中国ご自慢の最新鋭新幹線にて、魔都・上海へ移動──。

駅の券売所で暴れる軍パン・上半身裸おやじに目を奪われ、乗車前の食料調達に失敗。小腹が空いて弁当のひとつも買いたかったが、以前ロケットニュースでも紹介された常温で六ヶ月保存可能な新幹線ケミカル弁当みたいなものは食いたくなかったので、上海までぐっと我慢を決意する。

小奇麗なシートに腰を下ろすと、通路を挟んで隣には、キャッチャーミットが良く似合うメガネの角刈り男がひとり。奴はカバンからビニール袋に覆われたボール状の物体をいそいそと取り出し、手馴れた仕草で簡易テーブルに設置。ハッと目を凝らせば、そいつは何処の角度から見ても、とれたての新鮮なスイカだった!

男は何事もなかったかの如く、ジャポッジャポッ、ジャシャシャ……ホシャッ、ホシャッと豪快な音を奏でつつ、マイ・スプーンでスイカの果肉をほじくり返しては口へ運ぶ。

愕然とした私を嘲笑うかの如く、周りの乗客はチラ見すらせず、スイカ一気食いを当たり前に受け入れている。改めて見回せば、ごく自然にミニトマトの徳用詰め合わせを貪る女の姿も──。

さすがは新幹線を乗りこなすエリート市民。オーガニック志向の新しい駅弁スタイルなのか? それとも、三等列車で落花生を食い散らかしていたかつてのライフスタイルが進化しただけなのか、判断に苦しむ光景であった。
(取材・文=クーロン黒沢

▼駅の通路は人生劇場

▼上半身裸、軍パンのおやっさん抗議中。怖くて誰も声かけず

▼ホームに滑りこむ中国新幹線

▼静かな車内……と思ったら!

▼軍パン兄ちゃん、おもむろに折りたたみテーブルをのばし……

▼何やら見覚えのある物体を黙々と食い始めた

▼スイカだ! しかも丸々一個。しかもマイ・スプーン持参で──

▼気がつけば、前の席の姉ちゃんはテーブルにミニトマトを広げていた……