いつ行くか? 今でしょ──少しばかり表現が古いのはさておいて、築地に行くなら今である。つい先日、豊洲の新市場に移転したばかりでしょと思うかもしれないが、今だからこそアツいのだ。

どうして今なのか。今回、市場移転後も変わらず築地で営業する飲食店に取材することができた。インタビューに応じてくれたのは、築地本願寺の向かいにお店を構える「比内地鶏と魚処 NICONICO」だ。

・豊洲移転は築地にどう影響を与えた?


──築地市場の移転から2週間ほど経ちました。その後、築地という土地に変化はありましたか?


「世界一の市場が移転した訳ですから、人通りは明らかに減りましたね。でも場外市場は営業しているので、築地という場所が閑散としているのかというと、そうでもないです。国内外問わず、お客さんは来ていますよ」


──私も実際に場外を歩いてそのように感じました。確かに人は減っていますけど、活気はありますよね。


「そうなんですよ。関東圏に住んでいたり、築地を訪れたことのある人なら分かると思いますが、築地そのものがなくなった訳ではないんですよね。場外にはおいしい魚や寿司もあります。なくなったと勘違いしている人は意外にいるので、きちんと認識してくれたら状況は良くなると思います」



──今日(取材日)は平日なので、余計に人が減っていると感じたのかもしれません。移転によって観光客に影響はありましたか、そのあたりいかがでしょう?


「平日は少なくなったと感じますが、移転直後の土曜日はそこまで変わっていなかったような気もします。これが一時期なものか、どうなのか。もしかしたらこれから人が減るかもしれないですが……。

でも場外も必死だから、観光客は自然と戻ってくるのではないかと思っています。市場移転のイメージが強いものの、築地の雰囲気と新鮮な海鮮料理を楽しみたい人はまだまだ多いように感じます」



──なるほど。では、移転によって築地で営業する飲食店に影響はありましたか?


「移転からそんなに日にちが経っていないので、大きな変化は感じていないですかね。あとうちの店はサラリーマンの方がメインなので、今のところそんなに……それと路地から1本入ったところにあるので、観光客は見つけにくいというか(苦笑)

ただ、配送に関しては影響がありますね。オペレーションがちゃんとできていません。以前は近場ですぐに配送してもらっていましたけど、まだ環状2号線(11月4日に暫定開通)が使えていないですし……。もちろん、いろいろと対策を話し合っていますが、予想できない部分も多くて不安もあります」


──周りの飲食店はどうでしょう? 影響があるように感じますか?


「もしかしたら、観光客が入りやすい大通りのお店は影響を受けるところも多いかもしれません。どこも手探り状態だと思います」


・築地の飲食店はネズミにどう対応する?

長い歴史に一区切りとあって、どこの店も戸惑っているようだ。そんななか、気になるのはネズミ問題である。築地に住み着いていたネズミたちがエサを求めて一斉に移動し、銀座など繁華街へ進出すると危惧されている。そのあたりはどうなのか聞いてみた。


──世間で騒がれているネズミについてもお伺いします。築地市場に住み着いていたネズミの大移動は回避できないものでしょうか?


「築地市場の解体作業は始まりましたけど、大移動は時間の問題かもしれません。行政の対策もあるにはあるんですが、ネズミは学習能力に長けていますし、1メートル以上ジャンプしたり、狭い隙間だってスルリと……想像以上の動きもします。

一網打尽にするプランも練られていますが、賢いネズミは難攻不落の存在かもしれません。おそらく、築地市場内で食い止めるのは難しいでしょう。どうなるにしても、築地という土地はネズミにとって住みづらい環境になっていくので」


──確かに、これまでは最高の食料がすぐそこにあった訳ですしね。では、移動するならどこですか? 銀座あたりが濃厚だと言われていますが……。


「ネズミはエサを求めていく訳ですから飲食店の多い銀座、新橋あたりでしょうね。おそらく街中で見かけることは今までよりも多くなるでしょう。さすがに昼間に見かける機会はそんなにないかもですが、夜は間違いなく増えるかと思います」



──都心でネズミを見かけることは決して少なくないですが、できるだけ遭遇はしたくないものですよね……。では、築地の飲食店はネズミに対してどのような対策をしていますか?


「もともと対策はやっていますけど、飲食店の対応はそれぞれですね。古い建物が多いから、根っこからネズミ対策をやり直さなくてはいけないところも多いです。このビルは無理だな……ネズミにそう思わせるしかないですかね。飲食店は、安心してお客さんに来てもらえるように最善をつくすだけです」


──ネズミが大量移動するなら、いつくらいになると予想しますか?


「今すぐっていうより、ネズミが人間の対策に慣れ始めた頃が一番怖いですね。先ほども言いましたが、ネズミは賢いです。もう大丈夫かなと安心したところで大量に……そうならないように願いたいですけど、完全に防ぐことは難しいかと思います」

・今、築地がアツい!?

現時点でネズミ対策は慎重に進められているようだ。最後に、豊洲移転で新しい一歩を踏み出した「これからの築地」について聞いてみた。


──築地市場が移転したとはいえ、築地という土地は以前と変わっていないように感じました。寂しさがないといえばウソになりますが、人混みが苦手なので個人的には “おしくらまんじゅう” のような混雑がないのはいいなとも思いました。


「人混みが苦手な人はいいかもですね(笑)。マグロの競りなどを見たい人は豊洲に行くしかないですが、やはり築地という土地は独特の雰囲気がありますし活気もありますよ。豊洲とは目と鼻の先ですし、移転したからといって新鮮でおいしい食材は変わりません」


──確かに、新鮮さが変化する距離ではないですよね(笑)


「正直、前と変わっていないですよ。飲食店からすると、仕入れが大変になったくらい。お客さんに対してはどこも努力していますし、築地ではおいしい魚も寿司も食べられる。お店はこれまでと同じように高いクオリティーを提供してくれます。やはり、築地のブランド力というのはありますしね」



──逆にとらえたら行きやすくなったとも言えるかもしれませんね! それでは、最後にお聞きします。いつ行くか?


「今、で……すかね(笑)。市場が移転したからといってマイナスなことは何もないですし、お客さんが減った今は来やすくなったとも言えますよ。場外はもちろん、築地という土地はこれまで通り楽しめますよ」


……以上がインタビューの内容だ。新しい豊洲に行くのもいい……もちろんスゴくいいが、築地に行くなら今でもある。本記事を読んで1人でも多くの人が、歴史ある築地という土地をこれからも楽しんでいただけたら幸いだ。

取材協力:比内地鶏と魚処 NICONICOFacebook
Report:原田たかし
Photo:RocketNews24.