「勘弁してくださいよぉ〜。え〜記事にするの? 参ったなぁ……。うちは「来たい」と思った人がすぐに来られる店でありたいんですよね。記事で「美味しい」とか書かれたら有名になっちゃうし……それはちょっとなぁ。
世間には予約が何カ月待ちのお店とかありますが、うちの店はあのような状態にならないようにしたいんですよ……。常連さんが気軽に来られなくなったら困るので……。そうですねぇ、だからまぁ「まずい店」って書いてくれるなら、記事にしてもらっても大丈夫ですよ。ハハハハハ」
──銀座にある某寿司屋の店主から上のように言われたとき、私は正直「負けた」と思った。負けたというのは、「記事にできなくて残念」とか「交渉で負けた」といったような意味ではない。
そんな次元の話ではなく、もっと人間的なところで打ちのめされたように感じた。認めたくはないが……完敗。ただそれは、めちゃくちゃ心地いい敗北感だった。