2018年10月6日、東京・築地市場は最後の営業を終えて、豊洲市場へと移転する。豊洲の開場予定は10月11日。築地の市場関係者は無事に移転を完了し、この日から営業を再開することができるのだろうか?

移転にあたっての問題について、市場関係者に聞いてみた。すると、業務にかかわる深刻な問題点について知ることができた

・観光客の影響

私(佐藤)が市場を訪ねたのは、営業が終わる前日の10月5日。昼前に現地に到着すると、多くの観光客でごった返している。移転準備もままならないなかで、大勢の人で市場内は溢れかえっており、関係者はかなりイラ立っているようにも見える。

場内は普段でも、車やバイク、ターレット(市場内を走る運搬自動車)が激しく行き交っている。歩道は狭く、ところによっては人が歩くスペースさえない場所で、車道まではみ出して記念撮影している様子は、傍目から見ても邪魔だと感じてしまう


・最終日に訪ねるなら注意

今回の移転を機に、飲食店の一部は閉業することが決定しており、別れを惜しむ気持ちは良くわかる。

しかし普段の業務をこなしながら、引っ越しの準備を進めなければいけない卸売業者には、観光客の存在が負担に感じられる場面もあり得るだろう。明日の最終営業日は、さらに多くの観光客が訪れる可能性があるが、写真を撮ったり立ち話をする場合は、周りに十分に配慮して欲しい。


・マグロ卸業者に話を聞く

今回お話を聞いたのは、マグロ・鮮魚・一般卸の「株式会社なり市堺浜」の専務取締役細川勝之介さんだ。なり市堺浜は大正3年創業で、マグロ部を中心に活魚・加工部、冷凍部を持ち、築地と錦糸町に加工場を持っている。創業100年を超える老舗卸だ。移転前の忙しいなか、お話を聞く時間を作って頂いた。


すでに終業時間。訪ねたマグロの店舗では、南アフリカ・ケープタウンから届いたマグロと宮城県産のマグロを片づけて、店を閉める段取りが進んでいた。


・市場4日間休業の影響

移転1日前、細川さんに、移転に当たっての現状と抱えている問題を率直に聞いてみた。

細川さん「多分、どこの業者もそうなんですけど、今日明日の注文が殺到してるんですよ。明日の営業を終えると、7~10日まで市場は移転のため4連休するんです。いまだかつて、市場が4日も休んだことはないんですよね。だから、飲食店の注文が殺到してて、正味この2週間ずっと忙しいですよね」


市場が止まるということは、市場で買い付けをしているお店は、業務に大きな影響を受けることを意味する。市場が休む間の分も余分に注文をかけるとなると、卸売業者に注文が集中するのは当然のこと。そんな状況で引っ越しも行わなければならない。

準備がそこそこ進んでいる業者やお店は良いのだが、ある飲食店では「まったく準備が進んでいない」と漏らしていた。明日の営業もあるなかで、11日にオープンできるのか……。


・深刻な駐車場問題

細川さんはもうひとつ、業務に関する問題を挙げている。

細川さん「駐車場が足りないんですよ。市場関係者の駐車場がざっくり200台くらい足りてなくて、うちでも多くの従業員を使ってて、みんな車で深夜から未明に来てますから、車で来ることができないとなると、どうするかってことなんですよね。0時とかに店に来る者もいるのに、公共交通機関は使えないし。

あとは、今までなら銀座から自転車で買い付けに来るお店もあったのに、自転車で来ても駐輪代取られる訳ですよ。そういう点も、今までとは違うから、豊洲が開場したらどうなるか、ちょっとわかんないですよね」


・新市場の未来は?

1935年に開設された築地市場が約80年の幕を閉じる。新市場に移った後、市場を取り巻く環境はどうなるのだろうか? とにかくはすべての業者やお店が無事に移転を済ませ、築地と同じような賑わいが豊洲にももたらされることを願うばかりだ。

取材協力:株式会社なり市堺浜
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
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