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2014年に発売された台湾女子高生の制服イラスト集『制服至上』。

同書ではスカートのひだの数やボタンの模様まで忠実に描き、さらに登場する女子高生は「黒髪美少女、校則通りの着こなし」というこだわりよう! 透明感あふれる生き生きした女子高生と制服の再現性は、もはや資料の域だと日台で話題となった。

そんな『制服至上』の個展が、このゴールデンウイークに東京にやってキターッ!! それに合わせ、作者の蚩尤 (しゆう)さん来日中とのことだったので直接、『制服至上』の誕生から秘密をガッツリ聞いてきたぞ!

・作者の聞いてみた!

『制服至上』の作者は台湾人イラストレーター蚩尤(しゆう)さんだ。『制服至上』を発表する前にも、「フランス・アングレーム国際漫画祭」に台湾代表として招かれたこともある実力派である。

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蚩尤さんと言うと、美少女イラストに注目されがちだが、台湾の文化や旧跡などをノスタルジックに描くことでも知られているのだ。
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・『制服至上』誕生のきっかけは同人誌

2015年4月29日~5月11日に東京・中野で行われる個展に合わせて来日中の蚩尤さんに、いろいろと直撃してみたぞ!

聞けば、日台を沸かせた『制服至上』誕生のきっかけは、歴史文化を含めた “台湾の姿” を女性の姿で描いた同人誌『We stay We live湾』に掲載した戦後の女子学生のイラストだったそう。これが出版社の目にとまり、「台湾全土の制服を網羅する」というプロジェクトが発足したのだ。

蚩尤さんのことを制服愛好家と思う人もいるかもしれないが、実はそうではなく、彼にとって制服至上プロジェクトは「台湾を描き出す」というパズルの1ピースなのだという。つまり「女子高生の制服」を通して、台湾の文化習俗を表現しているとも言え、そのための綿密な調査と恐ろしく緻密な再現は、まるで研究者のようだ!

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・最初はやっぱり不審がられた!?

今でこそ『制服至上』は知名度もあり、さらに購入者の半分は台湾の女子高生だというが、制作当初は、やはり一筋縄ではいかなかったらしい。前代未聞のプロジェクトなので学校側の理解を得るのは難しかったそうだ。電話をかけても切られることもあったのだとか。

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そんなとき蚩尤さんを助けてくれたのが女子高生だ! 文字や写真の資料、そして女子高生への直接取材が『制服至上』を支えていたのである。なるほど、生き生きとした描写の向こう側には本物の女子高生がいたのかと思うとなんだか感慨深い。

・背景のひとつひとつにこめられた秘密

美少女や精緻な制服の描写に目が奪われてしまうが、蚩尤さんの作品は背景だって要チェックだ!

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たとえば印象的な『制服至上』の表紙。目が覚めるような赤色の花の上に寝そべる少女。この花にも蚩尤さんの思いがこめられていた。これは、「ホウオウボク」という木の花で、台湾の卒業シーズンを代表する花、いわば日本の卒業式における桜のような存在だという。まさに “学生時代” の象徴とも言えるだろう。

また、『制服至上2』ではさらに背景に力が入れられているそうだ。たとえば表紙の鮮やかなステンドグラスのような背景は、高雄の象徴「美麗島駅」をイメージしたもの。ほかにも真っ赤な塀は台南の「孔子廟」であるなど、見る人に新鮮な驚きや懐かしい感情を思い起こさせる仕掛けがたくさん隠されているのだ。

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日本では、台湾と言えば台北の情報ばかりが入ってきがちだが、南部を収めた『制服至上2』を見れば、制服や街並の違いに驚く人もいるかもしれない。いやいや、可愛い女子高生イラストを見ながら、台湾各地の雰囲気を感じられるとは実に眼福だなぁ!

・作者「日本は文化が近いので緊張する」「感想を聞かせてほしい!」

実際に日本の個展に訪れていたお客さんも、「風景が南国っぽい!」「人物だけ見ると日本と似ているけど、引いて背景と一緒に見ると台湾の風情を感じる」などと話していた。やはり、作品からは台湾の空気が漂っているようだ。

ちなみに日本人に作品を見てもらうことについて蚩尤さんは、

「日本は(台湾と)文化が近いので、逆にちょっと緊張します」
「皆さんの意見や感想を聞かせてください。それが進歩の源になるんです」

そして、

「日本の女子高生の皆さんにも見てほしい」

とのことだった! 是非とも感想を直接伝えたいところだが、残念ながら蚩尤さんの在廊は初日の29日のみ。しかし、個展は5月11日まで開催だ! 無料で誰でも入れるので、期間中に中野方面に行く人は立ち寄ってみるといいかもしれない。

なお、蚩尤さんは、現在、『制服至上3』を準備中。この3作目で北部・南部・中部と台湾全土を網羅することになる。そして次の構想については「アイドルを研究中」との回答が! 台湾の姿を描き続ける蚩尤さんがアイドルと出会ったとき、一体どんな化学反応が起きるのだろう。こちらも非常に楽しみだ!!

・「蚩尤個展」詳細データ

会場 GALLERY リトルハイ
住所 東京都中野区中野5−52−15 ブロードウェイ4F
期間 2015年4月29日~5月11日
時間 12:00~19:00(最終日17:00まで)
入場料 無料
※蚩尤さん在廊は初日29日のみ

参考リンク:制服至上2
Report:沢井メグ
コーディネート:王凱平山本大悟
撮影:山本大悟

▼こちらが『制服至上』の作者・蚩尤さん
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▼蚩尤さんと言えば『制服至上』だが、彼にとって『制服至上』は「“台湾を描く” というパズルの1ピース」とのこと
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▼こちらは東京・中野で開催となった個展のようす(以下、撮影:ロケットニュース24)
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▼画集で見るのとはまた違った印象を受ける。5月11日まで、入場無料だ
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