」

サンジュン「確かにライブ感あったわ。引き込まれた」

中澤「これなんですよ。観客とクラッシュが1つになってたというか。ネットとかですごいって聞いてましたけど、これは予想よりすごかった。ライブ感あったわー」

田代「せいじさんが喜んでくれてよかったです! 僕は数えきれないくらいタートルトークを観ていますが、クラッシュが観客の質問に対して同じ返しをしたことはありません。そこはまさしく、せいじさんの言うところのライブ感満載のアトラクションですね」



サンジュン「せいじくん、これは感動した?」

中澤「……しましたね。うん、感動しました」

サンジュン「うーん、そうじゃねーんだよなぁ。もっとパッションが欲しいのよ。泣くとかさ。なんとか泣けない? 田代さんみたいに」

中澤「いや、タートルトークで泣くのは無理でしょ。楽しいアトラクションだし

田代「自分もタートルトークで泣いたことはありませんね。感動はしますけど。でも、ディズニーのキャラクターと実際におしゃべりができるってことはスゴイことですよね。巧みな話術が注目されがちですが、キャラクターと会話できるってすごいことじゃないですか?」

サンジュン「言われてみれば」

中澤「たしかに」


タートルトークがズバッとハマり、入園以来もっとも楽しそうな中澤だが、彼はロックミュージシャンにして口数の少ない男。タートルトークを後にすると、いつもの中澤に戻ってしまった。かかり切らない……魔法にかかり切らないのだ。

だがしかし、そんな私の心配をヨソに田代に慌てる様子は見られない。私にそっと「大丈夫です、魔法にはまだかかっていなくても、せいじさんのイマジネーションは確実に刺激されているハズです」と耳打ちするではないか。ここまで来たらディズニーマニアを信じるしかない。

・そして起きた奇跡

やがて日も暮れた頃、田代が中澤にどうしても見せたかったというショーにやってきた。夜8時から開催される「ファンタズミック!」である。「ファンタズミック!」は敷地の中でも最も大きい港 “メディテレーニアンハーバー” で開催されるショーで、ディズニーシーの1日を締めくくるのに相応しいビッグショーらしい。


サンジュン「東京ディズニーランドでいうところの “エレクトリカルパレード” みたいなものなのかな? 位置づけ的に」

田代「そうですね。僕はどうしてもこのショーをせいじさんに観てもらいたかったんです」

中澤「なんでですか?」

田代「ファンタズミック! を言葉にするならば、これぞイマジネーションです。イマジネーションそのものなんです

中澤「言ってる意味がよくわかりません

サンジュン「同じく」

田代「ディズニーは長い歴史の中で、絶えずイマジネーションの大切さや素晴らしさを訴えかけてきました。でもイマジネーションって実体がないじゃないですか? もしイマジネーションを具現化したら……それがファンタズミック! なんです」

サンジュン「複雑だ」

中澤「そもそもイマジネーションって具現化できるのか?」

田代「観てもらえればきっとわかります! ショーが終わる頃には2人とも、自分の中のイマジネーションがキラキラあふれ出すハズです!」


そうして始まったファンタズミック! のショー。水上で行われるショーは初めて見たので、奥行きの深さや演出には確かに感心した。しかも明かりがあるとはいえ、視界が悪い中で行われるショーなのである。演者たちは相当なトレーニングを積んでいるのだろう。

だがしかし……。正直に言って私には田代の言う、イマジネーションの意味がサッパリ分からなかった。いいショーである、素晴らしいショーである。ただ、どこがイマジネーションだというのか……? どうやら中澤も私と同じような意見らしく、感心はしても感動には至っていない様子だ。

そんな感想をぶつけると、この日初めて寂しそうな表情を見せた田代。「そうですか……」と呟くと、最後に花火を見て帰ることになった。やや気まずい空気の中、打ちあがる花火。そんな中、奇跡は起きた──。


中澤が花火を見上げながらこう呟いたのだ。


この瞬間にみんなで同じ花火を見てるのがプライスレス



田代「せ、せいじさん? 今なんて言いました?」

中澤「いや、同じ空間、同じ時間を共有した人たちが同じ花火を見てるってすごいなと思って……」

田代「それなんです! それこそがイマジネーションなんです!! もっと詳しく聞かせてください!」

中澤「いや、今日ディズニーシーで楽しんだ人たちが、1つのものをみんなで見てるってプライスレスだなー、と思って」

サンジュン「たしかに」

中澤「あ、そうか。ディズニーシーにいた人だけじゃないか。通勤電車の中から花火を眺めている人もいますよね。そう考えると余計にプライスレスですね」

田代「せいじさん……」

中澤「はい」

田代「自分感動しました! そして通勤電車の中にいる人にまで気が回らない自分が恥ずかしいです!! せいじさんのイマジネーションはスゴイ……! ウォルト並みのスケールの大きさと思いやりがある……僕はディズニーファン失格です!!」

サンジュン「よくわからないけど、とりあえず良かった


こうして「ディズニーにトラウマを持つ男」と「ディズニーマニア」の長い1日は終わった──。

中澤は園内の造形物などに感動したようで「アトラクション乗らなくても全然楽しめますね。海外旅行感覚で来たい」とも語っていたので、トラウマからは解放されたのだろう。そして何より「みんなで来ると楽しいですね」と話していた。……あまり楽しそうに見えなかったことはさておき、本人がそう言うならばそれでイイ。

また余談ではあるが、田代は朝から晩までずっとYシャツで過ごしていたことも記述しておきたい。取材をしたのは2月……真冬の東京ディズニーシーである。何度も「寒くないんですか?」「本当に寒くなんですか?」と聞いたが、田代はそのたびにキラキラした笑顔でこう答えてくれた。


自分、暑がりなんで!


とにもかくにも、今回はかなりの強敵であったものの、見事に1人の男をトラウマから解放したディズニーマニア。夢と魔法、冒険とイマジネーション、そしてディズニーマニアの可能性はまさに……プライスレスである。

参考リンク:東京ディズニーリゾート
Report:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.

▼こちら「ディズニーが無理なおっさん」とディズニーマニアの話。

▼こちらは「2歳児とディズニーマニア」の大冒険。

▼中澤がアラジンを観たらこうなった。

▼中澤は「ディズニーってロックだな」とも語していた。良かった。


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